洒落怖

キュルキュルでしょ

676 :環八 後日談:02/03/24 23:13
大学一年生の安西・別所・茅野は、大学は違えど高校時代からの親友だった。
彼らは、夏休みで伊豆の方にある安西の父親の別荘に遊びに来ていた。

別所:しっかし、ほんと安西ン家って金持ちだよな。
安西:まあ、親父の持ち物だから、俺が威張ってもしょうがないけどな。
それより今夜は飲もうぜ。今日はナンパも悉く空振っ

たし、ヤケ酒だ。

三人は、他愛も無い話をしながら、楽しい夜のひとときを過ごしていった。
それは午前2時ごろだった。

安西:さて、と。もう寝るか。
(電話):トゥルルルル、トゥルルルル・・・
安西:なんだ、こんな時間に。ひょっとして、昼間の女の子達か?
ハイ、もしもし。え?・・・。ちっ、なんだよ。(ガチャン!)
茅野:どうした?女の子じゃないのか。
安西:いや、女の声は声なんだけどさ、なんかイタ電みたいなんだよな。
茅野:イタ電?
安西:ああ。何か最初の「あなた」って声は聞えるんだけどさ、その後になんか
テープを巻いてるみたいな音がするんだよね。
別所:テープぅ?
安西:んあ。なんか「キュルキュルキュル」て音がして、そのあとに「~でしょ」
だか「~したいんでしょ」だかって言ってんの。キショイから切っちまったよ。
茅野:なんだよそりゃ。もういいから寝ようぜ。

そのときは別に気に留めることも無く、三人は眠りについた。そして翌朝、安西は
二日後に両親と合流することになっていたので、他の二人だけが東京に帰った。

数日後ーーーー
一人暮しの茅野の家の電話が鳴った。別所からだった。
それは安西が死んだことをを知らせる電話だった。

679 :jinagawa replay(環八改め):02/03/24 23:30
安西の通夜にてーーー
安西は溺死だった。別に泳ぎの下手なわけではない安西ではあったが、
茅野は別に違和感を感じてたわけではなかった。だが、周囲から聞える
ヒソヒソした声は、茅野の恐怖感を掻き立てるに十分だった。
参列者A:ねえ、安西さんの坊ちゃん、普通の死に方じゃなかったってよ。
何でも、別荘の風呂場で溺死してたんだって。

通夜の帰り道、少し離れたところに座っていた別所が、茅野のもとにやってきた。
別所:人間の死なんてあっけないものだな。
茅野:うん。
別所:俺らが帰った次の日の事だってよ。
茅野:うん。
別所:なあ、あの電話さ・・・
茅野:え?
別所:いや・・・
それ以来、茅野は別所と疎遠になった。別に仲違いしたわけではないが、
何となく顔を合わせるのが忍びなくなった。

そうして二年の月日がたち、就職活動も始まろうかとしていたある日、
茅野の家に一本の電話がかかってきた。
茅野:もしもし。
別所:茅野。俺、別所だけど。
茅野:おお、久しぶり、何してた?
別所:元気だったか。
茅野:元気だよ。どうした?今日は、突然に。
別所:うん・・・。おまえには、言っておこうと思ったんだけどさ、
昨日、来たんだ。俺んとこに、あの電話。
茅野:あの電話?
別所:ああ。あのテープの奴。安西・・・の時のさ。
俺さ、ひょっとしたら、死ぬかもしんない。

682 :jinagawa replay:02/03/24 23:56
茅野:なに言ってんだよ、おまえ。
別所:あの電話あってすぐだよな、あいつが死んだの。俺、しばらく聞い
てたんだけど、途中で怖くなって切っちまったんだよ。あれ、多分
切っちゃいけなかったんだよな。
茅野:馬鹿なこと言うなって。あんなの、偶然だよ。気にすることなんか
ねえってそれより、近いうち会おうぜ。いつがいい?明日は?
別所:そうだな。でも、明日はバイトだから、明後日ならいいよ。
茅野:わかった。明後日な。場所は・・・
しかし、二人が会うことは無かった。次の日、別所の死亡記事が夕刊に
載っていた。

別所は、交通事故死だった。警察の調べでは、自殺とのことだった。
彼は、交通量のとても多い道路の、横断歩道も無いところを渡ろうと
して車にはねられたのだ。
だが、茅野は信じなかった。別所と、次の日会う約束をしていたのに、
自殺なんてありえない。
あの電話だーーー
それ以来、茅野は家にかかってくる電話をとらなくなった。必ず相手に
留守録させ、電話し返すことにしていた。

一年、二年、三年・・・時が流れるに連れ、緊張も薄れる。周りの取り巻く
環境も変わる。茅野にも結婚を前提にする彼女が出来、幸せをおう歌して
いた。友人の死の実感も忘れていた。電話は、相変わらず取らなかったが。
そんなある夜のこと、彼女との話に花が咲き、気がつけば夜中の一時過ぎ
まで話し込んでいた。ようやく電話を切るとすぐ、電話がかかってきた。
「何だろう、いい忘れたことでも有ったか?」
茅野は何の気無しに電話を取ってしまった。
「あなた、キュルキュルキュルなんでしょ?」
始まったーーーーー

683 :jinagawa replay:02/03/25 00:15
茅野は、とっさに電話を切ろうとした。だけど、別所の言葉を思い出した。
「あれ、切っちゃまずかったんだよな」
切っちゃ駄目だーー
茅野は、震える声ながら、受話器に向かって必死に叫んだ。
「お前、何なんだ!? 俺達に何の恨みがあるんだよ!」
だが、電話の向こうでは何の反応も無く、あの声が続いている。
「あなた、キュルキュルキュルでしょ?」
「あなた、キュルキュルキュルでしょ?」

それから何時間経ったのか、茅野の手は痺れ、頭も朦朧としてきた。
電話の向こうは相変わらず「あなた、キュルキュルキュルでしょ?」
茅野は、精神的にも肉体的にも限界になりかけていた。
だが、彼女のことを思い、死にたくない一心で必死に堪え続けた。

やがて、空も白みはじめてきた。
テープの声が、少しずつゆっくりになっていった。
「あなた、キユルキユルたいんでしょう?」
「あなた、キユル・・にたいんでしょう?」
茅野:何だ、何て言っている?
その声は、こもった、しかしはっきりした声で、こう言った。
「あなたは、死にたいんでしょう?」
茅野は、飛び出しそうな心臓を押さえ、こう叫んだ。
「嫌だ、俺は死にたくない!」
「プッ、ツー、ツー、ツー、」
電話は向こうから切れた。

茅野は、死んでしまうかと思ったが、その後何も起こらず、今でも生きている。

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