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トンネルと記憶

「痛たたたた・・・」
俺は朝・・・といってもすでに昼近かったが、大学の友人Aの空き缶などのゴミで散らかったアパートの部屋で二日酔い混じりの最悪な寝起きを迎えていた。
昨日はAの家で飲んでたはずだがこんなに頭が痛くなるほど飲んだのだろうか?昨晩のことを思い出そうとするがなんだか頭に靄がかかったようですぐには思い出せない。

勝手に冷蔵庫から冷たい烏龍茶を取り出して一気に飲んだ。多少頭痛は和らいだ感がある。
さて、と昨晩のことを思い出してみる。
・・・たしか15時くらいに俺ともう1人の友人のBの2人で大量の酒を持ち寄ってA家に来たはずだ。
そして最初は宅配ピザ食いながらスマブラやったり麻雀やったりしてたらAが変わった提案をしてきた。
「車で少し行ったとこにいわくつきのトンネルがあるらしいんだが夜行って見ないか?」
おいおい、理系の俺らがオカルトごっこかよと思ったがBは意外にも乗り気だった。
ちなみにそこはどんないわくがあるのかAに聞くがそれは道中話すから楽しみにしてろと言った。

22時になってそろそろいい頃合いだろうということでAが出発を俺たちに促してきた。正直肝試しよりも飲みの方がよかったのだがAとBに押し切られてしまった。下戸のAはともかく俺と同じく大のビール党のBはこっち側につくと思っていたのに。
冷蔵庫のビールに後ろ髪を引かれつつAが最近買った軽自動車に乗り込み10分ほど走った。俺はAにそろそろトンネルのこと話せよと言うとAは語り始めた。
どうやらそのトンネルは旧道にあるトンネルでその道は今はすでに廃線となっており使われていないらしい。またそのトンネルの出口側は埋められているらしく中でUターンして入った側から出てくることになるとのこと。

たしかに灯りの無い一方通行のトンネルと言われると不気味で怖いかもなと思ったがこれはあくまでトンネルの様子であっていわくは別にあるとのこと。
そのいわくを聞きたいんだよと運転中のAのシートを後部座席から蹴るとAはちょっと試したいことがあるから帰ったら話すとのことだった。
やけにもったいぶるなぁと若干いらだったがAはそういうところがある性格なので気にしないようにし俺たちはまたどうでもいい雑談に戻った。
やれスマブラはファルコンこそ最強だ、いやピカチュウだ!とか、さっきの麻雀はオーラスの三色同順さえ和了りきっていたら俺がトップだったんだとか、クラスの誰が一番可愛いと思う?いや・・ウチの学科全員男子だろ!などの本当にどうでもいいいつもの会話だった。

30分ほど走って俺たちはトンネルの入り口に到着した。
実際に目の前にすると入り口から内部が全く見えない完全な暗闇のトンネルは大きな口を開けた怪物を想像させ予想よりもずっと怖さを感じた。
いくぞとAが言うと車はゆっくりとトンネルの中に入っていった。
トンネルの中は車のヘッドライト以外の光源はなく壁の様子すらまったくわからないほどの暗さであった。
Aは慎重に運転しているようであったが俺が今一番恐れていること、これだけは言っておかないといけないと思い、
「この先行き止まりなんだろ?気づかず衝突して全員死亡とか冗談じゃないぞ」
「安心しろ、トンネルは2kmくらい道が続いているらしい、時速20kmでゆるゆる走ってるから5分ほどでUターンすりゃいい。それにヘッドライトで前はちゃんと見えてる」
そういうことなら安心だと心霊スポットのど真ん中で安心する俺。
窓の外を見ながら髪の長い女や手形が窓にびっしりみたいなことを考えていた。
そんな妄想に耽っていると車がUターンした。
奥まできても何も起きなかったなと残念な気持ちになったが同時にオカルトなことが現実に起こるわけないかと恥ずかしくもなった。

結局そのまま俺たちはトンネルの入り口にまで戻ってきてしまった。
マジでなんも無かったなと終始無言だった横に座ってるBに話を振るとBはブルブルと震えていた。
え?なんか見えたとか?と興奮しながらBに尋ねると単に暗いトンネルが普通に怖かったとのこと・・・あんなに乗り気だったのに臆病すぎん??

そのあとも特に何もなく普通にコンビニに寄ってつまみや新発売の酎ハイやらを買い、Aの部屋に帰ってきて酒盛りを始めたんだっけ?
緊張からの解放のせいで酒が回りやすくなってたのかな?と悪酔いの理由に検討をつけているとふとAが飲みながら話していた昨晩のトンネルのいわくの話を思い出した。
「あそこのトンネルは特に事故や事件があったっていうわけではないんだが、地元の人や一部のネット界隈である噂がまことしやかにささやかれていたんだよ。ただその噂も『あのトンネルに夜に4人で行くとよくないことが起きる』というめちゃくちゃ雑なものだった。普通こういう噂って人の興味を惹くために誰かが不幸になったとか、霊が出たとか具体的なエピソードが付随するものだと思うんだがそういうのが一切ない。だから逆に気になったんだよ」

ま、出どころ不明のオカルト話なんて蓋を開けてみたらこんなもんだよなと思いつつもう一杯烏竜茶を飲む。
あれ?じゃあなんで何が起きるかを確かめたかったAはわざわざ3人しかいない昨晩行こうなんて言い出したんだ?
3人で行っても噂が本当かどうか判断つかないじゃないか。
それに昨晩のことは一通り正確に思い出せたはずだがなぜか違和感が残る。
再度昨晩の記憶を一つ一つ分析し、俺は一つの仮説に辿り着きゾッとした。
だが不思議なくらい寂しさは感じなかった。

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