157 :ムササビ的36話目 ◆TC5.ZMGs :02/04/10 05:31
地下鉄には霊が集まりやすいのでしょうか。
暗く湿った地下には闇の住人の住処でしょうか。
人間が入ってはいけない空間かもしれません。
あれは夏の終わりの頃でした。
夕方、仕事帰りに私は地下鉄のホームにいました。
ふっと誰かに呼ばれた気がしてあたりを見ました。
5mくらい先に女性が電車待ちをしていました。
その女性の肩に動くものがありました。
黒い赤ん坊でした。それも2人も。
水子とすぐにわかりました。
地下鉄内で騒音がすごいのに赤ん坊の話し声は鮮明に聞こえました。
ひとりの赤ん坊が振り向きました。
閉じていた目がひらいて私を見ました。
真っ黒なその目はじっと見ていました。
そして確かにこう言ったのです。
「見えるんか。おまえ・・・」
にたりと笑ったその顔はまるで般若の面でした。
女性はすぐ来た電車に乗っていきました。
私は乗れませんでした。
怖いよりも哀しい気がしました。
消された命は、命を消した親にすがっていきます。
女性が死ぬまで憑いているのでしょう。
彼らへの供養は、彼らを忘れないでいることではないでしょうか。