529 :こぴぺ :02/04/15 01:18
葛西純さんは街を歩いていて、ふと古着屋のウィンドウで見かけた皮ジャンに
引きつけられてしまいました。店に入り値段を聞くと、ビンテージ物ということ
でかなり高価でした。試着すると予想外に重いと感じたのですが、どうしても
その皮ジャンが欲しくなってしまい、店長に取り置きしてもらえないかと相談
したのです。
「実はね、君と同じように言ってる子がもう一人いてね、こっちも商売だし、
早くお金持ってきた方に売るよ」
と店長は言いました。
そこで葛西さんは友人数人からお金を借りて、次の日に皮ジャンを購入したの
でした。
それからタイミングよく友人から合コンの誘いがあり、葛西さんは早速
皮ジャンを着て合コンに出かけました。
皮ジャンを着こなした葛西さんは女性陣になかなか好評でした。そして一人の
女性と葛西さんは意気投合し、
「この後、二人で飲みなおさない?」
と誘うと彼女は頷いたのです。
葛西さんは彼女と二人で入った店でその夜初めて皮ジャンを脱ぎ、壁に
ハンガーで吊るしました。そして彼女を口説こうとしたのですが、彼女はまるで
葛西さんよりも皮ジャンに興味があるかのように壁に吊るしてある皮ジャンを
気にしていたのです。
「あのね、私ってけっこう霊感あるから、ちょっとあなたを放って
おけなかったの。あなたが着ていた皮ジャンだけど古着でしょ。はっきり言って、
袖口から指が見えてるのよ。前の持ち主の霊がついているから、
手放した方がいいわよ」
彼女はそう言うと、じゃあ、と手を振って立ち上がったのでした。(続く
530 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/04/15 01:19
そう言われて皮ジャンの重さが急に気味悪くなった葛西さんは、次の日には
返品しようと件の古着屋に再び足を運んだのです。店に入ると葛西さんを見た
店長はさも忙しそうにバックルームに引っ込んでしまいました。
葛西さんがあっけにとられていると、一人の店員が返品ですか?と声をかけて
くれたのです。彼は店長がバックルームから出てこないと確認して小声で話を
続けたのです。
「俺、今日でこの店辞めるから、話しちゃいますけど、この皮ジャン、
気味が悪いからわざとウィンドウに飾って店の隅に追いやっていたんですよ。
だいたい店のバイヤーってのがロサンゼルスにいるんですけど、かなり荒っぽい
ヤツでロングビーチ辺りで殺された黒人の上着なんかを奪い取って日本に送って
きますからね。おかげで安く古着を提供できるんですけど…
この皮ジャンもその手の類いですよ」
「そう言えば、もう一人この皮ジャンを買いたい奴がいたらしいけど、
返品するとそいつが買っちゃうわけか…」
葛西さんがつぶやくとその店員は、
「それ、店長が早く売りたい時に使う嘘ですよ」
と苦笑しながら言いました。
「なぜ店を辞めるの?」
葛西さんはイイ奴そうな店員にそう聞こうとして、ハッと息を飲んで
しまいました。
それは彼が店員価格で買って着ているであろうシャツの肩口が、
まるで人が重なっているように盛り上がって見えたからです。