609 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:2001/06/20(水) 13:55
小学校低学年の頃、学校から帰ると叔父がいた。叔父は青ざめてて生気がなく、
俺の顔を見ても「おかえり」としか言わない。叔父は関東の隅っこの山のふもと
で嫁さんと二人暮らしのサラリーマン。小学生が帰っている時間に都内のうちに
いるのはおかしい。子供心になにかよくないことがあると思って聞けなかった。
夕食。叔父も父も母も妹も、一言も喋らずに黙々とご飯を食べた。突然叔父が
箸をおいて口を開いた。こんな話。
一週間ほど前「うちの犬が毎日昼の決まった時間になると狂ったように
吠えてご近所に肩身が狭い」と嫁さんが言い出したらしい。叔父は「犬には犬の
社会があるんだよ」とテキトーに流した。
それからも犬の奇妙な行動は続いたらしく、少し恐くなった嫁さんは昼時には
家をあけるようになった。叔父はくだらないことで脅える嫁さんに腹が立って
今朝「今日は早く帰ってくるから、家にいろ」と言って家を出た。
610 :609続き:2001/06/20(水) 14:06
昼前に会社を出て嫁さんの言う午後1時頃に家につくようにした。
バス停から田んぼだらけの田舎道を家に向かって歩いていると
なるほど、気の狂ったような犬の鳴き声がする。威嚇するような、
おびえるような声。面倒臭い、とため息。
遠目に家が見えてきた。と、なにかが庭を走っている。犬が吠えてる
相手かな?キツネか?タヌキか?と足を速めるが、ぴた、と足が止まった。
冷や汗が吹き出る。庭を走りまわっているのは子供だった。和服を着た
小さな子供。走り回るというか滑るような感じで家の周りをぐるぐる
ぐるぐる回っていた、らしい。振り回してる腕はビデオの二倍速の
ように速い、不自然な動きだったらしい。
611 :610続き:2001/06/20(水) 14:12
化け物だ!と思ったが常識人の叔父はにわかには信じられず、
遠目に何か他の物ではないかと目を凝らしたらしい、が紛れも
ない青い(赤だったかな?)和服を着た子供だったらしい。犬は
子供に向かって狂ったように吠えていた。
叔父は嫁さんが家にいると知りながらも、どうしても家に近づく気に
なれず走って駅まで引き返し、とりあえずうちに来たのだと言う。
家に電話をしても嫁さんは出なかったらしい。
明くる日曜、朝一番に父が叔父を家まで送った。幼心に心配と
ちょっとした興奮があった。昼前に親父が叔父の住む駅前から
電話してきて「一応家までは送っといたよ。でも犬はもうおらん
かった」と言った。鎖も首輪も残して消えてしまったらしい。
612 :611続き:2001/06/20(水) 14:18
親父が帰って夕方ごろに叔父からも電話があって「**(オレ)
話きいたか?犬には可哀相なことしたなあ。なんかオレのせいで
どっかいっちゃった気がするよ。嫁さんも大丈夫。迷惑かけたな
じゃあ、元気で」って変な挨拶をされた。この叔父とはこれっきり。
行事にもマメな人だったけど、それからなんの法事も葬式も出なく
なった。もう10年になるけど家族であの叔父の名前を出すのはタブー
になってる。昨日妹と話したけど妹も覚えてて二人で不思議がった。
恐い話じゃないかも知れないけど、叔父のこと思うとシャレん
ならん。すまん。「子供」はなんだったのかなあ。叔父は山梨なんです
けど、地元の人、なんかそういうの知りません?