442 :通りすがり(仮):02/06/21 13:57
保健室のベッドで寝るのは初めてだった。
こんなに熱が出たのも初めてだ。
風邪をひいてるからだけじゃない。隣には○木さんがいた。
病弱なのは聞いてたけど、こんなところで会うなんて夢にも思わなかった。
二人とも熱でだるかったけど、ただ横になってるなんて
つまらなかったから、いろんな話をした。
こんな隣同士のベットで寝てるなんて、結婚したみたいだ。
なんて考えて、ボクはどきどきしていた。
○木さんは寝ちゃったけど、ボクはとても眠れやしなかった。
「先生ね、ちょっと、行かなくちゃいけないんだけど、楽にしててね」
誰かが呼びにきて、先生はどこかへ行った。
突然二人きりにされて、ボクはますます眠れなくなってきた。
ちらちらと、○木さんを盗み見ていると、カーテンの向こうで声がした。
「・・・・・・に・・・い・・・だろ」
よく聞こえないけど、知ってる声みたいだ。
ボクは△ちゃんだったらまずいと思って、薄目を開けて、
寝たふりをした。△ちゃんが○木さんを好きなのはみんな知ってる。
こんなところを見られたら、後でなんて言われるか判らない。
「・・こ・・・・る・・」
なにかつぶやきながら、声が近づいてくる。
「だ・・か・・こに・・るだろ」
カーテンは開いた音はしないのに、いつの間にか声はすぐそばにまで来てる。
薄目を開けてるのに、誰も見えない。
「・・こ・・・・・・よ」
嘘寝がばれるから、絶対に動いちゃいけないと思って、ボクは目を閉じた。
今は、もう、すぐそばで声がしていた。
「だれかそこにいるだろ」
絶対におかしかった。絶対。足音もしないし、誰も見えないのに。
「だれかそこにいるだろ」
「・・こ・・・・るよ」
声はボクの周りをうろうろしていた。
がんばって薄目で見てみたら、カーテンは人影で囲まれている。
「だれかそこにいるだろ」
見つかっちゃだめだ!!
そう思ったけど、突然○木さんのことが頭に浮かんできた。
そうだ、○木さん! ○木さんは大丈夫!?
ボクは寝返りのふりで、○木さんの方を薄目で見た。
○木さんは飛び上がって、ギィッ、と、目を見開き、ボクを指差して、
信じられないような低い声で言った。
「そこにいるよ」
保健室の怪異
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