生きている怖い人

競売物件

88 :本当にあった怖い名無し:2020/12/01(火) 17:17:25.34 ID:WkR8fkJV0.net[1/11]

連れの不動産屋と夜の8時から飲みに行く約束をしていて、先に待ち合わせ場所で待ってた。
そこからこの出来事は始まる。
待ってると、連れが待ち合わせ場所に車を乗りつけて、こう言った。
「悪いけど、急ぎ仕事が1つ残ってるので先に片付けたいのだが。」と。
聞けば、売り家の看板をベランダに取り付けるだけなので時間はかからないと言う。
「何処まで行くんだ?」と聞くと、ここから車で一時間ほど走った所にあると言う。
「往復二時間か。。」先に行って一人で飲んでるのもつまらないので、
連れの車に乗って一緒に現地に向かう事になった。

道中、その家の図面を見ながら話を聞くと、物件は競馬物件で処理は済んでると言う。築年数の古い家。
立地が悪いとか、高すぎるとか、そんな話しをしながら件の家に着いた。すでに9時を回ってたと思う。
89 :本当にあった怖い名無し:2020/12/01(火) 17:18:40.01 ID:WkR8fkJV0.net[2/11]
件の家は近隣の住宅群から少し離れた場所にポツンと建っていた。
競売物件なので当然ながら電気ガス水道の類いは止まってる。
あたりに人は歩いてないし、道を照らす街灯も遠くに見えるだけだ。
ただ風だけが吹きつけて、そこは何とも閑散として寂しい場所だった。

所用の看板と道具類、懐中電灯をそれぞれ持って車を降り、
二人で辺りを照らしながら競売物件の門を抜け玄関へと向かう。
連れが玄関のドアに鍵を差し込むと何故か鍵がかかってなかった。
「あれ?鍵があいてるな?」と、連れが言う。
玄関のドアを開けて中に入り、一歩進んで懐中電灯で前を照らす。
「!!!ウっっっ・・」そこで絶句することになった。
90 :本当にあった怖い名無し:2020/12/01(火) 17:19:54.42 ID:WkR8fkJV0.net[3/11]
暗闇の中、懐中電灯に照らされた「それら」
狭い玄関の上がり框(かまち)の上に、(今思うと妖怪「ぬりかべ」をグロく模した感じかな。)
古く朽ちかけた、かなりの大きさの仏壇が、外扉を全開に開いたまま前を遮るように鎮座していた。
その仏壇の天板の上に、古いバレーボールが1つあって、
それには子供がマジックで書き殴ったような「歪んだ顔」が描いてあり、こっちを見つめてる。
さらにその真上には、古い物干し竿が階段と鴨居に渡してあって、
物干し竿には、てるてる坊主やら首をつったビニール人形やら何やらが大量にぶら下がっていて、
カサカサと音を立て、玄関のドアから入る風でそれらはユラユラと揺れていた。

朽ちかけた大きな仏壇の天板の上に鎮座する、歪んだバレーボールに描かれた顔。
物干し竿にしめ縄代わりに首吊ってる大量の人形とてるてる坊主。
ユラユラ揺れる人形とてるてる坊主を見てると、まるでシュールな呪術みたいに見えてくる。
「あちら」と「こちら」の境界線。まぁ、そこから異世界に突入する事となるのだが。。

呪術なんかを知ってる人間から見れば、それは何とも滑稽なものだけど、
知らない人間に視覚的な恐怖を与えるには十分なインパクトがあったよ。
怖い物を見に行く、怖い場所に行くと言う概念を持って行った訳じゃ無いので、
目の前のそれは怖いというよりも「唖然」「呆然」の方が先に来てた。
で、二人してそれを照らしながら、暗闇の中しばらくそこで「ぼぉっと」突っ立てたんだ。

聞くと、2.3日前まではそんなものは無かったと言う。隙間から奥を照らしてみるが何にも無いし物音もしない。
音と言えば、てるてる坊主と人形が風に揺れて「カサカサ」と擦れ合う音だけで。。
91 :本当にあった怖い名無し:2020/12/01(火) 17:21:02.80 ID:WkR8fkJV0.net[4/11]
よく見ると階段側のいっぱいに開いた仏壇の外扉のカドに軍手が引っかけてあるのが目に付いた。
軍手の親指と小指が結んであって、そこに細く丸めた古い和紙の切れ端を握ってる。
それだけ浮いてるように見えたので、好奇心で軍手からその和紙を抜き取って開いて二人して読んで見たのだが、
そこに書いてあったのは赤マジックで殴り書きされた三文字だった。「唖 稀 呪」と。

「稀」って文字を見て言葉が連想させる「稀人(まれびと)」
異人を異界からの神とする。もしくは「時を定めて他界から来訪する霊的もしくは神の本質的存在」
外部からの来訪者。「唖?が外部からの侵入者を呪?」と、連れが言う。
「俺らの事を言ってるのか?何かいるぞって事か?やってきたぞ?って事か?まるで訳が分からんな。」
と、こっちに聞かれても分かるはずも無く、分かってるのは手順を踏んでる呪詛の類いでは無いと言う事だけで。。

「仏壇調べて見るか?」と連れが言うので、「それは止めといた方がいいぞと」言い、また沈黙。
沈黙するとシーンと静かなだけに余計に怖いが、
しばらく無言で「ぼぉっと」突っ立って暗闇の中、懐中電灯で仏壇を照らしてた。
92 :本当にあった怖い名無し:2020/12/01(火) 17:22:08.15 ID:WkR8fkJV0.net[5/11]
しばらくして、らちがあかないので
「帰るか。それともさっさと二階に上がってベランダに看板取り付けてこいよ」と連れに言うと、
怖いから一緒に来いという。一人でそこに突っ立ってるのもアレなので、
土足のまま二人して階段に向かい懐中電灯で二階を照らして見たんだよ。
あれは絶対に見た者にしか分からないと思うが、階段を照らす裸電球の傘に電気のコードが巻いてあって、
人が首を吊ってユラユラ揺れたんだ。照らした瞬間そう見えたんだ。
「うわぁぁぁ」って連れが叫ぶからマジで血の気が引いた。
汗が噴き出し「うっ!」って声をだして反射的に後ろに下がったよ。「首吊ってるぞ」
「あれ人だろ?ヤバすぎじゃねーの?」「お前、いったいどうなってんだよ?」「俺に聞くな。知らねーよ。」
お互いを照らし合って話してるので恐怖が伝染する。「もう一回照らして見ろよ。」「お前が照らせよ」って、
なすりつけあいになってた。「大体、お前の所の仕事じゃねーか。お前がもう一回照らして確認しろ。」
こんな言葉だったと思う。それで連れが、「分かったよ」と言って首つりを渋々照らした。
93 :本当にあった怖い名無し:2020/12/01(火) 17:23:21.08 ID:WkR8fkJV0.net[6/11]
よくよく見るとそれは人の大きさをしたビニール人形?だった。ギョロッとこちらを見て揺れている。
「おい」と連れが言う。「お前、あれってまさかの「伝説の南極1号」じゃないか?」
「はぁ?南極一号?何それ知らんよ?」と、聞くと「大昔のダッチワイフ」(今で言うラヴドール)らしい。
なるほど。言われてみれば口元が。。。じゃぁ首吊ったダッチワイフが二階に招待するのに出迎えてるってか?
何か、怖いのか滑稽なのか何なのか別の意味で笑えてきて、おかしな気分でハイになったのを覚えてる。
それで二階へと二人で上がって行ったんだよ。
首つりダッチワイフが招くWellcome to the Slaughterhouse ってか。
でも、これでもまだ、余興にすぎなかった事を思い知ることとなるのだが。。。
94 :本当にあった怖い名無し:2020/12/01(火) 17:36:39.29 ID:WkR8fkJV0.net[7/11]
二階に上がって照らして見ると、件のダッチワイフ以外にカビ臭いだけで普通に何も無いようなので、
そのままベランダのある和室部屋に入っていった。特にこれと言って変わった様子も無い。
で、シーンとした和室を二人して突っ立ってあちこち照らしていたんだが、急に「ズズズ」「ズズズ」と軋む音がした。
「ザーザー」っと何かが擦れる音もする。
「はいはい。怖くねーから。ビビらそうとか思ってる?」って連れが言う。
「それはこっちのセリフだ」とか何とか返してるとまた「ズズズ」「ズズズ」「ザー」「ザー」と音がする。
何だ?と思い、音のする方へ二人して懐中電灯を向けると、和室の押入れの襖が「ズズズ」っと勝手に開きだした。

音で気づいて襖を照らすと、ガリガリにやせた坊主頭が青白い顔だけだしてこっちを見てる。
懐中電灯の光で照らされた「坊主頭の青白い顔」これには二人ともビビった。
「マシニスト」って古い映画があるが、チラシにあるように手を横に開いてるあんな感じだよ。
95 :本当にあった怖い名無し:2020/12/01(火) 17:37:44.64 ID:WkR8fkJV0.net[8/11]
襖が尚も開き続けて、そこからまさに骨と皮だけのあばらの浮いたガリガリの「全裸の男」が、
女の子がままごとに使うような、大きな女の子の人形を抱えてズリっと押入れの上段からユックリ下りてきた。
下りてきたというよりもスライムのようにズルズルとずり落ちた。
襖が開くと同時に物凄い異臭が部屋に立ちこめる。臭いなんてものじゃない汚物の異臭。
暗闇の中、懐中電灯に照らして見る「全裸の男」はとにかく異様すぎて狂気の世界。。
押入れから落ちてきたその異様な人間は、軟体動物のようにくの字に体を揺すりながら立とうとしてる。
前歯が抜け落ちた口からか細い声であうっぅって感じで意味不明な奇声を発し
ユラユラ体を揺らして立ちあがり、その場で大きな女の子の人形を抱えてフラフラ回りながら歌ってる?
恐怖というよりは狂気の世界。
誰だ?と言っても日本語も通じなかった。その場で動けず二人してボケッと奇怪なそいつを照らしてたよ。
96 :本当にあった怖い名無し:2020/12/01(火) 17:39:48.16 ID:WkR8fkJV0.net[9/11]
想像してみ。
暗闇の中、軟体動物のようにユラユラ体を揺らしてる人形抱えた骨と皮だけのよだれ垂らした全裸男。
クネクネしながら懐中電灯の光の中で歯の無い口を開いて人形に話しかけて、
時折ピタッと止まって、こっち向いてニヤっと笑うんだよ。明らかに違う世界に逝ってらっしゃる。
一歩こっちに近づいてくるだけで総毛立つ。もう怯むなんてものじゃない。声も出ない。
二人してそいつに懐中電灯の光をあて続けた。
あぅぅぅ あぅぅぅ あぅうう~っと呻き、涎をたらしスポットライトを浴びて回りながら人形と踊る全裸男。
空気に乗って流れてくる凄まじい臭気。もうそこは異世界だった。

暗闇で懐中電灯に照らされた異臭を放ち暗黒舞踏を踊る全裸の男。ヤバすぎて玄関の仏壇とか頭からすっ飛んだ。
しかし流石は連れ。そんな状況で窓を開け、おもむろにベランダに看板を取り付け初めた。
だが、こいつ流石だなと思ったのもつかの間の事だった。
何と、用が済んだらあの野郎はベランダ乗り越えて軒をつたってそのまま下に飛び降りやがった。
で、下からこっちに向かって言うんだよ。「退散」「怖すぎるわ」「窓締めてから降りてこいよ」って。。。
更に、「押し入れの下段を見ろ」と。
97 :本当にあった怖い名無し:2020/12/01(火) 17:40:51.12 ID:WkR8fkJV0.net[10/11]
マジかよ。。一人で固まったわ。
で、一瞬目を離してた全裸男に視線を向けると、ユラユラと踊りながら小便まき散らしてやがる。
まさに、色んな意味でぶっ飛んでる。。。としか言えない。と、突然全裸男の動きがピタッと停止した。
目と目があった。全裸男はニャーっと笑い、手にしてる人形をこっちに差し出すように向け、にやっと笑う。
突然「らぁ~ひゃらぁらぁ らぁ~らぁ~」と甲高い声をだし歌い始めると、
さっきよりも早く回り始め、段々こっちに寄ってくる。連れの「押し入れの下段を見ろ」って言葉通りに
下段を照らして見たら、そこにも居たよ。もう一人居た。増えてる。こっちも同じく「ガリガリの全裸男」

だがこの男、押し入れで体育座りをしたまま全く動かない。はにかんだ顔でじっとこちらを見てるだけ。
多分ずっと見ていたんだろう。ガリガリにやせた全裸のつるっぱげが体育座りで一体増殖した。
代わりにこっちは一人逃走してる。状況的にヤバいしキモいし、
何が怖いって、体育座りで、はにかんだまま微動だにしない。
アリエナイ・・まさかまだ居たりして?とか思ったら、さすがに無理だった。もう無理。異常。ギブアップした。

マジで言葉の通じる怖い人の方がマシ。霊の方がマシ。そう思った。これは「さわりようが無い。」
もう一目散にベランダ越えてダッシュで逃げた。言われた通りちゃんと窓は締めた。
ベランダ飛び越えて地面に下りた後で思った。あの和紙の「唖 稀 呪」、何だよ「術」効いてるじゃねーかって。。
門を抜け後ろを振り返ると二階のベランダの磨りガラスに踊る全裸男がナメクジのように張り付いてた。

後日、聞くとヤミ金業者の差し金の逝ってるパンチドランカーとか。嫌がらせの金絡みの占有、占拠ってやつだな。
あれはカルトなホラー映画並みにぶっ飛んでた。
それから、そのヤミ金屋の絡んだ話しは何か無いのか?と連れに合えば必ず聞いてたよ。
単なる好奇心だけど、趣向考えてアレを仕込んだ奴がどんな奴なのか見たいって感じでね。

おしまい。

https://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1605803008/

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