297 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/02/24 14:39
その晩、彼は眠れなかった。テレビをつけようとし
たら急にバチンと消えた。部屋中真っ暗になった。
ブレイカーが落ちたのかと思ったが、一階にわざわ
ざつけに行くのも面倒だったのでそのまま横になることにした。
相変わらず眠れない、さらに眠れない。下宿の裏
庭から足音が聞こえた。その足音は一人ではなかった。二人、三人。
足音は息を殺しながら何かを探しているようだ。
だれかの部屋を探している。表からではなく裏から。
なんかやばいとは思ったが、幽霊とかその類とは考えなかった。
自分の部屋の下でも立ち止まったが、足音が完全に
消えたのはその横の部屋の前だった。少しして
地震が起きた。最初のうちはたいした揺れじゃ
なかったが、その揺れは止まずますます強くなってゆく。
地震じゃない。その時思い出した。あの足音の主はどうなったんだ。
恐る恐る窓に近づく。カーテンを少しめくる。
揺れがまた激しくなる。窓を開けないと斜め下を見れない。
カタカタ音を立てる窓をガタガタと開ける。その時周りに
明かりがなかったのにそこだけは見えた。男が二人斜め
下の部屋の窓か壁に両手をついていた。ドンドンと揺らしていた。
驚いて後ろに飛びのいた。出口は裏庭とは逆だが逃げら
れないと思った。布団に包まり必死に他ごとを考えようとした。
その時窓を開けたままだということに気がついた。
このままでは眠れない。でも窓には近づきたくない。
揺れは弱いながらもまだ続いていた。布団を被って窓を閉めにいく。
何でこんな日に風があるんだ。カーテンも揺れる。
見たくもない窓の外がチラッと映る。何もない、何もない。
またカーテンがめくれる、それは風ではなく、男の手だった
という。そしてその瞬間、黒紫の男の顔を見た。
朝気がつくと窓は閉まっていたらしい。すぐに荷物
をまとめて大学に行った。
それから数日、部屋に戻らなかった。それでもどうしても必要なもの
があるので友人を連れて昼間に再び部屋に足を踏み入れた。
別に部屋は荒されてなかったが、そこら中に足跡がついていた。
私はこの話を聞いても、単なるやくざとかじゃないかと思いました。
それを彼に言うと彼は怒ったようにこう言いました。
「壁や天井にも足跡がついてたんだぞ。」