34 :霊に嫌われてます。 ◆hpLVpVUU :02/03/13 21:52
ある男が中古車を買った。
金があまりなかったので、事故車を買った。その車を選んだのは、値段の割に
装備がよかった。そこそこのカーコンポも付いていたし、何より気に入ったのが
カーナビまで付いていた事だった。しかも音声ナビ付きだった。
早速、休日にドライブに出掛けた男は、中古の割にはよく走るその車にすっかり
満足していた。運転しながらカーコンポやナビをいじったりしていた時、その
ナビに行き先指定ナビ機能がある事を発見、早速試してみようといじってみると
すでにどこかに行き先が設定してある。
暇だった男は、面白半分にナビの音声ナビゲーションに従い、その行き先まで
行ってみる事にした。
「次の交差点を右に」「500m先の交差点、左に」。初めて使う音声ナビにすっかり
夢中になり、気付いてみると見知らぬ峠道。
段々、辺りも暗くなって来ていたが、ナビの地図上で見ると、設定されている目的地
はあと僅か、折角ここまで来たのだから目的地まで行ってみようと、そのまま運転を
続けた。しかし慣れぬ峠道での運転、すぐ着くかと思った目的地だったが思いのほか
時間が掛かり、辺りはすっかり闇に包まれていた。
ナビの音声はずっと「みちなりです、みちなりです」を繰り返すばかり。事実、ずっと
一本道なので、惰性で運転を続けていたのだが、やがて「目的地まであと800mです」
と、やっと終点が近づいて来ている事を告げた。
でも、相変わらず辺りは漆黒の峠道。一体、こんな所に何があるのか?そもそも、何も
無くただ単に中古車ディーラーが動作テストの為に適当に設定しただけじゃないのか?
そんな不安が頭をよぎりつつもナビは「あと500mです」「あと300mです」と、読み上げ
を続けている。
目的地の読み上げが、あと50mを切ったとき、男を猛烈な不安感が襲った。
その言い知れぬ不安感が恐怖に変わり、目的地直前で車を急停止させた男だったが、
やはり折角ここまできたので、目的地に立ってみようと車を降りて愕然とした。
車の停まっていた1m先の道路がいきなり無くなっていたのである。おそらく崖崩れ
か何かで、すっぽりと道が欠落していた。
慌てて車内に戻り、ホッと胸を撫で下ろしていた時に、おもむろにナビから今までの
声とはまったく違う声色で
「あと、少しだったのに.....」