洒落怖

黒のスポーツカー

138 :その1:02/03/28 19:55
投稿しま~す。
長いです、スマソ。

これは、本当にあった話です。
長年乗っていた車が車検を迎えたのを期に、私は新しい車を買いました。
中古車センターで見つけたその車は、黒のスポーツカー。
値段の割に綺麗で走行距離も少なく、とても気に入って購入したのでした。

ところがその車を家に持ってきた翌日、
運転席に乗り込んで、妙なことに気付きました。
助手席に、何本かの長い髪の毛が落ちているのです。
一本手に取ってみると、少しばさついた真っ黒な毛。
しかし、中古車センターで試乗した人のものかもしれない、と
その時はたいして気に留めませんでした。

139 :その2:02/03/28 19:55
そのまま車のエンジンをかけ、職場に向かった帰り道のこと。
私の自宅まで曲がりくねった山林を20分ほど走った所にあり
この道は深夜にならずとも人通りがありません。
毎日通る慣れた道ではあるのですが、この時は
どうしたことか、身震いを感じました。
「風邪引いたのかな……」
そう思った、その瞬間でした。
「はっ……?」
私は、左側の視界に”何か”が写ったことに気づき、一瞬凍り付きました。
「見てはいけない、見てはいけない……」
とっさに自分に言い聞かせ、私はハンドルを握り締めスピードを上げました。
しかしその時、パッと前方に白い影が走り、私は反射的に急ブレーキを踏みました。
キィィィィー。
凄まじいブレーキ音と共に車が停止し、前のめりになった時、
「ぎゃーーーーー!」
私は自分の声にならない声を聞きました。
助手席ドアの外側に、真っ黒な長い髪を振り乱した若い女性が張り付いて
こちらを睨んでいたのです。
その髪と、今朝助手席で見つけた毛が自分の中で交錯してします。
「早く車を発進させなければ」
私は言いようのない恐怖と同時に、身の危険を感じ、
慌てて車を発進させました。
「入れて~中に入れて~」
ドアに張り付いた女性が、窓ガラスを叩き始めました。
その声は、か細くもどこか力強く、私は無我夢中でアクセルを踏みました。

140 :その3:02/03/28 19:56
家に着いて、ハッと我に帰った時には、もうあの女性はどこにもいませんでした。
きっと幻覚を見たのだ、私は疲れているんだ、そう自分に言い聞かせ、
その日はすぐに床につくことにしました。

しかし、部屋の灯りを消して、眠りに入りかけた時です。
ペタン……ペタン……
廊下から、妙な音が聞こえてきたのです。
「連れて来てしまったんだ……!!」
鳥肌が全身に立ち、冷や汗がどっと流れました。
ペタン……ペタン……
その音は、生身の人間の足音とは違い、水分を含んだような音です。
「頼む、消えてくれ……」
私は一心にそう祈りました。
が、その音は段々私の方へ近づいて来ます。
ペタン……ペタン……
「やめてくれ~!!!」
恐怖のあまり、そう叫ぶと、私の頭の中に声がしました。
「入れて~中に入れて~」
私はもう半乱狂になり、とにかく知っているお経を全て唱えました……。

気付いた時には、朝になっていました。
やはり、疲れているため昨日の自分はおかしかったのだろうか。
しかし、廊下に出た途端、また昨日の恐怖が鮮やかに蘇りました。
なんと、玄関から私が寝ていた部屋の前まで、水跡のようなものが
人間の足跡のようについていたのです。

141 :その4:02/03/28 19:56
『あの車には何かある!このままでは、身が危ない』
そう直感した私は、すぐに中古車センターに電話を入れ、
車をまた買い取ってもらうよう手配しました。
車は友人に頼んで、センターまで持って行ってもらいました。
その後、水跡のついた廊下は気持ちが悪いので、
板を全て剥がし、近くのお寺へ持って行きました。

私の話を全て聞いた寺の坊さんは、真っ青な顔をして
「その車にこそ霊がついている、その車を持って来なさい」と言いました。
しかし、車はもうすでにセンターへ返したことを告げると、
坊さんは静かに首を振りました。
そしてつぶやきました。
「その車についた霊は人を殺し兼ねない、いや既にもう何人かは……」

その後、私の身には何も起きていません。
しかし、あの車は今頃どうなっただろうか、と考えることがあります。
既に廃車にされていれば良いのですが……。

終わり。

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