222 :ムササビ56 ◆TC5.ZMGs :02/04/10 06:41
とにかくわたし、人形が苦手なんです。
特にあの、市松人形の類が。
昔から、女の子が生まれると市松人形を贈ったりしますよね?
わたしの実家にも、あったんです。市松人形。
ちいさいころ、妹と家の中で人形であそんでいたとき。
(このときの人形はリカちゃん人形の類でした)
だれかが、わたしたちの会話を復唱してるのが聞こえたんです。
「きょうはどちらへおでかけ?リカちゃん」
(リカちゃん)
「ママとおかいもの♪」
(おかいもの)
といったふうに。
最初は気のせいかと思っていたのに、その声はだんだん大きくなってくるんです。
聞こえていないのか、妹はまったく気にする様子はありません。
ひくい、おとこのひとの声のように思えました。
いったいどこから、と、部屋を見まわしてももちろん誰がいるはずもなく、
だいたい、家族のなかで男の人は父だけで、
昼間は当然、父は仕事に出かけています。
(ヘンな人が家の中に入ってきたのかも?!)
と、窓のほうを見上げたときに気付いたのです。
窓のすぐそばには、人形ケースがあって、
その声は、あの、市松人形から発していたのでした。
「あ、こわい」、と思った瞬間、気を失いました。
それまで、ただ、遊んでいただけなのに、突然。
目がさめたとき、遊んでいたリカちゃん人形がそのまま散乱していました。
妹は居間で、何事もなかったかのようにテレビを見ていました。
いえ、ほんとうに、何事も無かったのでしょう。
おそらく、ただの夢なのです。
でも、そんなことがあって以来、わたしは人形がまったくダメになってしまいました。
それだけの話。
それだけの話です。