767 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:2001/08/19(日) 09:34
インターネット怪談コンテスト 電脳百物語ふたたび
「山小屋で・・・」
先生の通う大学では、毎年12月下旬、
東北の山中で2週間の冬合宿登山を行ったそうです。
その年は例年以上に雪が深く、先生たちは近くの避難小屋で
宿泊する事になったそうです。
小屋につくと、既に別のパーティーがいました。
先生は先客が妙に静かなのが気にかかったといいます。
単に静かなのではなく、どうも沈鬱な雰囲気なのです。
768 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:2001/08/19(日) 09:34
夕食後、突然先客のリーダーがこちらに来て話を始めました。
昨日の吹雪の中、一人の新人部員が疲労と寒さで倒れ、意識不明に陥り、
そして、今日の明け方、息を引き取ったそうです。
彼らは、奥にある押入の床板をはずし、遺体をシュラフにくるんで
土の上に安置していました。
先生はゾッとし、『遺体と同じ小屋に寝ている』という
生々しさが胸をよぎったそうです。
769 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:2001/08/19(日) 09:34
早めの消灯後、先生は疲れもあって早々と眠りに落ちました。
何時間経ったでしょう。先生は夜中にふと目が覚めました。
その時、どこからか微かに
『ガリ・・・ガリ・・・』
という音が聞こえてくるのです。
身を起こすと、同じ事に気付いているらしい周囲の者も起きています。
全員の眼は奥にある引き戸の方に向けられていました。
770 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:2001/08/19(日) 09:34
しかし、誰もそこを確かめようとはしませんでした。
『ガリガリ・・・』
という音はその後も断続的に聞こえてきます。
いつの間にか、誰もがその壁から遠ざかり、
小屋の入り口付近に集まっていました。
先生は『もう、眠れないな』と思ったそうです。
とうとう意を決した向こうのリーダーが押入に駆け寄り、
勢いよく引き戸を開けると、床板をはがしました。
771 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:2001/08/19(日) 09:35
「何も変わっとらんじゃないか・・・」
まるで自分に言い聞かせるような声だったよと、
先生は話してくれました。
しかし、戸を閉めてしばらくすると、また
『ガリ・・・ガリ・・』
という音が聞こえてきます。
しかも、今度は引き戸までが、
『ガタガタ・・・』
と鳴り出しました。
よく見ると、こちら側に向かって
誰かが体を預けるように
戸が大きく膨らんでいるのです。
772 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:2001/08/19(日) 09:35
そして、誰一人眠れない夜が明けました。
というより、山岳救助隊が到着して夜が明けたのを知ったそうです。
「何だ、これは!」
隊員の一人が戸を開けて床板をはがした瞬間、
大きな声を挙げました。
なんと、床板の裏には爪で引っ掻いたようなあとが、
無数についていたのです。
赤いシュラフに包まれた遺体は、
まるで何事もなかったかのように、
全く変わらない状態でそこにあったそうです。