シリーズもの

妖怪退治の仕事してるけど、なんか質問ある?6 師匠の死(未完)

191 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/07(土) 22:15:17.90 ID:VUR2uxpM0
すこしだけ時間あるので、先生の話にも関係する妖怪の話しようかな
あんまり有名じゃないけど、「倀」っていうやつ

これについてのくわしい記載とかどこの本に乗ってるとかようわからないが
確か、昔話で、虎に食われた人間が「倀」になって、他の人間を嵌めて虎に食わせる。
そうしてやっと、最初に食われた人間は虎から解放されて、成仏できるとかなんとか。
つまり「倀」ってのは、よくある系の話で
例えば、自殺した人間が、次に来る人間を殺そうとするとかそういうのよくあるじゃん

198 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/07(土) 22:23:09.99 ID:VUR2uxpM0
まぁ、多分、それができるのはそうとう道行を得た妖怪みたいなやつらなんだろうけど
有名なやつだと、金太郎とかの話でもクマの手下として出てなかったっけ?
ここら辺はよく覚えてないや。

「倀」はそういう風に殺されてもなおとらわれている人間のことを指すし
とらえている側のこともさしている部分がある。
昔だと、そういう風に道行の高い動物または入道がこういう風に呼ばれたりしてたんだけど
最近だともっぱら、とらえているのが「場所」だったりして
そういう「場所」もこの「倀」って妖怪なのかもね。
自殺の名所とかw

247 :名も無き被検体774号+:2013/12/08(日) 06:52:55.55 ID:fsWFN3tC0
妖怪を利用して嫁の連れ子を行方不明にしたいんだけど(死んでもいいけど)、どうやるればいいのかな

258 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/08(日) 10:13:07.98 ID:IyViFD5j0
>>247
相当つれごのこと嫌いなんだね。
それで少し思い出しのたのが昔、先生が言っていた「死」という漢字
もともと「死」は「一」つまり地面かな?
その下に死体が埋まっている状態を指しているんだって。
つまり土の中に「タ」と「ヒ」の形で死体がね。
むかしでは死体を埋葬する際に二種類の方法があって。
どっちか忘れたんだけどひとつは親族とかを普通に埋葬するときで
人を座った形にして、樽の中に入れて埋めるんだって。
もう一つはすごくむごくて、なぜか埋葬する人の背骨をま逆にへしおって
そのまま地面に埋めるとか何とか。
これからわかるものの一つが「怨」という漢字。
ぱっと見た感じで分かると思うんだけど。
これは誰かの「死体」になることを、「心」から望むという意味になるらしい
それも、普通の死に方じゃなくて、なんかよくわからない感じに背骨をへし折って
死ぬのを望んでいる。

260 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/08(日) 10:20:45.53 ID:IyViFD5j0
続きざんす。
で、この怨と同じ読みができるのが「恨」
これは「心」から変化した、えっと、何へんかわすれたけど、あの左側の部分と
「良」という漢字から点をとったものからなっているんだよね。
つまり、良いという状態から、何かかけてしまった。
もっとはっきり言うと「恨」っていう漢字は、心が良くない状態にある
ということなんだよ。
だれかをねたんだりうらんだりするのは仕方ないことかもしれないけど。
それは相手側にとっても嫌なことだけど
一番は自分の心にとって良くないことなんだよ。
まぁ、他人事だから言えるかもしれないのだが
そんなにいやなら、離婚したら?
子供が嫌いで、でも母親のほうを愛しているとかいうなら。
それ惚れたほうの負けだからとしかいいようがww
童貞だけど生意気なこと言ってすまん

264 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/08(日) 10:37:25.94 ID:IyViFD5j0
ちなみに、俺はあんまほんよまねぇんだけど
いままで、先生に無理やりやまされた中で一番おもしろかったのは
「荘子」で、妖怪の話もしているけど、一番は妖怪の話で人が生きるための知恵というか
そういうのもたくさんあって面白いよ。

303 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/08(日) 18:11:29.91 ID:93/u28YU0
業や因果についてだけど
もともとの意味と、現代人がおもっているものは違う意味な気がする。
現代のやつは結構仏教に影響されているもので
で、仏教というのは偏見かもだけど
良いことをすれば幸せになれると的なことを言っているようなものだと
俺は先生から教わっている。

でも、いいことをしていい結果が生まれないなんでざらにある話だし。
じゃあ、これから先生の話をするので
多分その話の終わりころには、業とか因果とか当いうのがもう少しわかると思う

310 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/08(日) 18:29:45.02 ID:93/u28YU0
俺の先生の死因は溺死。
今思えば、先生は水場というのが嫌いであった。
海は絶対に近づかないし、川にさえめったのことない限り近づかない。
水道とかでさえ、あまり使わずに、水分補給はいつもペットボトルで
風呂は、浴槽にためたやつを使う。

昔、夏に先生を海に行かないかと誘ったことがあるのだが、もちろん断られた。
何でそんなに水が嫌いなんだとか聞くと、先生はいつも自分には霊感があるから
水辺とかそういう妖怪とか幽霊とかたまりやすい場所にいくと気分が悪くなる
と説明していた。
でも、一度酒を一緒に飲んでた時、先生はうっかりなのかわからないが口を滑らせて
自分は小さい頃港町で住んでいて、小さいころはいつも海で遊んでいた。
潮干狩りしたり、釣りしたり、もちろん泳いだりもした。
しかし、あるとき、先生が海で泳いでいるたら、何かに掴まれた感触がして
それで溺れそうになった
そして、一つ上の兄が溺れ死にそうだった自分を助けるため色々頑張って
結果自分は助かったけど、兄はかわりになくなってしまった。
とか言っていた

325 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/08(日) 20:35:11.15 ID:93/u28YU0
先生はお酒が結構好きだった。
しかもどっちかというと強いほうで、居酒屋めぐりとかが趣味だったりした。
あんなふうにべろんべろんに酔うの俺が知っているなかではあの時だけだった気がする。
俺もまぁまぁ飲むほうなんだけど。
強いほうじゃないし、特にビールとかの美味しさがまだわからなくて
いつも果肉入りのなんとかサワーとかを頼むタイプだった。
ちなみに先生によれば、脱童貞できればビールのおいしさが分かるらしい。
本当かどうかわからんが。
酔ったその日の飲みは、ちょうどとある仕事を終えた後で
詳しくは先生の話だからあまり語らないけど
ある家の妖怪を追い出した。でも、その家の子供は多分だけど虐待を受けていて
その妖怪は子供のことをかばおうとしていたのかもしれないとか
少なくとも、俺と先生は推測していた。

そして、俺がサワー2杯くらい、先生がアツカン3合くらい飲んだ時に
お前は、俺のやっていることがあくどいと思うか?
と聞かれたんだ。
俺はすぐさま頷いた。

329 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/08(日) 20:48:23.65 ID:93/u28YU0
すると先生は笑って。
実は自分でも、たまに自分のやっていることがすこし残酷じゃないのかとか思うことがある
でも、例えそうだとしても、後悔はしていない。
なぜなら、それは間違いなく自分のその時にやりたいと思ったことだからだ。
人間はセイチョクにいきるのが一番だ。とかなんとか。
俺はセイチョクって何ですかと聞いた。

すると先生はお酒が入ってか、すこし饒舌になって語り始めた。
セイチョクってのは「正直」ってかいて「セイチョク」って読むんだよ。
でも勘違いするな、セイチョクは「ショウジキ」じゃない。
「ショウジキ」はお坊さん用語で、嘘をつかないことを指している
お坊さんたちの世界ではウソをつくと地獄に落ちる。たとえそれが人のためのウソでも
だめだ。まぁ、お前も酒が飲める年になったから、世の中には「良いウソ」ってものがあるくらい
しっているだろうけど、でも、そんなことお構いなしに、ついたら地獄
だからウソをつかずに「ショウジキ」にいないとだめだ。

でも、セイチョクは違う。セイチョク正直、文字通りまっすぐであるという意味だ。
何にまっすぐか、そりゃあ、自分の心にだよ

332 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/08(日) 20:55:49.58 ID:93/u28YU0
そして、先生は、昔のすごい人で孔子ってひとの話をしてくれた。
ある日、孔子がある国の王様と話をしていたら、その王様が
「うちの国のものはみんな正直だ!例えばAの家の父親がBの家のヤギをぬすんだ
すると、Aの家の息子さんが、自分の父親が盗んだと証言したんだ」
すると、孔子はこう答えた
「私が思う正直はそうではありません。もし親が盗みを働いたら、子供はそれを隠し
子供が盗みを働いたら、親はそれを隠ぺいする。これが本当の意味での正直だ」
と。

334 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/08(日) 21:09:30.23 ID:93/u28YU0
自分の心に素直に従って行動する。
これがとても大切だ。妖怪と接する際も、人間と接する際もこれだけは変わらない。
自分の本当の心に従うんなら、うそついても、ごまかしても、なんか悪いことをしても
それはしかたないことだ。自分の本心なんだから。

セイチョクに生きるとどうなるかというと「満足」する。
「満足」している状態こそが一番心にとっていい状態で
それこそ、幽霊や妖怪なんて目じゃない。
「破ァ」でそういうのを追っ払うとか言う話があるけど
あれこそ真の意味で「満足」している人間だからこそできることが。
とかなんとか、確かそういう話をされた。

でも、そこで俺はふっと疑問を抱いた。
そして先生に、なら自分の心の欲するままに行動すればいいなら
セックスしたいならレイプすればいいし、ものがほしいなら盗んだり奪ったりすればいいけど
そういうのも仕方ないの?

すると先生は
それはいい質問だ。といった。

337 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/08(日) 21:21:48.37 ID:93/u28YU0
自分の心の欲望を満たすために好き放題やる。
しかし、これも心にとっては良くないことだ。
なぜかというと、心が「満足」を忘れてしまう。
いつの間にか心の中ではいつも「もっと、もっと、次は、次は」とひたすらそれだけになってしまう
これが、「魔」だ。

お前は霊感ないし、術とかそういうものとも無縁だろうが、この魔というのが
この業界の人間を滅ぼす一番の理由だよ。
いつの間にか心が欲望だけになった、満足することも、自分の心の目指すべき本当の道も
見失って、最後は妖怪よりもみじめなものになってしまう。

343 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/08(日) 21:46:51.20 ID:93/u28YU0
その頃にはもう先生から道とかの話しをされていたんだが
それについても、先生は触れた。
魔は、道をくもらす。

昔の修業するやつらはよく厳しい訓練とかしたりするんだけど
なぜかというと、この魔を産まないためだ
しかし。まがさす、という言葉のように。魔は駆除できるものではない。
ならどうすればいいのか。中国では無為自然という言葉がある。
なにもしない、何ともかかわらない。
そうすれば、魔はうまれない。

でも、これも無理だ。当たり前だが、なにもしないとか、死んじゃうwwww
じゃあ、どうするべきか。
まずは自分の心の中の魔を見つけて、それと向き合うこと。
自分の醜いこと、ダメなとこ、そういうのをちゃんと受け止めること。
それで卑屈にならないこと、なんか妙に自信かになったりしないこと。
あるべき現実をあるべきように受け止めて。
そして、それに振り回されて一喜一憂しないこと。
それができて初めて、人間としては一人前。
で、そこからも大切だ。

352 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/08(日) 22:12:46.86 ID:93/u28YU0
魔を駆除ぜず、手を引いて、自分の心の敷いたレールの上をゆく。
これが本来の意味のセイチョクだ。
しかし、自分ひとりだけで生きていく場合ならこれでいいかもしれないが
世の中にはたくさんの人間がいて、その人たちと関わり合いを持ちながら
我々は生きていかねばならない。

この時、他人がわれわれの心をぶらしてくる。
例えば、どっかの会社のサラリーマン。自分の本心を保っているとしても
例えば嫌な上司がいて、その前で嫌なのにぺこぺこしたりする。
すると、自分がどんどんと自分の本心が嫌になってしまう。
そして、いつの間にか本心を拒絶してしまい。
セイチョクどころか、魔でさえも直視しない。
これが今はやりの「鬱」だ。

じゃあ、どうすればいいか?
そんなのわからん。わかっていたら私もとっくに「聖人」だ。
方法は自分で探すしかない。

442 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/09(月) 23:30:31.49 ID:kJ4RESX20
先生にはいくつかのポリシーみたいなのがあった。
例えば、こういう清らかなことを言ったとすると。同じくらい卑猥なことをいうとか
誰かに親切をしたら、その直後に同じくらいの意地悪をするとか。
そういうところのある先生は、さらにこういうことを言った。

私は自分の魔を手なずけるのがへただ。
だからこうしていつも、行動で自分に言い聞かせないといけない。
自分は善人でも悪人でもない。
自分のやっていることに、自分の本心以外、別の理由をつけてはいけない。
善悪ではなく、自分が何を選ぶのかが大切だということ。
そして、自分の選んだことなら、決して後悔はしない。
こういうやり方を、中庸の道という。
私は、これが自分にあった道だとおもっている。
だが、多分、お前にこれは向かない。
じゃあ、お前はどうする?
お前にとっての本心とはなんで、どういう道をとるか?
その年だ。そろそろ決めなさい。

447 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/09(月) 23:51:18.46 ID:kJ4RESX20
俺はそんな先生の話を聞いて悩んだ。
思うところはたくさんあったんだが、自分の道とかそういうのを
言葉にして言えるほど、多分まだ俺はおとなじゃなかった。
先生が俺にこの話をしたのも偶然とかじゃなかった気もした。
かなり最初のほうで、うちの流派の話をしたが。「搬山」というもので
これの由来は愚公移山だ。

昔々、あるところにある村があった。その村は交通の便がかなり悪かった。
というのも、その村の目の前に大きな山があったからだ。
その村で一番頭の悪いじいさんは、これをなんとかしようとして
その山まで行って、土を掘って、その土を持って遠くの海までいき
その土を海に捨てた。

彼は毎日それをやった。そして、彼の息子と孫も、それを手伝った。
それでも、毎日海に捨てられる土の量は、微々たる量だった。
すると、村の最も頭のいいじいさんはその頭の悪いじいさんに言った
「あんたがどんなにがんばったところで、それくらいのことで山が本当になくなることはないだろう」
それを聞いた頭の悪い爺さんはこう答えた
「確かにそうだ。少なくとも私の生きている間に、この山は動かないだろう
だって、毎日これくらいしか捨てられないんだから
しかし、私が死んでも、私の息子は毎日土を掘っては捨てに行く。
息子が死んでも、孫が毎日土を掘っては捨てに行く
孫が死んでも、その子供が。その子供が死んでもその子供の子供が
毎日土を掘っては捨てに行く
そして、それを積み重ねば、いつかは山はなくなる」

村で一番頭のいい爺さんは、それを聞いて絶句した。
一方、その村の前の山の神さまがその頭の悪い爺さんの話を聞くと
やばい、この爺さん本気だし、多分マジでこれを実行される。
なら、山を無くされるくらいなら、どっか別なところに移ろう、と
自分で山を移動させた。

搬山流で最も大切なのがこの頭がわるい爺さんのような意志だ。
詩を歌う際とかも、この意志を持って歌う。
つまり、自分は決してあきらめない。どんなことがあってもあきらめない
だから、そっちのほうから折れろ。というようなことを妖怪に伝えるのが大切だ。
でも、それをやるには、自分の心の道をまずは見つけないといけない。
道しるべもなく、それほど強い心を持てる人間などありえないからだ。

449 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/09(月) 23:57:30.66 ID:kJ4RESX20
質問についてだが
俺の書き込みとかはいつもパソコンからだよ。
5個くらいを3カ月くらい単位でローテーションしてる。
携帯はガラケーで3つほど。カードを差し替えながら使ってる。
仕事は紹介がめいんだねー
昔のお客の口コミとかそういうの。
あと、お金持ちほど、嫌なものとかにつかれやすいから。そういう方面で
色々とね。
あと、芸能人とかよく宗教に入ったりしてるけど、こういうのも原因の一つだね。

487 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/10(火) 20:21:24.78 ID:fHHUpg380
晩御飯はやきそばと白いご飯と野菜ジュース
ちなみに魔道も、道のひとつだよ。
自分の本心を完全にすてて
ひたすら、自分の欲のみに忠実に行動する
もちろん欲求はどんどん膨れ上がるんだけど
もし、どんなにふくれあがっても、それを叶える手段をもっているとしたら
最終的に、この世のすべてを自分の思い通りにできるようになり
魔道にて、聖人に至るというわけだ。

489 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/10(火) 20:24:42.35 ID:fHHUpg380
続き。
先生の話を聞いて、少し俺は考え込んだんだが
やっぱり自分の道なんてまだよくわからなかった。
そして、ふと疑問がうかんだ。
そういえば、先生はどうやって自分の道をみつけたんだろう。
まぁ、人間なにも経験せずして、自分の道を見つけられるなんてめったに
ないことだから。
もちろん先生にだって、きっかけとか、そういうのがあるはずだ。
俺が素直にその疑問を口に出すと。
先生はそこから、自分の出生を語り始めた。
まず最初にびっくりしたのが、なんと先生はある港町の小さなお寺の次男坊だった
ということだ
494 :名も無き被検体774号+:2013/12/10(火) 20:37:03.20 ID:uhgiJ/XR0
先生、寺の息子だったのか…
495 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/10(火) 20:40:13.29 ID:fHHUpg380
>>494
やっぱり寺生まれはすごい。
焼きそばを掻き込みながら、俺はそう思った。
498 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/10(火) 20:57:52.24 ID:fHHUpg380
先生は三人兄弟だった。
長男と、次男である先生、そして三男。
両親は厳しい人たちだったらしく。かなり躾とかにうるさかったとか。
そして、まぁ、お寺の生まれってこともあって、結構仏教とかに触れる機会が多かった。
先生は小さい頃、自分の両親が嫌いだった。というより、怖かったらしい。
兄である長男は、かなり優秀で、両親のほこりだった。
そして、三男は末っ子ということもあり、大人たちから可愛がられた。
そんな中で、先生は自分が一番親に愛されていないのではないかと考えていた。
なぜなら、兄は優秀さもあってか、あまり叱られることがなかった。
弟は可愛がられていたから、何かやんちゃしても
仕方ないなー、という風に流されていた。
でも先生だけは、何かをやらかすごとに、いつもこっぴどく言われていた。
失敗するときに叱られる言葉といえば
「兄さんの小さい頃はこんなことはしなかった」とか
「お前は本当にダメな子だな」とかそういうやつ。
その割には、あまりほめられることもなかった。
学校で、自分としてはかなりいい成績をとっても
家では「もっと頑張りなさい、お前の兄さんのこのころはもっと高い点を取っていた」
とかであった。
509 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/10(火) 22:21:38.99 ID:fHHUpg380
先生の兄はやさしい人だったらしい。
先生が叱られて、一人部屋の中に閉じこもって泣いているときでも
いつも慰めてくれるのは兄だけだった。
でも、先生は家族の中で一番兄のことが嫌いだった。
兄はいい人だと分かっていたんだけど。
それでも、嫉妬というか、兄のその優しさがかえって自分をみじめにしているような
気がして
なまえきだった弟以上に、兄とは顔を見たくなかった。
そんな先生だったけど。
一つだけ、自信があることがあった。泳ぐことだ。
先生の兄は、運動神経はかなりのものらしかったが、泳ぐことに関してだけは
からっきしだった。
一方、先生は泳ぐことが大好きだった。
学校が終わると、いつも友達と海に潜っていた。
泳いでいるときだけは、兄より自分が優れている感じがしたらしい。
558 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/12(木) 12:11:10.88 ID:sax2rMK10
ことの起こりは先生が10歳の時のこと。
初夏の頃の話。普通の年なら、そこまで暑くないはずの時期だったんだけど
その時はかなりの猛暑だったらしい。
学校のプール開きはまだだったし、仮に開いていたとして
海のほうがたのしいから、そっちに行っていたんだろうけど
先生は友人たち何人かと一緒に泳ぎに行く約束をした。
しかし、それを親に伝えると、父親から反対された。
普段はそんなことないはずだったんだけど。なぜかダメだと言われた。
なんでと、父親に聞くと。これはお前の書いたものか?と
先生に一枚の絵を見せてきた。
そこにはうねうねとしたミミズのようなものが書いてあった。
しかし、そのミミズからは足のようなものが3本伸びていて
全体的に真黒に塗りつぶされていた。
確かに、それは先生の書いたものだった。
以前海辺に遊びに行った時、岩場でみた変な生き物だった。
学校の美術の時間に書いたものだ。
先生が確かに自分が書いたものだと答えると
父親はさらに聞いた。お前が見たものなのかと?
先生がさらに頷くと
父親は、ならお前は今年、海にいっちゃいけない。と
そういった。
560 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/12(木) 12:32:12.12 ID:sax2rMK10
北海道の黒いきつねだけど。
別に一匹いたところで日本が破滅するとかそういうやつじゃないし。
悪い予兆でも何でもないと思う。
昔のどっかの国の話で、ある日、日食が起きた。
いまだと、それは太陽と月がならんでうんぬんってわかるんだけど。
大昔の人間はそんなことわからなかった。
それを見た王様はとても不安になった。
そして、配下の人間に、これは吉兆とみるべきか、それとも
とんでもない悪いことの前触れなのか。
ある大臣は言った。
昔の国でもこのようなことが起きた。その時は人民がひどくおびえ
最終的には乱もおきた。だから、王様。気を引き締めてくださいと
しかし、もう一人の大臣はこういった。
いいえ、王様。これは喜ぶべきことです。太陽などよりも重要なのは民衆がどう思うかです。
日食はもしかしたら、乱がおきるという前兆であるかもしれません。
しかし、王はあらかじめ、それを知ることができ。
自分の間違った政治とかを見直す機会ができた。
その結果、乱を未然に防ぐことはできた、とお触れを出しましょう。
そうすればきっと、民衆は王の器に感心し、もっと王を信頼することでしょう。
といった。
日本でも、王宮で白い蛇をみて、それで吉兆だとおもい。
貴族たちが豪遊していたら、乱がおきて
こんなの吉兆ではないじゃないかと切れた貴族が蛇を切ると
たちまち蛇が真黒になったという昔話あるよね。
これはもともと黒い蛇が白い蛇に化けた、という考え方と
実は白い蛇で、最終的にそのおかげで乱は収まるはずだったのに
貴族がころしたから、真黒になってしまった、という説がある。
でも、結局のところ、考え方一つで全然違う。
いいことの予兆だとしても、それで気をゆるさず。
悪いことの予兆だとしても、それでパニックにならず、むしろ自分の間違ったところとかを
見直すチャンスだと、思えば良いと思うよ
562 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/12(木) 12:52:24.38 ID:sax2rMK10
続き。
そんなことでもちろん先生は納得しなかった。
なんでいっちゃだめなの?と父親に聞いたが、父親は駄目なものは駄目だと
一点張りだった。
さらにやっぱり行きたいと言い出すと、父親は怒り始めて
こっぴどく先生を叱った。そして、今日は一日中家を出るな。といった。
先生はあまりの理不尽さに、悲しくなって、また自分の部屋にもどると
また隠れて泣きはじめた。
すると、父親が叱っているのを聞いたのか
兄が部屋にやってきた。そして、何があったと、先生に聞いた。
兄は話を聞き終わると、少し笑って、なんだそんなことかといった。
そして、兄は先生にある提案をした。
605 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 00:25:15.13 ID:yGOYmOZx0
続き。
先生の兄は親からかなり信頼されていた。
だから、今日は友達とドッジボールをするとウソをついて
弟の先生も連れて行きたいと親に言う。
先生は今日の間、家を出るなと言われているが
さすがに、いつもしっかりしている兄が世話をやくといいだすなら
外出は許可してくれるだろう。
まぁ、泳げない兄が先生を連れて海に行くなんて思わないだろうしね。
そんで、兄は先生と一緒に海に行く。
水着とかは隠して持っていけばいいしね。
子供が考えるようなザルな作戦だったけど。
海に行くたかった先生はこの話にすぐに乗った。
兄はさっそく、その話の許可を父親からもとめた。
父親は、いいが、絶対に弟を海に連れていくなよ。と念を押したが
結局、許しを出した。
多分父親のほうも、次男を家に一日中閉じ込めておくのはすこし申し訳なかったのかもしれないね。
兄も同行するし、とかで安心した部分もあったのかも。
しかし、兄と先生は家を出ると、すぐさま海に向かい始めた。
606 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 00:40:15.02 ID:yGOYmOZx0
海についた先生は早速海に入って遊び始めた。
兄は泳げなかったけど、やっぱり猛暑に堪えたのか、すごく浅いところで
水につかっていることにした。
ちなみにだけど、そこは砂浜とかそういう立派に整備された海水浴場のような場所ではなく
むしろごろごろとたくさんの岩が転がっているような場所だった。
先生と、その時待ち合わせしていたメンバーは、よくそこで泳いでいた。
岩が結構多かったためか、潮の流れがあまり急じゃなかったし。
溺れそうになっても、すぐにそこらへんのでこぼこした岩に掴まれるから
地元で泳ぐというと、そこだったらしい。
先生は待ち合わせていた友人たちと泳いでは、はしゃぎまくっていたんだけど
そのうち、友人たちは疲れて一人また一人と、兄のいる水の浅い場所に移動して
兄とおしゃべりするようになった。
しばらくたって、気がつくと、先生は一人で泳いでいて
自分の友人たちは全員、兄と何やら楽しげに遊んでいた。
すると、先生はなんだか自分の友人をとられた気分になって。
なんだかいたたまれない気分になった。
609 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 00:52:18.24 ID:yGOYmOZx0
先生は少しむきになって
自分は泳げるから、一人でも楽しいしとか強情を張って
正直少し疲れていたんだけど、浅瀬にもどらずにもっと水が深い場所に向かった。
そして、そのかなり水深があったところに着くと(実際は2メートルくらいらしいけど、子供からしたらかなり深いだろうね)
そういえば、あのヘンテコなミミズを見たのも
ここらへんだなぁと、思い出した
でも、なんで急に父親は海にいっちゃいけないとか言い出したんだろうとか
ぼんやり考えていた次の瞬間。
先生は右足のほうに何かひんやりとしたものが触れたような気がして
そんで、全身が急に動かなくなった。
612 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 01:21:52.71 ID:yGOYmOZx0
あ、やばいとか、思う暇もなく
何かに足をひっぱられたような感覚で
先生の体はぐっと、水面下に沈んだ。
あまりにもいきなりのことだったから、先生は何口も水をのみこんでしまった。
それでも、みずに慣れていた先生はなんとかして態勢を立て直そうともがいたが
やっぱり体は思うようにうまく動けなかったし、ぐいぐいとひっぱられる力のせいもあって
逆にどんどんと沈んだ。
息ができなくなって、半分パニックになって、水の中では上下左右もわからなくなって
先生の頭はどんどん真っ白になった。
そんで、ふとした拍子だったんだけど、先生は水中で目をあけた。
塩とか水中のゴミとかそういうのでかなり目は痛いし、みずの屈折とかもあるし
落ち着ける状況ならともかく
パニックな頭で一瞬で状況を把握できるわけなんかなかったんだけど。
先生はなぜかそれだけは奇妙なほどクリアに見えたと言っていた。
真黒で、毛むくじゃらで、目も口も鼻も耳も顔さえもなかったんだけど
不気味なニタニタした雰囲気をだしていて
それからは何か黒いモヤのようなものが自分の足に伸びていて、絡みついていた。
613 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 01:44:53.26 ID:yGOYmOZx0
そこからの先生の記憶はあいまいになったらしい。
深い水の中で、一体何が起こったのかはもう覚えていなかった。
しばらくして、意識をぼんやりと取り戻すと
まわりでは焦った、大人の声とかが聞こえてきた。
口の中からは激しい異物感がして、頭はガンガン痛く、体はピクリとも動かなかった。
なんとかして無理やり目をあけると
まず見えたのは、自分のすぐ隣に横たわっている誰かだった。
だれだろうとか、自分はどうなったんだろうとか、どこか思考が遠く、まとまらなかった。
でも、目線を少しづつずらし、なんとか隣の人物の顔が見えた。
先生の兄だった。
顔は真っ青になっていて、目と口は半開きになっていた
あれ?どうして兄がとかおもったのは一瞬。
次の瞬間、兄の瞳はじろりとこちらを向いた。
何かすごい感情がこもった目だった。
もちろん、言葉はなにもなかった。
でも、なぜか先生にはその目だけから、兄の言いたいことがわかった。
「おまえのせいだ。」
そこで、先生は再び、気を失った
614 :名も無き被検体774号+:2013/12/14(土) 01:59:25.25 ID:1aT2RGe/O
>>613
こわい!めっちゃこわい!
つか何で覗くといつも>>1に遭遇するんだこわい!
615 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 02:01:46.90 ID:yGOYmOZx0
あとから先生が聞いた話。
先生が溺れてからしばらくたってやっとそれに気がついた子供たちは、あせって大声をだしたりして
大人を呼んだ。
幸い、その日は暑かったから、近くで、他の大人たちも泳いでいて
なんとか駆けつけた
そしていつの間にか兄が子供たちの間から消えたこと。
たぶん、兄は弟である先生を助けようとしたこと。
兄は先生の近くの場所で溺れて死んでしまい、先生は助かったこと。
とかそんな感じの話。
でも、先生はそんな話を信じられなかった。
兄は泳げなかったのである。そんな兄が自分を助けるために
水が深い場所に来るなど、ただの自殺であることなんて明白だった。
葬式やら、何やら色々あって。先生の両親はずっと泣いていて
病院に2,3日いた先生が家の中に帰ると、ひたすら居心地がわるかった。
だれも先生をせめなかったんだけど。
しかし、なんとなく、まわりは自分のせいで兄が死んだのではないかと考えているのではないかと
思った。
618 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 02:19:17.00 ID:yGOYmOZx0
父親ともまともに話せなかった。
なんせ、海に行くなといわれたのに、それをやぶって
しかもこの始末である。
というか、父親だけでなく、周りとも目もまともに合わせることができなかった。
目を合わせると、お前が悪いといわれている気がした。
誰とも話したくなかった。
学校にもいかず、ずっと一人部屋に閉じこもっていた。
食事はいつもいつの間にか部屋の外に用意されていた。
そして、ひさしぶりに口を開いたのは、兄の四十九日だった。
夜になって、父親に無理やり部屋から引っ張り出されて
こういわれた
「兄に会いに行こう」
620 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 02:30:44.79 ID:yGOYmOZx0
先生と父親は月明かりの中
先生が溺れた場所の近くの岩場まで向かった。
そして、しばらく二人とも無言でじっと水面を見つめていた。
先生は兄さんはなんで死んでしまったのだろうかとか
あの水の中でみたものは本物だったのだろうかとか色々と考えた。
すると、暗い少し離れた水面のほうに、何かが見えた。
靴だった。
たしか、あの日、兄が付けていた靴だった。
なぜかその時は先生は、あれを拾わないと!とか思って
そんで、ニ三歩海のほうに近づくと
がしっと後ろの襟を父親に掴まれ、どうしたんだ?と聞かれた
兄さんの靴があそこにある、と先生が答えると。
父親はどこにある?よく見てみろと言ってきた。
先生はもう一度、目をこらえて先ほど靴があった場所を見てみると
今度は何もなかった。
あれ?と先生がふしぎに思っていると。
父親は何かに納得したかのようにして
そして先生にこういった。内地のほうに知り合いがある。お前をその家のほうに送る、と
621 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 02:42:07.73 ID:yGOYmOZx0
ねるねるねーるね
629 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 11:48:20.56 ID:0DdvY+ZW0
そこからの話を、先生はまぁ色々あったと略した。
とりあえず、わけもわからず急にある人のお家に居候させてもらうことになって
その家はかなり遠い親せきの人で、年をとった夫婦だったんだけど、子供がいなくて
それなりにかわいがられた。
そして、兄の死からしばらくして、先生は水の流れがある場所がこわくなった。
というのも、死んだはずの兄の声が聞こえてくるらしい。
最初はなにか聞こえないことをひたすらささやくだけだったんだけど
だんだんと、その声はエスカレートしていった。
兄の声は様々なことを語りかけてきた。
実は兄も自分のことが嫌いだったこと。
確かに兄と三男は親から甘やかされたが、でも、
兄弟の仲で、いつも先生が一番親に注目されていたこと。
両親はいつも次男の先生と一緒にいることが多かったとこ。
自分はどんなミスをしても、親に軽く流されていて、どこかないがしろにされていた感覚があって
先生がうらやましかったこと
先生が叱られると、良い気味だとおもっていたこと。
泣いている先生を慰めることで、自分はできた人間だと良い気分になれたこと。
そして、自分が死んだのは先生のせいだ、ということ
631 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 12:04:58.14 ID:0DdvY+ZW0
先生は、その後実家に戻ることはなかったらしい。
なんだか、あの町の、あの海の近くに行くのがこわかったからだ。
中学に入って、高校に入って、そして大学で京大に入った。
大学に入ると、父親ががんで亡くなったと知らされた。
大学ではとにかくいろんなことを勉強して、いろんな人と出会って
やっと、自分を悩ます兄は「倀」という存在になったのではないかと分かった。
兄はいまでも、あの海のほの暗いそこで、先生をおぼれさせたいとおもっているんだと。
自分には霊感のようなものがあって。
自分の両親は自分を守るために、色々ときついことを言っていた。
自分は両親が嫌いなわけではなく、好きだからこそ、愛してほしかった。
自分が兄に対して複雑な感情を抱いているように
兄も自分に対して色々思っていたこと。
そして、先生は後悔した。
父親にも、兄にも、言いたいことはたくさんあった。
でも、周りの状況とか、自分の意地とかとういうのが邪魔して
素直になれず、何も言えずに二人はもうなくなった。
632 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 12:06:04.71 ID:0DdvY+ZW0
離脱
638 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 14:35:10.22 ID:SfaL1+Po0
ただいま。
続き。
そうして先生は結局のところ自分という人間にとって
一番大切なものが何なのかを見定める力が足りないと
そう感じた。
まぁ、人間ならそういう部分少しくらいあっても仕方ないかもしれないが
先生の父親は頑固おやじで、先生も少しそれに似てしまったせいかもしれないが
素直になれなくて、それで苦しむことが多かった。
だから、先生は中庸の道を選んだ。
中庸はよく中途半端とかそういう意味で勘違いされるけど。
本来の意味はそういうものではない。
どんな時でもその時々に起きたことを判断する場合、どちらにも偏らず
自分の平常心で行動でする、という意味だ。
まぁ気になる人はググってみれば、もっと深い話とかあると思う。
前にも言ったが、先生はポリシーというかそういうのを持っていて
良いことをしたら、同じくらい悪いことをするとか
正直なことを行ったら、次はウソをつくとか
はたから見たらただのおかしい人なんだけど
これは一種の願かけで
そういう風にして、いつも自分の素直な気持ちを見つめることにしているらしい。
これが先生が自分の道を選んだ経緯だ。
話を聞き終わった俺は、先生にではなぜ、俺にはこの道が向いていないんですか?
と聞いた。
まぁ、話を聞く限りこういう考え方とかも悪くないかなぁと思う部分もあったからだ。
639 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 14:37:02.99 ID:SfaL1+Po0
すまん、文章力ないのに、なんか人の内面とか語ろうと思うと
結構ぐちゃぐちゃになっちまう。
先生はすごくしゃべるのがうまかったんだけどなぁ。
あの時に聞いた話を再現できている自信がない
642 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 14:49:07.75 ID:SfaL1+Po0
先生は俺の質問にこう答えた。
世の中には霊だの幽霊だのが見える人間と、そういうのが全く見えない人間がいる。
そしてさらに、そういうのを見えると主張する人間には
本当に霊感があるひとと、霊感がないのにあるといっているひとと、二種類存在する。
でも、この二種類の人間どっちにしても、どこか心がおかしい人間だ。
この世に本当にいるのかいないもかも分からないようなものが見える人間ってのは
どこか心に闇がある。
そういう闇を通して、人間は化け物を見つけだす。
そして、見えないくせに見えるとか言い出すような人間も
心は不健康だ。そんなウソをつくやつはつまり、心がどこか満たされていない人間である証拠だ
まぁ、見えない人間が全員が全員正常とはいわないが。
でも、先生的には霊感のない俺は、精神的な部分においてはきわめて健全な人間であるということだ
そうなれたのは、きっと俺が良い育てられ方をされたからだ。
もちろん先生にではなく。
もうすでにいなくなった。俺の家族のほうだ。
人格を形成する一番大事な時期に、俺は間違いなく幸せだった。
645 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 15:03:49.47 ID:SfaL1+Po0
今でもたまに思い出すんだ。
ちょうど昨日金曜日だったけどさ。俺が小さい頃の金曜日はよく家族全員で
金曜ロードショーとか一緒に見てた。
俺は親父の膝の上で、妹は母親の膝の上。
そんでインディ―ジョーンズとか見て、重要なアクションシーンとかになると
俺は少し背伸びをして、わざと父さんの目線を遮って見えなくするといういたずらをした。
そんで父さんはいつも、ちょ、おまwwwwみたいな感じで、なんとか見ようとして
頭をよこにずらしたりするんだけど、俺もそれに合わせて頭を振って隠したりして
最後は、父さんが顎を俺の頭のてっぺんに乗っけて、こら!つかまえたぞーみたいな感じなこと言って
となりでみてた母さんも、妹も、それで笑って。
少しエッチなシーンとかになると、急に父さんが手で俺の目をふさいだりして
いや、俺はもうこういうのわかるからとか、指の間から覗いたりもした。
そういう家族だった。だから先生がいう、俺が幸せだったというのは多分間違いなかった。
俺は良い家庭で育てられた。
先生は自分は自分に素直になれない人間であるが
俺はそういう人間ではないと言った
何か喧嘩した後でも、すぐに笑って人に謝ったり、許せたりして。
傷ついたりもするが、その分他人のこともおもったりもできて。
よくついついさぼっちゃうが、それでもなんとか自分を律することができて
自分の幸せのよりどころというか、そういうのがはっきりとわからないかもしれないが
ぼんやりとイメージできて、そしてそれを追い求めることを恐れない。
俺のそういうところが、間違いなくただの「普通の人間」であると
先生は評した
646 :名も無き被検体774号+:2013/12/14(土) 15:06:07.85 ID:75uMamai0
じいちゃんがイタチを無理にでも食ってたらまだマシだったんじゃない?
ぶった斬りスマソ
647 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 15:13:50.73 ID:SfaL1+Po0
でもだからこそ、そんな俺には、道についてのアドバイスはできないと
先生は続けた。
この業界の人間は大抵どこかおかしい境遇があって。
正直、殆どのやつはみんな頭がわいている。
そんなどこか心が欠けている奴なら、それなりに苦労はするだろうが
自分の心に住む「魔」はすぐに見つかるし、自分にあった道もかなり分かりやすい。
自分でわからなかったとしても、少し人生経験があれば、そんなもの簡単に指摘できる。
でも、俺が「普通」であるゆえに、逆にそれが難しい。
俺の心に何が足りないのか?何が俺を不満足にさせているのか
客観的にみても、主観的に見てもそれは非常にわかりずらいものなんだ。
648 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 15:23:17.79 ID:SfaL1+Po0
もっと簡単にまとめると、つまり
お前はこんな仕事には向いていない。ということになるのだがwww
とかその後先生はちゃかした。
そっかー、俺はまだなんとか「普通」の範疇にいれるのかー
とか、初めて聞いた先生の過去話や自分の道についてもやもやして
そのあとの飲みは普通のとりとめのない話をして、終わった
649 :名も無き被検体774号+:2013/12/14(土) 15:26:48.30 ID:HvmSQnsY0
なんか切ない…
650 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/14(土) 15:29:34.04 ID:SfaL1+Po0
また離脱
729 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/15(日) 19:59:30.08 ID:z3x+HMst0
ではまぁ、先生の話の本題のほうを
その日は先生に呼ばれて、先生のところまでいったんだけど
先生の最初の発言でびっくりした。
もう一人新しく弟子をとることにした
733 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/15(日) 20:35:23.42 ID:z3x+HMst0
俺の顔はΣ(゚д゚;)って感じになって。
え?急にどうしたんですか。と先生に聞いたら
実は弟子にとるつもりのやつは、自分の弟の子供で
ちょっと込み入った事情から、そいつを入門させることになったとかなんとか
いきなりすぎる!相談ぐらいしてくださいよと俺は思ったが
まぁ、先生がいつの間にか勝手に色々決めるのはよくあったことだし。
「ちょっと込み入った事情」ってのもなんか人の家庭の問題っぽいあんまり詮索しないことにした
そんで、先生はその弟の子供に会うために
何日か後に、久しぶりに里帰りをするといった。
俺はえ?先生が実家に!とかさらに(゚д゚;)だったが。
でも、そういえばこの時期って先生の父親が亡くなった時期だ。と思いだした。
いつかは忘れたんだけど、先生の父親は9月の終わりごろに亡くなったと
聞いたことを思い出した。
ちょうどその年は先生が大学入試の年で。
先生の気をちらさないために、危篤のこともそして、亡くなったということも
合格の発表までに教えられなかったらしい。
俺は少しびくびくしながら先生にこう聞いてみた。
先生の父親の墓参りとかしたらどうですか?と
741 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/15(日) 23:48:02.97 ID:z3x+HMst0
先生は俺のその言葉を聞くと、少し意外だったのか
目を見開いた。
そして、4日ほど滞在する予定だから、もし気が向いたらいくかもしれない
と答えた。
俺はそうですかー、と相槌をうちながら
内心でやったー、4日間もフリーじゃ!と、ガッツポーズをとり
自由をどう謳歌しようか考えた。
ちょうど、こん時期にだけど、先生に高卒認定試験を受けろと命令されて
夏に受けて、一度おちちまって、もっと勉強しろ的なことを言われて。
11月にある試験に向けて毎日、先生のところでそういう勉強させられた。
俺は勉強がすきってタイプでもないし
短い間でも、先生がブックオフで適当に買ってきた教材とおさらばできるのは
感劇ものだった。
そんな俺の考えを読みとってか。先生は俺にこういった。
ちなみに、お前の分の旅券も予約した。
742 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/15(日) 23:56:31.22 ID:z3x+HMst0
どうでもいいが、ちょうど先日、二回目の試験受かったという知らせが。
でも、これがあると中卒じゃなくなるんですかね
748 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/16(月) 00:14:13.76 ID:+6iFz4Vs0
ありがとー
難しいというか俺の場合は圧倒的に時間が足りなかったw
先生的には、8月で合格、10月にセンター受けて大学に行けとか言ってた。
俺は自分はもう22だし、いまさらーとかいったが
先生は大学に行けば4年間を無駄にしたことを後悔するが
行かなかったら、一生を無駄にしたと後悔するっていってた
さすがにセンターの申し込みはまにあわないか…
まぁ、できても碌な点数とれないと思うが
767 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/16(月) 18:42:48.64 ID:A+kBcIHP0
やぁ、ご飯炊いたら続き書く
大学はまぁ、まだ考える時間があるしね
772 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/16(月) 19:18:58.27 ID:A+kBcIHP0
それから何日か後、俺は先生と一緒に先生の故郷に向かった。。
特に場所は明言しないけど、海に面した県での小さな港町だった。
俺はいくならいくで、そこまで反発しなかった。
先生の生まれた土地のことは少し興味あったし、自分のおとうと弟子になるであろう人物も
気にならないというと大ウソになる。
しかし、新幹線に乗るとき、先生がまた高認の教科書を押しつけてきた時はさすがにげんなりした。
出発したのは早朝の8時くらいだったのだが。
その場所に到着したのは午後の6時あたりだった。
昼飯はおにぎり二つだけで、かなり腹が減った。
俺としては、先生が帰ることはもう家のほうには伝わっているし
関係が悪いにしろ、港町だし、お寿司とか食えるんじゃないかなぁとか
淡い期待を抱いていたが。
もちろん、それは裏切られた
774 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/16(月) 20:01:13.26 ID:A+kBcIHP0
目的地に着くなり、先生は俺をつれて人気のないところに向かった。
そして、持ってきた荷物をあさり始めて、すごく大きな釘を一本取り出して
アスファルトじゃない地面に打ち付けた。
先生は自分の髪を一本ぬくと、すこし頭を出した釘に結構複雑に撒きつけた。
俺はそれを見ると、少し驚いた。
これは「定山」という、うちの流派のなんというか決まり事で。
もしこういうのを見つけても、だれも抜かないでほしいwww
結構危ないときとかにやるもので
自分の魂というかそういうものを地面にうちつけるという意味を持つ。
だから、妖怪とかで魂持って行かれそうになっても
この釘が刺されってさえいれば、無事でいられるというものだ。
基本的に、釘をうったひとが一人。これを响搬といって。
この人が色々動きまわったりしても大丈夫なようになる。
その打ち付けられた釘を見守る人が一人。これを助搬という。
この人は釘が無事なのかずっと見守る必要がある。
釘で打ち付けれているとはいえ、魂がそこにあるんだから
いろんな悪いものが寄ってくる。
だから、そういうのから釘を守る役割だ
775 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/16(月) 20:14:26.91 ID:A+kBcIHP0
釘は市販のやつを溶かしたあとに
自分の薬指の血をいってきたらしたり、他にも色々やったりして
最後に、形にしたものだ
俺は先生にどうしたんですか、急に?ときいたら
すこし兄が亡くなった場所を見てくる。見張っておいてくれ的なことを言って
日本酒を一本俺に渡すと
すたすたとどこかに行ってしまった。
俺はえ、でも、と言いかけたが。やはりやめることにした。
先生はあまり俺に助搬をまかせたがらない。
理由は簡単で、俺のまわりにいるイタチたちになにかいたずらをされるのが怖いんだろう。
でも、これを俺に任せるということは多分。
俺のイタチなんかより、遥かに怖いものに会いに行くんだろうと
俺はそう感じた。
778 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/16(月) 20:58:57.59 ID:A+kBcIHP0
時期的に肌寒くなっていたころだったし、それに日も短くなっていて
もうほとんどあたりは真っ暗だった。
前にも書いたが、俺はあまり飲めないタイプではあったが
先生からもらった日本酒を一口だけ飲んで、後は釘のまわりに円を描くように
撒いておいた。
すきっぱらだったから、すぐに酒で体がポカポカしてきた
でもさすがに量はそんなに取らなかったから、頭がぼうっとするようなことはなかった。
「定山」が魂を打ち付けていられるのは精々2,3時間だ。
それ以上長いと、魂は自分の体に戻ってしまう。
俺は携帯を取り出して、タイマーを3時間に設定した。
その時間になっても先生が来なければ、釘を引っこ抜いて
先生を探しに行かなくてはならなかった。
正直すこしこわかったのもあってか、いつの間にか俺の頭の中で
夏祭りの曲のサビの部分が延々と無限ループしてた。
うちあげはなびー
うちあげはなびー
うちあげはなびー
多分8,9回目ぐらいになったときかな。
今までお酒でポカポカしていた体がすっと、謎の寒気を感じた
780 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/16(月) 21:28:33.39 ID:A+kBcIHP0
俺はドキッとしたが、すぐに釘の周りのお酒の濡れた後を見つめた。
ここからが本番であった。
お酒は水より乾くのが少しだけ早い。
もちろん、科学的にはアルコールが入っているとかそれだけなんだけど
しかし、昔の人はこれを妖怪がお酒を「飲んだ」とおもっていた。
妖怪というのは大抵お酒が好きで
かなりな有名どころだとヤマタとかもそうだしね。
夜にお酒とかをこぼすと、そこにそういうものが群がっているように感じるとか
霊感ある人から聞いたことはある。
実際どうかは知らないけどね。
だから、まったく霊感のない俺はこういう風にお酒を少し撒いて
その渇きぐあいで、やばさを判断したりする。
そしてこの状況だと、そういうものの注意力を釘からそらす効果も期待できた。
846 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/19(木) 01:24:15.32 ID:1LkemzSn0
眠いから1レスだけ
酒のほうを見ると案の定、殆ど乾ききろうとしていた。
俺は急いでお酒をまた同じあたりに撒き散らした。
でも、こんなのはただの時間稼ぎにしかならない。
お酒の量にも限りがあったし
このペースじゃすぐにつかい果たすのは目に見えていた
だから俺は持ち物のカバンをあさって、短いしめ縄を取り出した。
お酒を好む妖怪は大抵まだ話せる相手だ。
人間にとって害があるか、ないかはともかく、少なくとも交渉しようと思えば
なんとかなる奴が多い。
だから、俺は一種の囲いを作ろうと思った。
中二的に表現すると、結界だけど、そんなすごいもんじゃない。
ここでいう囲いは言葉にすると意味合い的には「なわばり」という表現のほうがいい
漢字にすると「縄張り」だ。
つまり酒のあるほうの土地をお前らにやるから、代わりにこの釘の打ってある場所は俺のもんだから
入ってくんなよ!的な暗黙のルールを結ぼうとした。
これにまつわる昔話も一つあって。
昔々あるところに猿好きの爺さんがいた。
その爺さんは猿が好きすぎて、家族さえ捨ててしまい、何十匹の猿を飼った。
しかし、猿を飼いすぎてしまったせいか、餌代がたりなくなった。
だから、ある日の朝、爺さんは猿にこう言った。
「前までの餌は、朝に栗4つ、夜に栗4つだったが、今日からは朝に栗3つ
夜に4つで我慢してもらえないか?」
それを聞いた猿どもは激怒して、猛反対した。だって、朝の栗が一個減ったんだから!
怒り狂った猿たちを見たじいさんは、しょうがないなぁというような顔をして
「わかった、わかった。もう怒らないでくれ!こうしよう。さっきは朝に栗3つ、夜に栗4つ
といったが、仕方ない。特別に朝に栗4つ、夜に栗3つにしてやろう。これで満足か?」
といった。
それを聞いた猿たちは、朝に4つくれるのか。ならいいやと納得し
その案に賛成した。
夜のこと?そんなの夜にまた考えればいいじゃん。もし3つだけだったら
また泣き叫べばいいし。と猿たちは思った。
でも、実際に夜になって、猿たちがどんなに泣き叫んでも、爺さんは約束だからと言って
栗を3つしか渡さなかった。まぁ、あげたくても金がないからね。
猿たちはそれで納得するしかなかった。
人間もこの猿たちのことをバカにすることはできないかもしれないが
でも、妖怪はこの猿たちよりもっとゲンキンな奴らで
しかも、一度した約束は絶対に守る。
864 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/19(木) 21:23:16.19 ID:trcZRYXJ0
俺はしめ縄に「はぁ」と自分の息を吹きかけた。
あと3分の1くらい日本酒の入った瓶をもっとすこしだけ遠くの場所で
瓶でこんこんこんと地面を3回軽く叩いた。
そして、瓶をそのまま地面に置いて、いわゆる神社に行く時の二拝二拍一拝のようなことをして
最後に酒瓶を軽く蹴って、酒をこぼさせた。
これで、妖怪の気はこっちのほうに向くはずだ。
あとは急いで、釘のところに行って、しめ縄で釘と自分を囲えば良かった
俺は少しだけ安心して、釘のうちつけてある場所にもどろうとニ、三歩あるいたが
その時だった。
ピシャリと、何か濡れているものが、俺の肩をつかんだ。
その瞬間、足がまるで鉛のように重くなって、全身から嫌な冷や汗がどばっとふきだした。
耳のあたりから、なにか人の息遣いを感じた。
でも、もちろん生きた人間のような温かいものじゃなくて
すごく冷たくて、ねっとりとした嫌なものだった。
まるで掴まれた場所から吸い取られているかのように、俺の体の温かみが消えていった。
やばい。
俺もこの仕事をもう何年やってきたが、さすがに関わっちゃいけないものと
なんとかなるやつの区別とか付く。
その時俺の後ろにいた何かは、間違いなくやばいやつだ。
俺は自分の中の激しい振り返りたい欲求をなんとか我慢して、それでも釘のほうに行こうと
必死に歩いたが、奇妙なことに、どれだけ歩いても釘に近づくことはなかった。
その頃になると、俺の心の中でも焦りが生まれはじめた。
そして焦りはどんどん恐怖へと変わっていって。恐怖は俺の理性を食いつぶしながら
どんどんと成長した。
871 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/19(木) 21:44:59.57 ID:trcZRYXJ0
俺はパニックになる寸前の状態だったが、最後の気合いをなんとかふり絞り
寒気でカチカチな足を曲げて、地面に左膝をつけた。
そして、頭をあげ、はるか空のほうを見上げた。
流石は田舎。あたりは真っ暗だったし、いい感じに星空が見えた。
北極星を見つけると、俺は手で銃の形を作り、そこに向かって「バン」と口で言った。
なにか由来のある術とか、由緒ただしい技とかじゃない。
強いて言うなら、もう名前さえ忘れたんだけど。昔みたアニメの主人公のかっこいいライバルが
死ぬ前にやった行動で
自分で決めた、自分を落ち着かせるための一種の儀式だ。
退治の時に一番怖いのは相手の妖怪じゃない。
自分自身の心の中に眠る恐怖だ。
人間でも同じだ。
交渉するときに、弱気になると、相手は強気になるし
こっちが強気になれば、相手は弱気になる。
怖がれば怖がるほど、対峙しているものは勝てないものになっていく
でも、逆に、落ち着いて、自分の友人といるような心持になれば、相手側も心を開いてくれる
俺は怖くなった時、この行動をして。あのとき見たアニメを思い出す。
そんで星空を見上げると、なんというか自分とか妖怪とか全部がちっぽけな感じがして
872 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/19(木) 21:58:59.45 ID:trcZRYXJ0
心の何もかもが穏やかになっていく。
はたから見たらかなり痛い行動だったかもだが、そんなことは気にしていられなかった。
そこから俺は、2,3回深呼吸をしたが、もっと気分がよくなった。
海潮の香りが微かにしていた。
これが終わったら、絶対先生にうまい寿司を奢らせてやる。
そんなことも考えた。
すると不思議なことが起きた。さっきまでがっしりと俺の肩を掴んでいた「何か」の存在が
急に消え、体が自由に動くようになった。
俺はすぐに立ち上がりながら、手のひらに唾をかけて、ぽんぽんと額を4回たたいた。
そして、今度こそ、釘のほうに向かい。しめ縄で俺と釘を囲った。
周りに撒いた酒は殆ど乾ききろうとしていた。
急いで俺は「そっちの酒と、この円以外の場所はお前らのもん、でもこの円の内側は俺のもん」
といった感じに詩を読み上げた。
873 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/19(木) 22:05:00.41 ID:trcZRYXJ0
あ、ドリアができた。ご飯食ってくるわ
882 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/19(木) 23:08:39.75 ID:trcZRYXJ0
ただいま。続き
それからどれくらい時間がたったか。
俺は囲いの中でひたすら、じっとしていた。
普通ならこういう風に時間を潰す時、携帯いじったりするだろうけど
今の状態だとそれができなかった。
携帯の液晶が鏡になって、なんか変なものが見えるのを避けるためだ。
だから、かなり手持ち豚になってたんだけど
さっきよりはだいぶ落ち着いていたのか。
また心ん中で夏祭りのメロディーがループし始めた。
そんな中、急に「ぴぴぴぴ」と携帯のタイマーがなったときは結構びっくりした。
俺は「あ、まじかよ。先生3時間たったのに帰ってこないのかよ」と思った。
これはつまり先生の身に何かが起きたかもしれないということだ。
俺はまた焦って、地面に突き刺さった釘を抜こうとした。
今すぐ先生を探しに行かないと。
「定山」をやり終わった後の釘とかは使いようによっちゃ、「定山」をやった人間を
呪う道具にもなるから、回収して、ちゃんとした処理をしないといけない決まりがあった。
でも、手が釘に触れたところで、俺はぴたりと動きを止めた。
うちあげーはーなびー
これで78回目だ。
仕事をしているとき、時間を気にすることは多い
術や儀式によっては、やり始める時間とかもちゃんときまってたりする。
でも、時計や携帯の時間というのはあくまで目安で、完全に信用できない。
なぜなら、妖怪に「目隠し」されて、変な時間が見えてしまうのだ。
大抵は蝋燭とか線香とかの短さとかで時間を大まかに判断する。
次点として、こういう風に音で判断できるものを使う。
そして、それもできない場合は心の中で図る。
俺の場合、それが「うちあげーはーなーびー」のサビの部分だ。
心の中で図る場合、焦って早く回数を数えてしまうこともあるが
遅くなるという場合はめったにない。
さすがにタイマの音が鳴るのは早すぎないか?と数えた回数を思い出して
心の中で引っ掛かった。
そういえば、今の携帯の音、聞こえたのは俺のポケットからじゃない。
俺の後ろのほうからだ。
886 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/19(木) 23:26:58.44 ID:trcZRYXJ0
俺の動きはそこでピタリと止まった。
ポケットから携帯を出して、なるべく液晶をのぞきこまないように
時間だけを見た。まだ2時間にもなっていなかった。
確かにそれまではなんか大人しいなぁとか疑問に思ったりしたけど
俺の携帯の音をまねするとかこういうパターンはやっぱり奴らだ。
と思った
特に証拠はなかったが、長い付き合いだし
これはイタチたちのいたずらであるとなんとなく確信した。
わりと危ないところだった。
もし本当に釘を抜いちまって、先生になんかあったら
結構心に来てたはずだ。
まぁ、イタチたちの狙いはそれなんだろうけど。
俺がそのまま、釘に触れていた手を離すと
どこからともなく「ち」というような舌打ちする声が聞こえた。
890 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/20(金) 00:32:51.04 ID:NZLrLqOu0
先生が戻ってきたのは、それから約30分後だった。
かなり疲れた顔をしていて。
俺はどうでした?と聞いたが。何もなかったよ。と首を振って
それ以上何もいわずに釘を回収すると。
先生は本来の目的地にもくもくと、向かい始めた。
まぁ、なんというか複雑そうなので俺も何も聞かなかった。
しばらくすると先生の実家のほうに着いたんだけど。
それなりに大きなお寺で、あまり表現しすぎるとすぐ流派とか分かっちゃうから
具体的な部分は省く。
出迎えてくれたのは先生の弟とその嫁さんと先生の母で。
どうやら、弟のほうが寺を継いでいるみたいだった。
母は先生に大きくなったねぇとか言ってて涙ぐんでて
俺は晩御飯を期待したのだが、なんというかそういう雰囲気じゃなかったというか
さすがに初対面の人たちにご飯は?とか聞く勇気もなかった。
俺は弟さんの嫁さんにとまる客室に案内してもらうと、そのまま放置プレイをくらった。
先生はさすがにつもる話しでもあるのか、弟さんと母親さんと家のどっかに消えていった。
携帯で2ちゃんのスレみながら、空腹を紛らわすこと2,3時間。
先生が部屋に来て、ちょっと来いと言われた。
先生は弟さんと一緒にいて、弟さんはメガネをかけていて一人称が僕で
かなり丁寧な印象な人だったんだけど。どこか不安げだった。
その二人について、家の中を進んでゆき、とある部屋でとまった。
弟さんが部屋をノックして、入っていいか?と聞くと
部屋の中から、どうぞ。と女性の声がした。
中に入ると、そこは13,4くらいだろうか?中学生っぽい感じの女の子がいた
部屋は年相応というか、これが女子なんだなーって感じの部屋で。
目立つ所に書道のなんかの賞状が貼ってあった。
891 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/20(金) 00:36:44.46 ID:NZLrLqOu0
ねむくたくてねむくたくて
めがしゃきーー
908 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/20(金) 13:00:46.46 ID:Vz+MZSbs0
今日中に埋めておくかな。
続き
女の子はベットから体を半分起こしている感じで、見知らぬ人がいることにびっくりしていて
少しいぶかしげにこちらの様子をうかがっていた。
弟さんは、こちらが前に言っていた人だよ。という風な感じに先生を紹介すると
先生とその子はお互い軽く会釈をした。
そんで、その次にちょうど俺も紹介されそうになった時、俺はその女の子と目を合わせた。
すると、なぜか女の子は急に手で口を押さた。
顔色も見る見るうちにものすごい勢いで真っ青になって。
そのまま、吐いた。
弟さんはそれを見ると急いで嫁さんを呼んた。
嫁さんは先生の母親さんと一緒にやってきて、女の子の周りの惨状を急いで
片づけ始めたり、大丈夫?とか女の子に聞いたりした。
俺は状況がわからず( ̄△ ̄;)って感じだったんだけど。
先生は弟さんと2,3小声でしゃべると
ついてこいと俺に言って、すこし離れた部屋に移動した。
その部屋は和室で、先生のが泊る部屋みたいだった。
そんで、三人で座布団に腰をおろすと
俺はあの子は?と先生に聞いた。
先生はお前の妹弟子になる人だ。と答えた
俺はびっくりした。
さすがに女だとは思わなかった。
なんせ、うちの流派は女を入れない決まりはないが
やっぱり女性を忌避する部分がある。
なぜなら、女性は男より変なものに入り込まれやすい。
それはイタコとかそういう意味合いでは役に立つが、うちのやり方だと
正直ただの足手まといにしかならない。
910 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/20(金) 13:28:37.96 ID:Vz+MZSbs0
どうしてまた女性を?と俺は聞いたが
あの子は少し危なくてね。と先生は答えた。そして、弟さんに
それにしても、またひどくなったのか?というような言葉を投げかけた。
弟さんはすこし言いにくそうになったが
どんどんひどくなる一方だ、と答えた。
先生はそれを聞くと、俺のほうを見て、なら仕方ないなぁとつぶやいた。
俺は良く状況がつかめなかったんだけど、さっきの女の子の様子とか
このやり取りとかを見て。少しピンと来て
もしかして、あの子って霊感あるんですか?と先生に聞いた。
先生は、ああ、そうだ。それも随分とはっきり見えるようだ、と頷いた。
俺も仕事柄上たまに霊感があるというひと(自称だから本当かどうか知らんが…)と
たまに関わり合うことがあるんだけど
みんな結構俺のことを嫌な目で見る。なんか後ろのほうでたくさんの真黒な何かがニタニタとしているらしい。
まぁ、もうそれが何かは分かり切ったことなんだけど。
でも、目を合わせただけで吐かれたのは初めてだった。
弟さんは、あの子は小さいころから、少しは見えていたらしいけど
本当にひどくなったのは二か月前のある出来事からだ、とその時のことを話し始めた
913 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/20(金) 13:44:32.87 ID:Vz+MZSbs0
女の子は小さい頃はわりと変なものが見えるとか言ったりしていたが
その頃にはもうそんなこともなくて、普通な子って感じだった。
その日は土日だったんだけど、女の子は学校に部活しにいってて。
帰りがすこし遅くなると家に伝えていた。
でも、いくらたっても女の子は戻ってこなくて
夜の10時くらいになると、さすがに弟さん家族は心配になり
女の子の友達に電話したり、学校のほうに聞いてみたりしたが
なんと、女の子は部活にも行っていないという答えを得た。
とりあえず、弟さんたちは12時まで自分たちで女の子をさがして
それでも見つからなかった場合、警察に通報しよう。と話し合い。
近所の人とかに女の子の行方を聞いたりして回った。
近所の人たちも女の子が消えたことを聞くと、捜すのに協力してくれて
町を結構くまなく探した。
でも、女の子はどこにも見つからなかった。
捜している人たちがまじでやばいんじゃないか?とか焦り始めたころ
町の近くの草むらに、女の子の名札のついた制服が見つかった。
捜していた人たちが急いでそのあたりをさらに探してみると
少し離れたところに女の子のカバンがあって
さらに離れたところにスカートとか、靴とか
どんどんと町の離れの海の崖のほうに続いていた。
914 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/20(金) 14:06:16.42 ID:Vz+MZSbs0
大人たちはそっちのほうに向かった。
これはもしかしたら事件かもしれないと、誰かが警察にも連絡した。
場所に着くと、あたりはもちろん真っ暗なので、懐中電灯の光をたよりに
何か手掛かりがないか探した。
すると、崖の近くの大きな岩の上に人影があった。
近づいて、光を当てると。そこには女の子の姿があった。
ほとんど裸で、両手に何か持っていて、何か楽しそうにぶつぶつ言っていた。
それを見た弟さんは急いで女の子のほうにいったんだけど
女の子が持っているものを見ると唖然とした。
女の子は小さな木の枝を箸のように片手で持っていて
そして、もう片方の手には石を持っていて、その石の上には大量のミミズがいた。
女の子はさもおいしそうに、ミミズを木の枝で挟むと、口に放り込み
ひとかみ、ふたかみ、ごくり。
彼女は生きたミミズを啜っていた。
異様な光景に弟さんは凍りついたんだけど
他の大人たちが来るのを手で静止した。なんせ女の子は裸だ。
その間もずっと、女の子は目の前に誰かがいるかのように
その何かに、ひたすら話しかけていた。
何を話しているのかは良く聞こえなかったらしい。
弟さんも少しも知識があったみたいで、ごくりと唾を飲み込むと
懐中電灯を一度消して、光を出すガラスの部分にはぁーと息を吹きかけて
女の子が話しかけている場所に向かって、一瞬だけ電灯をつけて、またすぐに消した。
その一瞬に、弟さんは見た。
何もなかったはずの場所には、なにか動物のようなものがいた。
916 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/20(金) 14:20:42.55 ID:Vz+MZSbs0
弟さんはかなり怖かったんだけど
それでも、自分の娘を助けたい一心で、覚悟をきめた。
数珠を握り締めると、大声でお経を叫びながら女の子のほうに走って行って
手に持ったミミズを払い落した。
すると、女の子はたちまち無表情になって、弟さんをじっと見つめた。
弟さんはそんな女の子に服をはおらせる、なんとか彼女を大人たちのいるほうに
引っ張って行った。
ちょうどそのころには警察も来ていて
全員急いで彼女を病院のほうに運んだ。
いつの間にか女の子は気を失っていて。意識を取り戻したのはそれから2日後らしく
失踪している間のことは全く覚えがないらしい。
そして、弟さんは彼女を無暗に刺激したくなかったし、どんなふうに見つかったのかは
女の子に黙っていて、彼女は自分に何があったのかまだ知らない。とのこと
俺はこの話を聞き終わると、ふと、これってもしかして「天命漏らし」じゃないのか!?
と思った。
もしそうだとしたら、女の子は確かにかなりヤバい状況だ
918 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/20(金) 14:42:16.46 ID:Vz+MZSbs0
「天命漏らし」というのは、占いの業界で気をつけないといけないことなんだけど
未来をはっきりと、誰かに伝えることで起こる。
まぁ、占いとかで本当に占ったのか嘘八百なのはともかく
みんな曖昧にしか言わない理由がこれだ。
はっきりと誰かに未来を伝えてしまうと、その未来までの時間分の寿命が
聞いた相手も、教えるほうもちじむというものだ。
だって、未来に起こるはずのことを今知るというのはおかしいから、その分年をとる
と理解すればいいのかな?
というものだ。
これは漢字からもわかることなんだけど
天命というのはまぁ、運命とかそういう意味なんだけど。
「寿」という漢字の意味も、確か本来は「天命」からきたはずで
「天命漏らし」がそのまま「寿漏らし」につながるわけだね。
だから、普段の生活でも、もし予知夢とかみたら、あんまり他人に伝えないほうがいいね
寿命ちじむんだ。
あとすごい予言者とかが預言書書いたりするけど
それが全部意味不明な言葉だったりするのもこれを恐れてだ。
そして、妖怪は占いとかを通して未来をしることはできないんだけど
人をだまして、人を通して無理やり聞き出すことができる。
こういう風に妖怪が人間に何かをおもてなしして
さらに話しこむ場合は大抵、人間をコントロールして占いとかさせて
天命を聞きだしている。
妖怪はあんまり寿命とか気にしないけど、人間側からしたらたまったもんじゃない。
そのまま漏らし過ぎて死んでしまう例もある。
俺は先生に自分の思ったことを伝えると、先生は自分も同意だ
と答えた。
920 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/20(金) 14:44:55.29 ID:Vz+MZSbs0
ここらへんで離脱。もしスレ埋まりそうになったら
誰かかわりに建ててくれ
立たなかったら、あきらめる
136 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/23(月) 15:46:27.04 ID:z8AUxIav0
>>132
ごめんよー少しお酒入っているから。今日はあまり話の続きする気分じゃないかな。
ただ、もてるか、もてないか、理解されるかされないかで思い出した小ネタがひとつ。
これも論語の話なんだけど。
ある日、孔子の一人の弟子が孔子にこう聞いた
「例えば、ある時、私がある村に行ったとしましょう。その村の村人全員から好かれるようになりました
この人間関係の状態はどうですか?」
すると、孔子はこう答えた。
「それは、まだまだだな」
弟子は少し戸惑ったが、ためらいがちにこう聞いた。
「では、その村の村人全員から嫌われるのは、人間関係の状態としてどうですか?」
それを聞いた孔子は、再び頭を横に振った。
「それも、まだまだだな」
弟子はそんな答えを聞くと
「え?どっちもまだまだとしたなら。
どういう状態が人間関係として一番いいのですか?」と尋ねた。
孔子はこう言った。
「自分の好きな人間に好かれ、自分の嫌いな人間に嫌われている。
これ以上の良い人間関係はない」
137 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/23(月) 16:10:53.17 ID:z8AUxIav0
当たり前の話だよね。
自分の嫌いな奴に媚びて、理解してもらい、好かれたとしても何も意味がないじゃん?
でも、よくみんなは周りの人全員に好かれたいと思っていて、それで悩んだり
ストレスを感じたりする。
もちろん、それは悪いことではないと俺は思うよ。
昔学校で「徳のある人間は孤立する事は無い。必ず誰かが仲間になる」
という風に習ったことがある。
ここでの徳は、まぁ、なんていうか正義とか、ただしいとか。
そういう意味合いだよね。
でも、これは間違ってる。
だって、正しいことをずっとしていても、必ず友達ができるなんて、現実だとそうじゃないのは
小学生にだってわかる。
もともと、徳という漢字は形から見えるんだけど
「行う、自分の心を」という意味だ。
これを「道」とあわせたのが「道徳」
つまり、自分の心の中で一定の基準を定めて、その基準に沿って行動すること
って意味合いになる。
自分の行動に一定の基準をもうけて
好きなものに好き
嫌いなものに嫌い
それをはっきりとさせて生きれば、きっと自分と価値観があう人間と
出会うと、すぐに親しくなれる。
138 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/23(月) 16:19:42.32 ID:z8AUxIav0
俺の先生は正直それが下手だった。
他人に対して、どこまでもバランスをとって行動をする人だったからね。
まぁ、先生は他人に好かれるかどうかより、自分がどう思っているのかを
知りたかったという前提があるからそうしたんだろうね。
よくみんなのレスで先生が俺を売ったのはひどいとかいうけどさ。
うちの業界ではめったに友達というものは作らない。
それはまぁ、弱みを握られる可能性もあるというか。例えばワンのおっさんの
場合、先生にコドクを盛ろうとすれば、いつでもできた。
でも、それを彼はやらないし、先生もやられないだろうなぁという信頼関係があった。
何年もあってないはずなのに、あった瞬間から二人は話題が尽きなかった。
先生とわんのおっさんは本当にいわゆる親友だったんだと思う。
そんな自分の親友に「一生のお願いだ」なんて頼まれたら。みんなならどうするかな。
一方は親友で、もう一方は弟子。
先生のとった選択は「どっちも手伝わない」というものだ。
少なくとも俺はそう理解している。
だって、本当に「売られた」なら、多分先生が殺しにかかってきても
おかしくないはずだ。
良い悪いかはわからんが、先生はそうした。
だから、俺はその件に関しては先生のやったことは理解できる
まぁ。許せるかどうかとなると、俺の主観的には許せんがなww
やばい、何言ってるんだろ俺。なんか最初何がいいたいのかわかんなくなったw
139 :1 ◆cvtbcmEgcY :2013/12/23(月) 16:25:33.78 ID:z8AUxIav0
結局のところ、問題は正しいか、正しくないかとかじゃなくて。
自分の心の指標と照らし合わせてその行動が好きか、気に食わないか
そこにあるんだよねって話で
ねるねるねーるね
おやすみ。
552 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/01/10(金) 21:56:27.70 ID:dzEbhBxC0
どこまで書いたか少し忘れたけど
多分天命漏らしの続きあたりだっけ?
最終的に天命を漏らしつくしてしまった人間はどうなっちまうかというと
「無くなる」
人間でいう意味合いの寿命は、人間が生きていて脳みそが動いている間のことを言うけど
天命の意味合いでは、寿命というのは、その生まれる前から、死んだあと
死体も完全きれいさっぱり無くなっちまうまでの時間のことを指す。
つまり、完全に寿命をなくしちまったものは「無くなる」
世間一般でいう物理的な失踪以外で、神隠しとかなると
この理由がとても多いんだよ。
まぁ、だから一度神隠しにあうと、よく次なりやすいとかいわれるけど
そりゃあ、寿命大部分なくしてるんだからね
いつ天命がつきて消えちまってもおかしくないんだよ。
だから、天命漏らしで生存した場合
別に歳を異常に取って帰ってきたりしたない。
取られた量にもよるけど、普通に年取って死んでから、死体が消えるのが普通より早いとか
そういうこともあったりする。
590 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/01/13(月) 19:55:47.88 ID:h6Trf6Cp0
続き
そんでもって、天命漏らしした人間自体は漏らした天命を覚えていない。
これは妖怪が忘れさせるのか、それとも知らないはずのことを知ったとしても
知ったままでいるのはおかしいから、天罰みたいな感じで強制的に忘れ去られるのか
分からないんだけど。
言ったかわからないけど、まず人間がなぜ天命を知ることができるのかというと。
どういった宗教や地域の神話でも、人間は神さまが作った残されている。
その神さまって言うのは、もちろん妖怪が祭られてできたような茶ちゃっちいやつじゃなくて
天地を創造するクラスの神さまだ。
日本神話的だと人間は神さまの子孫と呼ばれてるしね。
他の国だと、神さまの息からできたり、神さまの乳首からできたり色々だけど。
でも、人間というのは神さまの一部だったんだよ。
つまり、量は少ないけど。質的には人間と神さまはほぼ同じらしい。
これも人間が動物とかと比べたら、かなり修業しやすい理由の一つだね。
よくある昔話で、たかが数十年修業したお坊さんが
何千年も頑張った妖怪を封印できたりする理由がここにあるのかもな
まぁ、話がそれたんだけど、そのため人間は天命漏らしができる
しかも、した後はしばらくはそういう神であった部分が刺激されて
目に見えないようなものたちに対して敏感になってしまう。
先生の姪さんは、まさにこの状態だね
592 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/01/13(月) 20:28:50.83 ID:h6Trf6Cp0
まぁ、天命漏らしについては、あくまで昔俺の教わった話で
先生と弟さんがいたその場ではしなかった。
先生は霊感のほうは大したことにならないと弟さんに言った。
今は色々見えすぎていてひどいらしいけど
そのうち落ち着く。もちろん、少しは後遺症として残ってしまうらしいけど
それを聞いた弟さんは少し安心したみたいだけど。
ただ、問題は、寿命がかなり縮んでいる可能性がある
と、先生は続けた。
弟さんは驚いて、なんとかできないのか?と先生に聞いた。
先生はしばらく悩むと。難しそうな顔をして、こう言った。
方法は3つある。
出たよ。
俺は複雑な気持ちになった。
597 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/01/13(月) 21:13:24.05 ID:h6Trf6Cp0
妖怪関係で、天命漏らしでちじんだ寿命を回復させる方法は
まぁ、色々あるんだけど
その大体は妖怪を呼びだして、聞き出した予知を忘れてもらう
という手法だ。
人間の知識欲の話があったけど、人間は忘れたいと思えば思うほど
忘れたいと思う知識は頭にこびりついていって、自分から忘れられない
でも、妖怪はそれと違う
忘れたいと思ったことをすぐに忘れられるらしい。
そんで、おぼえていたいと思ったことはずっとおぼえてる。
だから、妖怪の恨みは妖怪自身が納得しなければずっとづづくし
納得すれば、すぐに忘れちまって、それで終わる。
昔のことでも重要なこと以外は全部忘れちまうらしい。
その忘れてくれるようお願いするのが第一歩。
その次なんだけど、妖怪が忘れたとしても、失った寿命が戻ってくるわけじゃない。
何かしらの方法でそれもなんとか元通りにしないといけない。
そんで最後なんだけど
寿命を奪われないようにする。
これも結構大変で。一度とれたシールを貼り付けても
取れやすくなるのと同じように、寿命も勝手に多めに流れてしまうらしい。
これをなんとかしないといけなかった。
947 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/03(月) 21:08:09.84 ID:IJ5ur9TU0
ただいま。
先生のいう三つの方法の一つ目。
それは「宏願」を発するというものだ。
天命漏らしの結果、寿命がなくなるんだけど、誰が寿命をとっていくかというと
閻魔大王とかそう言うのじゃなくて
天道というか、この世界そのものが取っていくんだよね
じゃあ、その寿命を天道に返してもらえばいい。
まぁ、もちろん、返して言えば、返してくれたら苦労しない。
そこで取るのが「宏願」だ。
本来の「宏願」というのは、いわば天に対する借金をするようなものだ。
言葉で説明するとなかなか分かりずらいと思うから
今回も有名な一例で説明すると
みんなは地蔵菩薩ってしってる?
950 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/03(月) 21:19:16.33 ID:IJ5ur9TU0
地蔵菩薩というのはまぁ、本当かどうかわからないけど
もともとは普通のお坊さんだった。
もちろんそれなりに徳は積んでいたけど、でも菩薩に至れるほどのものじゃないし
力もそこまでじゃなかった。
でも、心やさしいそのお坊さんは「宏願」を発した。
曰く「地獄を空にしなければ、地獄から出でることなし」と
まぁ、つまり地獄にはたくさんの悪い人がいて、心残りがあって成仏できない霊とか
もたくさんいる。
しかも、毎日現世ではそういう人がたくさん死んでいるから、その数は絶えない。
お坊さんは地獄にいるすべての人間を救ったり、改心させるまで
地獄から決して出ないと誓った。
これにより、お坊さんはそこまで道行を持っていなかったにもかかわらず
天道より、「菩薩」の位と力を前借して、地蔵菩薩になった。
もちろん、そのかわり、地獄を空にしなければ、永遠に地獄にいることになる。
というか、多分永遠にいるw
とてつもない願いをして、それを果たすための力とかそういうのを
世界から前借する。
このやり方を「宏願」というんだ
951 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/03(月) 21:27:23.08 ID:IJ5ur9TU0
もろちん、誓えばすぐ力が手に入るとかそんなことではないww
じゃないと、多分みんなやっている。
それなりに儀式とか準備して、修業も積んで
そして何より、その誓い事が天の意志というかなんというか
そう言うものの流れに沿っていて
しかも、それをやり遂げるという本物の決心が必要だ。
地蔵菩薩はもともと力がそれなりにあったし、何より願い事がすごく立派で
しかも、それを本当にやり遂げるというかたい心があった。
だから成功したんだね
「宏願」自体はかなり前話した気がするけど、神道における神さまのなり方に少し近い部分はある。
ただ、もっと俗世的な例とかもあって。
たしか三国志で諸葛孔明もなんかの儀式をして、寿命を延ばそうとして
失敗したとか何とかあったけど、あれも一種の「宏願」だ。
漢という国を復興させるから、寿命もっとクレーてきなw
957 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/03(月) 21:41:44.93 ID:IJ5ur9TU0
まぁ、そこまででかい願いじゃなくとも
もっち色々考えられる。
例えば、親孝行したいとか。何か重要なものを発明したいとか
地蔵菩薩ほどじゃないにしても、そういうのでも「宏願」を発することはできる。
そして、それ以降は、そのことを人生のすべてとして生きていく。
もしかしたら、世の中のすごいプロとかの人たちの中にも、無意識のうちに
この「宏願」というのを発している人がいるかもね。
そんで先生の姪の話に戻そう。
姪は天によって、寿命を取られてしまった。
ここで、「宏願」という手法を取る理由は
「何々するから、寿命かしてー」の場合、「宏願」はかなり難しいが
「何々するから、寿命返してー」だと、まだぎりいける感があるよな?
どうやら先生の中では姪を弟子にするのはすでに確定事項のようで
うちの流派「搬山」というのは前にも言った通り
なによりも、堅い意志が重要になる。
そのためのまぁ、身構えというかそういうものについての方法とかも少しはある。
それを踏まえて、姪にしばらく道行を積んでもらい。
それになりになったときに、何かしら「宏願」を発し、寿命を取り戻すという
割と長期的な方法だ。
960 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/03(月) 21:57:44.47 ID:IJ5ur9TU0
まぁ、ただ、この方法の場合にもデメリットはある。
まず一つに、長期的なものというと、つまりそれは少なくとも10年はかかる
ということだ。もちろん「器」の個人差はあるけどね。
でも、姪の天命はいつ尽きるかわからない。
そんな悠長に構えていたら、すぐにでも神隠しにあっちまうかもしれないw
しかも、その過程で姪が自分の「道」と人生をかけるほどの願いを見つけられるかどうか
も実際のところわからない。
人生で結局なにしたいのかわからないまま終わる人間のほうが世の中大半だ。
搬山流で、見つけ方を学んだとしても、見つけられるかどうかは結局個人次第。
適当な目標で「宏願」に臨んでも、失敗するだけだしね。
チョイ飯食ってくるわ。だれか次スレはよ
15 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/04(火) 19:28:10.35 ID:td7atXEP0
ご飯炊いたら、ねむっちまったの巻
続き
二つ目の方法は一つ目の方法のように時間のかかるものじゃなく
短期決戦をねらうものだ。
その代わり、少し危険度もあがる。
これは姪さんに天命を漏らさせた妖怪を呼びだして
そいつと交渉して、漏らした内容を忘れてもらうというものだ。
前にも書いたが
人間というのは知識欲のせいで、何かを忘れようとしても
逆に印象が深まっちゃう
そんでずっとおぼえようと思ったことは時にふらっと忘れちまう。
でも、妖怪の場合はそんなことなくて
おぼえたいと思ったことは永遠におぼえているし
思い出したくないと思ったことはすぐに記憶から消すこともできる。
もしその妖怪が、漏らされた内容に何かの執着がなければ
それを忘れてもらう。
その上で少し儀式をして
天命を漏らさなかったことにして、寿命を戻す。
ただ、この方法にも不確定要素がいくつかある。
まず、本当に妖怪が忘れてくれるか。
ここら辺は他力本願になる。
また、天命を漏らした場合、聞いていたのは妖怪だけじゃない可能性もある。
妖怪が何かしらの方法で自分だけ聞こえるような細工をしなければ
その時、周りにいた風、土、草、木とかそうものも広くカウントされる。
そうなった場合、もう手の着けようがなくなる。
19 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/04(火) 19:37:38.36 ID:td7atXEP0
天命を漏らさせたりすることができる妖怪とかはわりと力があったりするやつだろうし
そう言うのとこれ以上関わり合うのも危険だしね。
48 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/05(水) 18:10:20.43 ID:pE+dXzW50
そして三つ目の方法。
この方法はもっと確実性がある。
でも前の二つと比べてぐーんと危険度も跳ね上がる。
みんなはピンと来るかどうかわからないけど「件」って妖怪がいるよな?
まぁ、知らん人はググってみておくれ。あれも、重大な予言を残して天命が尽きて
死ぬんってのは有名だけど
名前の由来は多分人+牛で漢字で件になったんだろうね。
ただ、こいつには元々の名前があって。
仏教由来だった気がするんだけど「如是」という名前らしい。
「如是」は世の中にものすごい悪いことが起きようとした時に生まれてそれを予言する。
予言する。そんでその予言はほぼ回避できないらしい。
でもあまり知られていないけど、実はこの「如是」って妖怪の予言は
半分でしかないらしい。
残り半分はどうなるかというと
「我聞」という妖怪が生まれて、それを残すはずらしい。
「如是」という妖怪は牛の体で、人間の頭を持っているらしいけど、「我聞」は
その逆で、牛の頭と人間の体を持つ。
「我聞」は「如是」が死んだあと、すぐにその10里以内に必ず生まれてくる。
そして、そこで「我聞」も予言のもう半分を残して死ぬ。
これでこの予言は完全に避けられないものになるんだけど。
もし、「我聞」が生まれた直後にこの妖怪を殺すことができれば
予言は回避することができる。
51 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/05(水) 18:26:26.62 ID:pE+dXzW50
それを踏まえてだけど
実は「天命漏らし」をした人間も、死んだ後に
「我聞」に近い妖怪が生まれるらしい。
第三の方法とは俺の時に言われた三つ目の方法と似たもので。
「我聞」に近いその妖怪に先生の姪が死んだと勘違いさせて
生まれてきてもらう。
そして、それを殺し、予言自体を不発にする。
不発になれば、予言はしていないことになるから
そこからまた寿命を呼び戻す。
まぁ、この方法の危険性は昔に説明したとおりだ。
ただ、この場合、厄介のは「我聞」を探して殺すという点だ。
まず「我聞」が見つけるのが難しい。
そして、見つけたとしても、そいつが予言する前にそいつのいるところに行けるかが疑わしい。
さらに、見つけたとしてもその妖怪を殺す必要がある。
腐っても妖怪だから、それなりにリスクはあるだろう。
それに何度も言っているが、うちの仕事は「退治」というより「交渉」だ。
なのに、自分たちの都合で妖怪を害するのは
どこか道を踏み外している行為だからね。
151 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/13(木) 11:54:54.99 ID:C+Rvcp9d0
なんだか規制されているとおもったら、スカイプを開いているとかきこめないのか。。。
3つの方法を話し終えると、先生の弟さんは難しい顔をした。
まぁ、どの方法を取るにしても、結局危ないのは変わりないからね。
弟さんは先生に、どの方法を取ったらいい?と聞いたが
先生は黙って首を振った。
そんで、最後どの方法を取るかは弟の娘自身に決めてもらおう。と言った。
ここで方法とか勝手に決めても、本人が納得しなければ、それをやることはできないのだ。
弟さんはそれもそうか…と切なそうな顔をすると
とりあえず、今日はもう遅いですし、詳しい話はまた明日にでもと言った。
彼も色々考える時間ほしいんだろうね。
先生と俺は自分にあてがわれた客室にもどり、そのまま寝ることにした。
部屋に分かれる直前、先生はお前ならどうする?とさりげなく俺に聞いてきた。
俺は分かりませんと答えた。
先生はめずらしく疲れたような口調で、やっぱり半人前だな。
と言った。
153 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/13(木) 12:09:36.95 ID:C+Rvcp9d0
その日の晩は腹がかなり減っていたせいもあって
なかなか寝付けなかった。
そんで、長い間目がぱっちりしていると、ついトイレに行きたくなってきたんだ。
トイレの場所はあらかじめ紹介されていたので、そこに向かった。
するとトイレの前には弟さんの奥さんがいた。トイレのドアは閉まっていて
中から「オエェ」と嘔吐する声が聞こえてきた
聞き覚えのある声で、どうやら先生の姪が入っているらしい。
俺はちょっと気まずくなった。
まぁ、こうなったのは自分の責任が大きかったので、正直あまり合いたくない相手だった。
6 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/18(火) 15:28:56.51 ID:ifSOO5Rt0
そのまま踵を返して、隠れて庭に行ってどっかの草むらにでも用を足そうと思ったが
トイレの扉の前にいた弟の奥さんはその前に俺に気がついた。
どうも、といった感じに頭を下げ
どうなされましたか?と聞いてきた。
俺は仕方なく、トイレをお借りしたかったけど、どうやら今は使えないようですね
と答えた。
奥さんはすみません、でも、今すぐ出させるので…
と申し訳なさそうな顔でそう言った。
いや、もとはといえば、俺が原因のようなもんだし、謝られても困るし
でも、実際尿意はやばかったから、ごゆっくりーとも言えなかったし
そう言うのもなんか違う気がしたから、俺はそのまま言葉に甘えることにした。
奥さんはトイレのドアをトントンと叩くと
ミサト、大丈夫?一度出てもらえる?的なことを言った。
そこで初めて、先生の姪の名前を聞いた。
13 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/18(火) 17:48:36.32 ID:ifSOO5Rt0
すると、トイレの中から水を流す音がした。
そして、なにやらドタドタと体が壁に当たったする音とかして
トイレのドアが開いた。
中から出てきた先生の姪は赤い布のようなもので目隠しした状態だった。
この布のついてなんだけど。霊感ある人とかも試してみてもいいけど
赤い絹の布を2重にして目に被せておくと、幽霊はともかく
大抵の妖怪は見えなくなるはず。
視界もかなりわるくなるんだけど、でもうっすらぼんやり物の大体の輪郭はわかるはず
先生の姪、まぁミサトさんはそれをしていた。
弟の奥さんは手に湯気が出ているお茶の入ったコップを持っていたんだけど
それを彼女に渡して、2,3口飲ませた。
失礼します、というと、ミサトさんの手を引いて、俺のそばから通ろうとしたんだけど
17 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/18(火) 18:28:23.94 ID:ifSOO5Rt0
ミサトさんは急に「っひ」って小さな悲鳴をあげると
何かにつまずいたように、転んでしまった。
もちろん、何もないところだった。
奥さんはあわてて彼女を支えたんだけど、そのかわり手に持っていたコップのお茶が
俺の手にかかった。
結構暑かったので、俺は思わず「アツッ!」と声を上げた。
そして、そこで目が覚めた。
あれ?っと、ぼんやりしながら思った。
あたりを見渡すと、泊っている客室だった。
しばらくして、目が完全にさめると。
どうやら、いつの間にか眠ってしまっていて、トイレに行ったのは夢だったと理解した。
妙に鮮明な夢だったけどね。
みんなはどうか知らんけど、俺はトイレに行く夢をよく見たいりする。
子供の時はそういう夢を見ると大抵そのままトイレで用を足して
そんで目が覚めると、おもらしをしてたりするんだけど
大人になってからは、トイレに入って、用をたす直前とかに目が覚める
そんでそういう時はいつもものすごくトイレに行きたい時だ。
もちろん、この時もそうで、俺はしょんベンしたくなった。
だから、夢の通りに、布団から這い出て、トイレに向かった。
18 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/18(火) 18:40:13.92 ID:ifSOO5Rt0
トイレが見えたあたりになると、そこには人影があった。
弟さんの奥さんだった。
あれ?と、俺は激しいデジャブに襲われた。
そんでさらに近寄ると「オエェ」っと夢の中と同じ嘔吐するような声が聞こえてきた。
奥さんは俺が来るのを見ると全く夢の中と同じ口調でどうなされましたか?と聞いてきた。
不思議に思った俺はとまどいながらトイレを借りたいのですが…と答えた。
そこからの展開は全く夢と同じだった。
奥さんはミサトさんに大丈夫?と聞いて、彼女がトイレから出ると、お茶を飲ませて
そんで、2人は去ろうとするはずなんだけど
そこで2人の動きは止まった。
そして、視線だけをゆっくりと俺のほうを向けると。
何とも言えないいやらしい笑みに顔がゆがむ。
俺はかなり驚いて絶句して、そして次の瞬間、急に奥さんがカップのお茶を俺にかけてきた。
結構暑かったので、俺は思わず「アツッ!」と声を上げ、そんで
目が覚めた。
客室だった。
20 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/18(火) 18:44:59.51 ID:ifSOO5Rt0
なんなんだよ。俺はそう思った。
夢の中で夢を見ていて、そんでそれがループした。
いや、ループしたとは違った。最後あたり、奥さんは明らかに悪意を持って俺に
お茶をかけてきた。
夢の中なんだけど、不思議にあのお茶の暑さには痛みを感じた。
俺はためしに頬をつねってみたんだけど、その時は痛みはなかった。
俺は察した。自分はどうやらまだ夢を見ているみたいだった。
俺は何かに導かれるように、また布団から這い出して、そのままトイレに向かった
21 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/18(火) 18:55:53.31 ID:ifSOO5Rt0
廊下がさっきと比べて大分暗かったような気がした。
ドアの前には奥さんがいた。
そして、やはりトイレの中からは「オエェ」とミサトさんの嘔吐する音がした。
いや、もはや本当に先生の姪のその人がミサトって名前なのかどうかはわからなかったけどね
ただ、様子が少し変だった。奥さんはコップをドアにごん、ごんとぶつけていた。
コップはガラス製のものだったんだけど、少しずつ粉々になって言って
そんで奥さんの手はどんどんと血だらけになっていった。
その時はなぜかあんまり怖いとは思わなかった。
そのまま奥さんに近づいた。すると奥さんは「どうしたんですか?」
と聞いてきて、俺は素直に「トイレを借りに」と答えた。
奥さんはそれを聞くと、突然いやらしい妙にねっとりした笑みを浮かべると
もう少し待ってくださいと言って、ミサトさんをトイレから呼び出した。
そして、ミサトさんの口の中に結構砕け散ったガラス片を入れた。
ミサトさんはそれをはやりいやらしい笑みでひと噛み、ふたかみ
口から見る見るうちに血があふれ出てきた。
奥さんはそれをみると、俺にあなたもお腹が減っているならいかが?
と聞いてきた。
俺は断ったが、奥さんは遠慮しないでといってがっちりと俺の腕をつかんだ。
ものすごい力だった。
それを振りほどこうと頑張ってみたが、無理だった。
そして、ガラス片を無理やり、口の中にねじ込まれて
そこでまた、俺は目を覚ました
22 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/18(火) 19:04:47.76 ID:ifSOO5Rt0
口の中ですこしだけ血の味がした。
頬をつねってみたら、痛かった。
どうやら、やっと本当に夢から目覚めたようだった。
ほっと溜息をついた。
怖い夢はよく見るが、いつもは目が覚めると内容はよく覚えてない
でも、今回は夢の内容が鮮明の分、後味が悪かった。
しばらく、そのまま布団の中で、夢を思え返しながら、ぼんやりしたんだけど
怖い夢だったし、トイレの夢だったせいもあってなのかわからんけど。
俺はまた激しい尿意に襲われた。
その時だ、俺はなんとなくわかった。
多分だけど、俺は今トイレに行くべきではないんだと。
でもおしっこは我慢できないほどだった。
だから、俺はトイレにはいかずに、最初の夢で画策したように
こっそりと庭に行って、草むらで立ちしょんすることにした。
布団から抜け出すと、忍び足で庭に通じる窓まで行って、その窓を開け
そこから庭に出た。
誰もいないことを確認して、俺はそこらへんの草むらで、ズボンを下ろした
23 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/18(火) 19:16:41.29 ID:ifSOO5Rt0
どうでもいいけど、月丸くてきれいだなぁ
続き
用を足し終えると、俺は幾分か心が楽になった。
そのまま部屋に戻ろうとしたんだけど、その時だった。
結構近いところから、リズミカルに水が流れる音がするのに気がついた。
トイレの水を流す音だ。
しかし、なんだか様子が少しおかしかった。
なんというか、トイレのレバーを小のほうにひねると、水がそのひねっている間だけ
少し流れるじゃん。多分それの音なんだけど
それを一定の間隔で、まるで楽器を演奏するように、水を流してるんだよ。
俺は不思議に思った、何なんだろうか?
24 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/18(火) 19:24:58.17 ID:ifSOO5Rt0
正直、トイレは夢のこともあるけど、あんまり関わりたくなかった。
先生の実家の庭は割と広かった。その水がリズミカルに流れるトイレは庭側に面して窓があった。
俺はひと眼だけその窓を眺めたが、電気はついていなくて中は真っ暗だった。
俺は少しだけ悩んだが、知らないふりをしようと思い、また部屋に戻ろうかと思った。
好奇心は猫を殺すからね
でも、次の瞬間その考えは全部ふっとんだ。
トイレの中から水の音以外の声が聞こえた。
控えめの声がったけど、聞きなれた声だった。
もちろん、耳を疑った。だからさらに音に集中してみた。
そしたら、確信した。その声は先生のものだった。
25 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/18(火) 19:36:47.59 ID:ifSOO5Rt0
先生は真夜中の今、トイレで何をしようとしていたのか気になった。
どうしてこんな変なことを?と一度疑問に思うと
好奇心がどんどんと膨れ上がった。
ちょっとだけ様子を見てみよう。そう決めた
俺は背を低くして、こっそりとトイレの窓のほうに近寄った
流石に窓をのぞく勇気はなかったけど
せめて先生の音が何を言っているのか、聞きとってやろうと思った。
そして、聞こえた。
じゃー、じゃー、と先生は水を流しながらこう言っていた
出ておいで、出ておいで
出ておいで、出ておいで
出ておいで、出ておいで
俺の心臓はどくんと、飛び上がった。
なんだか聞いてはいけないものを聞いた気がした。
急いで、その場から離れて、こっそり来た道を引き返し
自分の部屋に戻っていった。
26 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/18(火) 19:38:14.61 ID:ifSOO5Rt0
今日はここまで、なんかうまく表現できないや。
よみずらくてごめん。
27 :名も無き被検体774号+:2014/03/18(火) 19:39:30.59 ID:HmFiWGhm0
いや相変わらずとっても面白いし解りやすいよ
お疲れ様
続き楽しみにしてる
28 :名も無き被検体774号+:2014/03/18(火) 19:44:12.42 ID:cMH/MAf30
来てたー!乙です。怖いが楽しみです
29 :名も無き被検体774号+:2014/03/18(火) 19:56:27.38 ID:2wBxUL7a0
いつも面白い話をありがとう
お疲れ様!
30 :名も無き被検体774号+:2014/03/18(火) 20:12:38.79 ID:DpcSq1ePi
乙です
続き楽しみにしてます!
31 :1 ◆cvtbcmEgcY :2014/03/18(火) 20:20:33.67 ID:ifSOO5Rt0
一旦落としたことによってスレが綺麗になった
やったね、たえちゃん!
67 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/03/20(木) 20:06:45.73 ID:Igi4Y+mj0
続き
急いで自分の部屋に戻った俺は、ぶるぶる震えながら布団の中にもぐりこんだ。
先生がなにをしていたにしても
というか、先生じゃない何かだったにしても
多分あのトイレで起きていたことは、俺が知るべきじゃないことだったんだ。
ひどく、トイレの様子をうかがったことを後悔した。
その日はそのままもんもんとしながら、いつの間にかぐっすりとねむった。
今度は流石に疲れがたまっていたのか、ぐっすりねむれた
68 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/03/20(木) 20:18:49.12 ID:Igi4Y+mj0
朝になると、先生に起こされた。
時間は8時くらいだった。
俺は夜中の出来ごとが気になって、先生の様子とか観察したけど
普段通りだった。
先生は朝食ができたらしいから、食べに行こう。といった。
俺はやっとなんか食える!と喜んだ。
先生についていき、台所のほうに向かった。
そして、台所に入るドアをくぐったその瞬間
突然体がなんだか軽くなった感じがした。
71 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/03/20(木) 20:37:29.91 ID:Igi4Y+mj0
その感覚には少し身に覚えがあった。
でも、なんでこんなところで?と俺は思って、台所を見渡した。
すると、台所の壁になんだけど、ちょっとだけ色あせた感じの墨画が一枚飾ってあった。
まぁ、台所には場違いなものであった感じはした。
ほかのめぼしいものは特にないみたいだったので
体が軽くなった原因はそれではないのかと、あたりをつけた。
俺は霊感がないから全く分からないんだけど
まぁ先生とか霊感があると言っている人によると、いつも俺の体には焼き焦げた
気持ち悪いイタチが張り付いているらしい。
でも、たまにそれが離れることもある。
理由としては、イタチたちが怖がったり、嫌がったりするものがある
というわけではない。
まぁ、一般的な妖怪たちと違って、イタチたちはもう死んでるから
そう言うのはもうどうでもいいんだろうね。
いなくなってくれる時は大抵、彼らが「顔向けできない」と思う物の前だ。
死さえ怖くないのに、恥じらいを感じるのも、なんだか変な話だけどね
俺は先生の視界に入るように、合図を出して、このことを伝えた。
あの絵。高いかも。ほしい。だます。持ち帰らない?
156 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/03/24(月) 22:00:36.74 ID:T2p+ZAu80
続き
先生は俺の合図に気がつくと、絵のほうに目を向けた。
そんで、昼飯がならんだ机につきながら、「あきらめろ」と返事の合図をした。
まぁ、先生もそういうなら、多分無理なんだろうな、と俺は思った。
俺も先生に続いて席につくと、絵のことをじっくりと見つめた。
その墨画は、なんか湖みたいなとこに鶴?かなんかが書かれていたもので。
絵の左下に、葬×(良く読めないかった)居士 という名前が残されていた。
居士ってのは、出家者の法名とか、戒名みたいな意味や、なんかすごい修業を積んだ人のことが
居士号を取って、居士をなのるの2種類がある。
特に有名な居士といえば果心居士とかあるんだけど、織田信長の部下で幻術使いの話とかみんな知ってんのかな?
そんで、聞き覚えのあるなかで「葬」って文字がつく居士なんてただ一人。
葬死居士だ。
173 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/03/25(火) 00:40:26.17 ID:m0PrroZm0
葬死居士については、詳しいことについては長くなるから省くことになるけど
とりあえず、葬書という書物を日本語に訳した人ってざっくり考えてくれ。
葬書は風水について書いてあるんだけど、最初の風水ってのは祖先を敬うためにあった。
だから郭璞っていう葬書を書いた人間は中国だといわゆる親孝行の神様とかにあたったりするんだけど
葬書を日本語に訳した葬死居士ってひとは日本でもほぼ同じ立場にあったりする。
ちなみにだけど、妖怪退治の流派に葬死流というのがあって、それもこの人発祥にあたる。
まぁ、風水という概念を日本に広めた的な意味でも
流派を開いた的な意味でも
人間でありながら妖怪たちからもひとめ置かれているみたいなんだよね。
なんでイタチたちはこの人に顔向けできないのか、俺もよく知らない。
そこまでこの人に関する知識はないしね。
葬死流の人間なら何かわかるかもだけど
174 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/03/25(火) 00:43:30.47 ID:m0PrroZm0
頑張ろう思ったけどやっぱりねむいわwww
すまぬ、ねるねるねーるね
209 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/03/26(水) 21:43:21.95 ID:kowo+HYV0
しばらくぼんやりと俺が絵を眺めていると
台所のほうに先生の弟さんとその母親さんがやってきた。
朝飯は米と焼き魚とみそ汁とか、結構ちゃんとしたものだった。
そんで、飯が食卓に並び終わると先生の嫁さんはおかゆとかをもって
それを娘さんのところに持っていく雰囲気を出していた。
そしたら、先生がミサトちゃんもこっちに呼んで、一緒にたべよう。といった。
ですが…と嫁さんはすこし迷うそぶりを見せたが
先生は俺のほうをちらりと見ると
ずっとあの部屋にこもっていても、よくない。
いまなら大丈夫ですよ。と言い聞かせた
すると弟さんも、そうだね。呼んできてくれないか?と先生に同意した。
俺はミサトちゃん?と夢の中で聞いたその名前が本当に出てきたことにびっくりした。
嫁さんはわかりましたと答えると。娘さんを連れてくることになった
213 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/03/26(水) 22:10:38.27 ID:kowo+HYV0
ミサトさんはしばらくして、嫁さんに連れられてやってきた。
着替えもしたみたいで、寝巻じゃなく、長袖のシャツにジーンズ的な私服だった。
ミサトさんは俺のことをみると、一瞬ぎょっとした顔になったけど
どうやら、以前みたいに具合を悪くする様子はなかった。
そして全員そろうと、一緒に朝食を食べ始めた。
そしてら、先生は昨日はばたばたして、自己紹介もできなかったね的なことを言って
自分が何者なのか、ミサトさんに説明した。
まぁ、おじさんはともかく、妖怪退治とかの話もすると、あからさまに彼女は不審がってたけどねww
そんで、俺も先生に便乗する形で自己紹介をした。
俺はミサトさんの様子を見て、彼女はどこまで自分の状況を分かっているのか
気になったけど。
彼女は人見知りもあるのか、あまりしゃべらなかった。
そして、すこし気まずい朝食が済むと、先生がではちょっとこの子を話をするから
他の人間は席をはずしてくれないか的なことをいった。
弟の嫁さんは心配そうだったけど、弟さんと母親さんに手をひかれて
どっかに行った。
俺も彼らについていこうと思って、席を立ったんだけど
先生はお前は残れ、と言ってきた。
214 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/03/26(水) 22:13:18.69 ID:kowo+HYV0
あ、自己紹介のとこ書き方ミスった。
ミサトさんは、先生がおじさんだってことはわかってたんだけど
そのおじさんの仕事がこういう関係というのは分からなかったから、それについて
先生が説明して、俺も便乗した。
みたいな形だね
215 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/03/26(水) 22:23:48.22 ID:kowo+HYV0
お酒のんじゃったら、なんか支離滅裂になってきたwww
他の人たちがさると
先生はミサトさんに彼女の状況とか色々かいつまんで説明し始めた。
ミサトさんは結構散々みたいだし、わりと呑みこみというか
簡単に警戒は解いてくれた。
まぁ、先生が家族がいる状況で自分がそっち系の仕事をしていると暴露するのも
うまかったのもあるね。
そんで、今は逆にひとりだけにして、色々ゆさぶりやすくしてる感じだった。
268 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/03/29(土) 12:22:27.24 ID:KeO0LXjc0
続き。
先生の説明をミサトさんはただ頷きながら聞いていた。
そして、先生の話を大体聞き終わると
彼女はこう先生に聞いた。
両親のほうからは弟子入りの話は聞いているが
先生のことは書道関係の人だと聞いていた。
それはまったく違うのか?と
俺は彼女の部屋でみた、いくつかの書道の賞状をおもいだした。
なるほど、つまり彼女は最初、俺と先生のことを書道の師弟コンビだと思っていたわけだった
それがいきなり妖怪退治になったんだから、おかしく思うわけだ。
でも、先生は確かにどっかの流派の師範は持っていた気がす
弟子入りというのは書道のほうだったのかと、俺は思ったが
先生の話的には完全に妖怪退治を教えるつもりのはずだ
まぁ、書道も教えることもできるから、完全に騙したわけではないのか?
270 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/03/29(土) 12:36:12.70 ID:KeO0LXjc0
そこからは先生の弁解タイムに入った。
たしかに最初は書道だけ教えるつもりだったが、こっちのほうに来たら
君がこんな状況になっているので、しかたなく裏稼業のほうも
的なことだった。
なんだかんだ言って先生のしゃべりかたはうまいから
ミサトさんはそれで納得したようだった。
そして、ついに話は本題に入り、例の三つの方法があるが、どうしたいか?
と先生は切りだした。
先生的な説明だと、最初の方法だと、妖怪退治関係の勉強をこれから教えるつもりで
それ以外の二つは、もし成功すればまだその気があるなら、書道のみの弟子にするという話だ。
まぁ、書道だけの弟子にするってのもちょっと俺的にはあやしかったけどねw
とりあえず弟子にすれば、あとはどうとでも!とか思っていそうな顔だった。
ミサトさんはしばらく悩んだが、正直妖怪退治うんぬんを習う気はしないから
なるべく他の二つの方法で短期決戦でいきたいと、そういった。
272 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/03/29(土) 12:45:39.31 ID:KeO0LXjc0
そこからは俺と先生が少し話し合い。
第二の方法、「妖怪に忘れてもらおう」という方法をとることにした。
理由はまぁ、そっちのほうがまだ交渉の余地があって
俺や先生が慣れているから、というものだ。
方針が決まると早速準備をはじめた。
まずは妖怪を呼び出す場所の下見だ。
場所はミサトさんが失踪して見つかった、例の場所にすることにした。
先生は別の準備をするから、お前が見て来いと言った。
まぁ、あんまり先生は海とかに近寄りたくなかったんだろうし
俺はその指示にしたがった。
先生の弟さんに案内され、ミサトさんが見つかった崖に向かった。
場所的には弟さんの家から歩いて40分くらいかな?
割りと遠かった。最初は来るまで行きましょうか?と弟さんは言っていたが
俺は周りの風景とか建物の位置とかも、ちゃんと確認したいので徒歩でお願いした
着いたころには割りと疲れた。
273 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/03/29(土) 15:08:35.32 ID:mg8vYOET0
その場所は聞いた通りかなり辺鄙な場所だった。
道路のすぐわきってわけでもなく、アスファルトの舗装された道を外れて
4,5分岩だらけの地面を歩かないとつけない場所だ。
もちろん、あたりに街灯なんかない。
今の時間帯は昼ごろだから、全然大丈夫だけど
夜になったら真っ暗で、何も見えなくなってしまうのは目に見えていた。
そんなところだから、ひととおりもすくない。
まぁ、妖怪を呼び出すにはうってつけな場所だな。
そんで弟さんに、ミサトさんがみみず食べてた大岩につれてってもらうと
その岩の一部を削り取った。
削り取ったと言っても、あらかじめ持ってきたトンカチで叩いて
大きめで平な岩を手に入れた。
その後、あたりでわりと広い場所はないのかみつくろい
その場所に酒を撒いておいた。
台所からくすめた料理酒だ。
この場合なぜか普通のお酒より、料理酒のほうがいいんだよなぁ
なんか違うのかもねw
460 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/04/09(水) 01:32:25.29 ID:OXAjQfve0
大体の準備を終わらせると、俺は弟さんと一緒に、家に戻った。
もちろん削り取った岩とかも持って帰った。
帰ると、どうやら先生も他の準備のため家を出たみたいで、まだ戻ってない。
なので、俺は弟さんやその嫁さんに手伝ってもらいながら
庭の土を掘り起こしながら、生きのいいミミズを出来る限り捜した。
例の妖怪はミサトさんをおもてなすためにミミズを使ったのだが
妖怪は大抵、自分の好きなものを客人に出すらしい。
好物がわかったんなら、交渉に向けて、それを準備しない手はない
651 :1 ◇cvtbcmEgcY @?????@?????:2014/04/19(土) 21:43:53.92 ID:GNmct4UJ0
ミミズを用意したら、俺は弟さんと一緒にが家へ戻った。
帰るとどうやら先生も他の準備を終えたみたいで、戻っていた。
先生から妖怪との交渉は次の手段で行くと言われた。
663 :1 ◇cvtbcmEgcY @?????@?????:2014/04/20(日) 10:09:03.39 ID:w6PuqAxn0
前にも書いたが
実は「天命漏らし」をした人間も、死んだ後に
「我聞」に近い妖怪が生まれるらしい。
「我聞」に近いその妖怪に先生の姪が死んだと勘違いさせて
生まれてきてもらう。
そして、それを殺し、予言自体を不発にする。
不発になれば、予言はしていないことになるから
そこからまた寿命を呼び戻す。
まぁ、この方法の危険性は昔に説明したとおりだ。
ただ、この場合、厄介のは「我聞」を探して殺すという点だ。
まず「我聞」が見つけるのが難しい。
そして、見つけたとしても、そいつが予言する前にそいつのいるところに行けるかが疑わしい。
さらに、見つけたとしてもその妖怪を殺す必要がある。
腐っても妖怪だから、それなりにリスクはあるだろう。
それに何度も言っているが、うちの仕事は「退治」というより「交渉」だ。
なのに、自分たちの都合で妖怪を害するのは
どこか道を踏み外している行為だからね。
697 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/04/21(月) 21:50:29.98 ID:afZ4Tqaf0
先生が戻ってきたのは午後の5時くらい。
もうあたりは結構暗かった。
戻ってきた先生は大きなバッグを持っていて
体からはすこし生臭い匂いがしていた。
俺は先生に自分が今まで準備したこととかをかいつまんで説明した。
先生は何やら疲れた感じの顔で、分かったと答えると
そして、いまからすこし風呂に入り
時間になるまで休むから、バックの中身を頼む。と言ってきた。
俺が了承すると、先生はそのまま風呂場に向かった。
嫌なにおいがする先生のバッグを開くと、俺は驚いた。
中には死んだ犬の死体が入っていた。
700 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/04/21(月) 22:07:09.96 ID:afZ4Tqaf0
犬の死体は今からやるはずの儀式とかに特に必要なものなどではなかった。
どうして先生はこんなものを用意したのだろうか?
しかも、その犬は見た感じ、もちろん、あくまで憶測だけど
野良犬とかの類じゃなかった。
結構毛並みのいい、柴犬で、首輪もあったんだ。
そんで、その犬の腹辺りが真っ二つに割れていた。
黒い犬の血は妖怪退治とか幽霊退治とかで童貞のおしっこと並んで
よくつかわれてる。これは割と有名な話だよね。
ただ、その犬の血をどう取るかというと、実は結構残酷だ。
まず、犬を大人しくさせるために、口の中に石を詰め、手足を縛る。
そのあと、大きな鉈で、ゆっくりと犬の胴体の部分を真っ二つに切る。
しばらく、犬は死なずに苦しそうにもがく。
そして、完全に死に切った後に、犬の臓器を取り出して
それを水につける。
そして、水が赤くなるんだけど、その水のことを、「犬の血」として使う
704 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/04/21(月) 22:18:33.61 ID:afZ4Tqaf0
まぁ、もちろん、そのあとにいろんなものを混ぜたりするんだけど
大体こんな感じ。普段はあんまり使ったりしないものかな?
残酷だし、手に入れるのもしんどい。
ただ、黒い犬の血は大抵「汚いもの」とされていて
妖怪とか幽霊から嫌われるていて、そういうものを避けるのには有効なんだ。
そんで、黒以外の犬にも色々な使い方がある。
今回の場合、割と色が白い柴犬だったので、多分白い犬の血を使うことになる。
でも、白い犬の血というのは、めったに使わないものだ。
なぜなら、白い犬の血は、人を「殺す」ために使うものだ
712 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/04/21(月) 23:29:53.95 ID:afZ4Tqaf0
白い犬の血ってのは霊力が含まれているらしくて。
不吉なものを取り除けるとか、
魔の病気とかを治すとか、そういう力があるらしいんだよ
あとは、洗心術とかでも使うんだけど
まぁ、それを聞くとなんだかいいものように思えるけど
でも、そう言うのは基本的に何かしらすごい術の媒体としての話であって
今だとほとんどそういうのについての使い方は伝わってきてないらしい。
なら、今は何に使うかというと
「火消し」という術に使われる。
この火消しって言う術が、以前に言っていた「霊的な意味で死なせる方法」がこれだ
人間は両肩と頭のてっぺんとで3つの炎がついているって話って前したっけ?
してなかったら、またあとで解説するとして
この3つの炎がある限り、人間の魂は肉体につなぎとめられている。
この火を消すためには白い犬の血を浴びないといけないらしい。
なので、間違っても、白い犬の血を肩とか頭のてっぺんとかにつけちゃいけない。
ころっと魂がどっかいっちまうらしい。
でも、逆にだれかの魂を四散させたいなら、白い犬の血をぶっかければ
その人は十中八九、霊的に「死ぬ」
766 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/04/24(木) 00:48:04.11 ID:idYDtZo+0
火についての解説をすこしだけ
夜道をで歩いているとき、ふりかえっちゃいけないというジンクスがあるんだけど
これも、両肩と頭のてっぺんにある火から来ているらしい
ちょっと、うっさんくさいかもだがその火はなんか神さまが人間をつくったときに
くれたものらしくて
3つそろうと一種の結界の力を持っていて
魑魅魍魎から人間を守るためにくれたものだとか
その火はめったなことがない限り、消えないんだけど
いくつかの弱点がある。
まぁ、もちろん白い犬の血もそうなんだけど
人間自身の息でも火は消えちまうらしい。
だから、人が振り返る時とかに無自覚に鼻の息で肩の火をひとつ消しちまうらしい。
768 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/04/24(木) 00:55:20.41 ID:idYDtZo+0
だから、夜の時に、もし後ろのほうから気になる物音があったとしても
決して振り返ってはいけない。
なぜならそれは、人間に何かしら害をもたらしたいと思っている妖怪とかが
振り返らせて、その鼻息で肩にある火をひとつ消させたいがために
だましてるんだ。
白い犬の血とかの場合は割と消えた状態が長続きするんだけど。
まぁ、鼻息の場合はいったん火を消したとしても、次の朝くらいにはまた元に戻るんだけど
そんで人間が死んでも、その火そのまま消滅したりしない
人から離れて、しばらくはそのまま燃えているらしい。
もしかしたら、これが鬼火の由来だったりとかなんとか。
770 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/04/24(木) 01:11:25.84 ID:idYDtZo+0
まぁ、この火についてはもっといろいろ話があるんだけど
今回のことに関してはそこまで関係がないから、ここまでにしておくね。
話を本筋に戻す。
俺は先生から渡された犬の死骸をどうするべきか少し迷ったけど
とりあえず先生に言われた通り「処理」しておくことにし
幸い、先生の弟さん一家の人はその場にいなかった。
俺は生臭いバッグを一回庭の隅に隠して、先生の弟さんとかから必要な道具を借りた。
まぁ、そんときにだけど。俺の体にも生臭い匂いがついたのか、不審に思われ
色々聞かれた。
俺は今晩に必要なものの準備とって、とりあえず弟さんをいいくるめた。
そんで庭から人払いしておいてほしいとお願いすると、死骸の「処理」に入った。
まずはバケツに、水を半分くらい入れる。
その後、水の中に唾を吐いて、もう二、三工程あるんだが、流石に詳しく書きすぎるのはあれなので
省くとして
犬の臓器を取り出して水につける。そして、赤く染まった水をペットボトルにいれた。
もちろん途中に、水が肩や頭あたりに飛び散らないように注意しながら。
そして残ったものは、バケツも含めて、全部庭に埋めた。
最後の締めとして、その埋めた場所に桃の種をひとつ植える。
何かよくないものを埋めた場合、植物を植えるようなことをするのは有名だけど
桜や柳とかはやめたほうがいいらしく
こういう時は大抵桃の種を選ぶ。もちろん相性の問題おあるけど
845 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/04/26(土) 00:29:28.21 ID:vGvqX2jJ0
続き
俺が犬の血の処理をし終わると、あたりはうす暗くなってきた。
そのまま俺も風呂に入ることにした。
途中、弟さんの嫁さんにあったんだけど、あからさまに目をそむけられた
やっぱり匂いがひどかったのかと少し心配した。
そして、風呂ついでに仕事用の「衣装」に着替えた。
前にも行ったと思うけど、神さま相手の神主さんとかは小奇麗なかっこをしないといけないんだけど
うちのような妖怪相手の商売は、むしろ逆で汚らしい格好じゃないといけない。
まぁ、でも汚さといっても色々あって、血なまぐささは妖怪的にだめらしい
どっちかというと妖怪の好みの汚さってのは、泥とか、ほこりっぽさとか
そういうものだ。
なんというか、そういうものの方が、自然に近いのかもね。
だから、あらかじめ着古していて、あまり洗ってない服とかを用意してる
850 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/04/26(土) 00:53:29.90 ID:vGvqX2jJ0
しばらくすると、弟さんが晩御飯に誘ってくれた。
ミミズやら、犬やらで結構食欲なかったんだけど、一応夜に向けて
何か食べておこうと思って、彼について行った。
台所につくと、もうすでにミサトさんやら、奥さんやら弟さん一家はそろっていたが
先生はいなかった。
先生はどうしたんですか?と聞くと
どうやらまだ寝ていて、起きる様子がない、と弟さんに言われた。
まぁ、こういう時は寝かせておくのがいいんだろうけど
ただ、俺的には今回の妖怪はミミズとかを出して食わせてきたりするし
なるべく空腹の状態とかで対峙するのはよくないのでは?とおもった。
食欲とかに付け込まれる可能性も微レ存
なんで、俺は起こしてきます。といって先生の部屋に行った。
先生の部屋のドアを開けると、中は真っ暗だった。
俺は先生、先生と2,3呼んだが。返事はなかった。
仕方なかったので、部屋の電気を手探りでつけた。
すると、すこしぎょっとした。
先生は目を開けていて、天井のほうをじっとみつめていた。
俺はおそるおそる彼に近づき、どうしましたか?ご飯の時間らしいっすよ?と聞くと。
見えるか?と、急に聞かれた。
俺は( ゚д゚)ポカーンってなったが、先生の目線のほうを見てみても何もなかった。
いえ、と俺が返事すると、先生はそうかと答えて、布団から出てきた。
そんで、俺はさらにが愕然とした。
先生の来ていた服が、寝汗でびしょぬれだった。
絞れば出るとか、そんな感じだった。
851 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/04/26(土) 00:54:58.29 ID:vGvqX2jJ0
さて、明日の朝はやはいので早めに寝ます。
今回も少なくてすまそー
112 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/06/17(火) 22:09:41.85 ID:CxT6tyx50
前回は先生を起こしに行ったら、先生の様子がおかしいってところまでだったね。
俺は先生に晩御飯の用意ができたという旨を伝えた。
先生は分かった、着替えたら行くと答えた。
俺は先生が少し心配になったので、先生の部屋の外で先生のことを待つことにした。
しばらくして、先生は夜の仕事の時に着る予定の服を着て、出てきた。
俺は先生にさっきは何をしていたのか聞きたかったんだけど
なんだか口がうまく動かなくて聞けなかった。
あんな先生を見たのは初めてだった。
先日のトイレのこともあったし、ここにきてから先生の様子がどうにもおかしかった。
114 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/06/17(火) 22:16:32.89 ID:CxT6tyx50
俺が何か言いたげなのを察したのか、俺と一緒に台所に向かいう間
先生はいつからこっちの心配をし始めた。自分のことでも考えておけ見たいな感じに茶化してきた
正直俺としては、先生の身に何かがあるのが怖いというか
また俺の知らないとこで、先生が何かを企んでいるほうが怖かった。
俺がそういう風な言葉を先生に返すと、先生は鼻で笑い返した。
そして、俺と先生は他の人たちと飯を食った。
なにを食ったか忘れたが、割とうまかった。
116 :名も無き被検体774号+@?????:2014/06/17(火) 22:24:22.38 ID:vQXi9dkU0
妖怪と言えば
こないだ師匠に水晶玉渡された
それは負の気が凝って物の怪化したやばい奴だった
「これもう空っぽになったはずだからお前にやる、ただしちゃんと浄化しようね★」
ひどいめにあった
117 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/06/17(火) 22:27:42.21 ID:CxT6tyx50
晩飯から2,3時間たった後。
儀式の時間になった。
先生と俺は準備するものを全部リュックに詰めて背負った。
現地までは弟さんに車で送ってもらい、一旦帰ってもらう。
つまり実際に儀式中は俺と先生とミサトさんの3人だけになるってことだ。
そんで、ことがうまく運んだら、また弟さんに迎えに来てもらうって感じだ。
そんで例の場所にたどり着いたのは夜の11時半あたりだった。
周りは真っ黒で、潮風が肌にまとわりついてやけに気持ち悪かった。
弟さんを帰すと俺と先生は早速準備を始めた
122 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/06/17(火) 23:01:06.79 ID:CxT6tyx50
まず朝に削り取った石を皿のように使って、その上にミミズを乗っけた。
それをミサトさんが見つかった大きな岩の上に置いて、さらに周りに軽くお香の灰を撒いた。
そして、北と西のほうに一本ずつ蝋燭を立てた。
油紙で作った風よけの中に入れてつけると割と簡単に火はつく。
その後に、妖怪を呼ぶために色々と地面に仕込みを入れた後
塩水で濡らしたしめ縄でミサトさんを囲いこんだ。
主にこういう準備をするのは俺だったんだけど、先生はその間近くの湿った枝や葉っぱとかを集めて
中にミサトさんの髪の毛を2,3本入れて
炭や着火剤とかを駆使して、それを燃やした。かなりもくもくと煙はあがった。
夜であるおかげで目立ちはしなかったけどね。
これで大体の準備は整った。
時間にして2時間くらい使った。
123 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/06/17(火) 23:08:00.15 ID:CxT6tyx50
そして、ここで先生が変な行動に出た。
俺が用意した、白い犬の血を取り出して、それで炭を溶かし
ミサトさんの来ていた額に筆で文字を描こうとした。
あ、ちなみにミサトさんのこの時の服装は割と厚着で、一番外には学校のジャージを着てた
こういう時は、なるべく使いなれたものを使うのがよかった。
俺はびっくりした。
これはかなり危険な儀式をするときにやることで、たまに魔よけとかにも使うんだけどうちでは開天頂っていうやり方だ。
魂と肉体のつながりを弱くすることができるらしい。
ただし、今回の儀式でまったく必要のないことだった。
166 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/06/18(水) 22:26:11.35 ID:pU62ROGf0
>>163
ごめん、おっさんは恋愛対象じゃないんだ…
先生の行動に気がついた俺は、急いで例の合図でなに、してる?と聞いた。
しかし、先生は夜が暗くてよく見てなかったのか
それともわざと無視したのか、返事はしなかった。
俺は少し困った。
声を出して聞いてみるわけにもいかないのだ。
ミサトさんには儀式が具体的にどうなるのかはあんまり説明していない。
これはもちろん、現場でいざってときに小細工が出来るようにするためだ。
なので、何かおかしなことが起きていることをミサトさんにあんまり知られないほうがよかった
だが、先生の目的も分からないまま放っておいたら
何かしら自分に害が飛んでくる可能性もあった。
俺はそっと、用意した「奥の手」を荷物から取り出して、袖の下に隠した
168 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/06/18(水) 22:46:48.03 ID:pU62ROGf0
先生は俺を無視したまま
ミサトさんの額に「下」と文字を書いた。
開天頂はすることによって描く文字が違う。基本的に「上」「中」「下」
の三種類の文字を使う。といっても、大分形が崩れた感じにしてる
主な作用は人間の額にある「火」を弱くして、体と魂のつながりを弱くするんだけど
「上」は男に使う時
「下」は女に使う時
「中」は老人に使う時って感じだ。
それが終わると、先生は俺に儀式を開始する合図を送ってきた。
俺はなに してる?ってもう一度合図送ったけど
またまた無視された。
173 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/06/18(水) 23:04:28.05 ID:pU62ROGf0
割と長い時間、俺は詩を呼んだ。
これは目当ての妖怪が来るまで続く。
つまり、来なかったらずっとやっていないといけない。
普通家とかでやれば割と10分、20分できてくれるんだけど。
そんときはかなりかかった。
そんで俺の喉が殆どかれきったときになって、突然岩に置いてあった石の皿がひっくり返った。
もちろん、風でひっくり返った可能性もあるけど。
こういう妖怪に対するお供えの皿がひっくり返ると、妖怪が来た証拠になるらしい。
遂に本番だ。
174 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/06/18(水) 23:05:55.95 ID:pU62ROGf0
今日はここまで。
また明日ー
243 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/06/21(土) 23:21:24.85 ID:mINGHbFH0
今日は多分2,3スレしたら消える
続き。
「皿」がひっくり返ったことを確認した俺は、すばやくつけていた蝋燭の火を消した。
相手側から訪ねてくるよう仕掛けた場合は火が彼らによって消されるんだけど。
こっちが宴会を開いて招待した場合。こっち側から消すのが礼儀だった。
そして、その間、詩を歌う仕事は先生にシフトする。
先生は妖怪に対して、ようこそいらっしゃいました。とりあえずそこにある
準備した食いものでもお食べください。的なことを歌う
蝋燭を消し終わった俺は次に銀の針を軽く生姜にさし、それでミサトさんの親指を刺した。
彼女の親指から赤い血が間違いなく出ているのを確認すると
その周りかこった縄を回収した。
246 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/06/21(土) 23:36:45.77 ID:mINGHbFH0
回収した縄はそのまま枝とか燃やしていた焚火のところにほおりこんでおく。
しばらくすると、不思議なことに、黙々と上がっていた煙は減って行った。
大体殆どの煙がなくなると、それは妖怪がちゃんと宴会の席ににつき
しかも、こっちの話を聞いてくれる体制になったということだ。
それを見た俺は、先生に合図を送る。
すると、先生は今まで歌っていた歓迎の詩から一転
話し合いの形式の詩を歌い始める。
相手が宴会の食べ物を食ったあとに機嫌がいいときにこっちに都合のいいように話をすすめる
人間でもつうようする方法だよね。
58 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/12(金) 19:49:57.61 ID:ilHTgWOC0
俺は先生の詩が変わると、今度はすばやく枝や葉っぱで焚いていた火を消した。
ずっとつけたままだと、余計な奴が気になってやってくる可能性がある。
そして、火が完全に消えると、あたり一面は一層真っ暗になった。
月の明かりで完全に周りが見えないわけではなかったが。
もともと街灯ひとつもない場所なので、先生やミサトさんの顔すらまともに見えない状態だった。
ただ、立っている場所にぼんやりと人がいるのが分かるくらいだ。
俺はミサトさんだとおもわれる人影に近づいて、肩に手を載せて座らせた。
手が彼女の湿ったような髪の毛に触れると、童貞特有かもだが、一瞬ドキッとした。
そして、そのまま、その場所で先生の詩が終わるのを待った。
あらかじめ決めた段取りであると、そこで先生はこの中で座っている人間がいるが
その人間に関する記憶をお忘れになってほしいという内容の詩をいうはずだった。
妖怪からしたら、人間なんてみんな同じようなものだから分かりやすくするためにね。
しかし、そこでまた先生が奇妙なことをし始めた。
先生は妖怪にお願いを言う前に、突然詩をやめたのだ。
60 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/12(金) 19:56:19.40 ID:ilHTgWOC0
俺は何かアクシデントでも起きたのか?と一瞬焦った。
でも次の瞬間、何かガラスが割れるような音がした。
そこで俺は悟った、先生は殺陣をするつもりなんだと。
いつも言っているように、うちは妖怪を倒す、というより妖怪と交渉するのが主な仕事だが
ごく稀に、どうしようもない時に妖怪を「殺す」ことになったりもする。
なんか妖怪退治っぽいことだが、これはかなり難しく、危険なことだ。
これをうちでは「殺陣」と呼ぶが、殺陣はめったにしない。
よく昔話でも、人を食ったりする妖怪が封印されたりとかするだろ?
あれは倒せないから封印するってのは確かにあるが、例え倒せたとしても
殺しちゃいけないから生きたまま封印するってことも多い。
前にも妖怪をなぜ無暗に殺さないかって話をした気がするけど。
妖怪が人間に害を及ぼすのは大抵悪意があるわけじゃない。
ものすごい悪とかするやつは、殆どそう言う風にできているからそうするだけだ。
例えが悪いかもだが、台風が家とかをなぎ払ったりして、人を死なせたりするけど
台風自体はそれに悪意があるわけじゃない。ただ、そうなってしまうだけだ。
なので、その行為には罪が存在しない。罪が存在しないのに勝手に殺すのは不公平だろ?
もちろん、いたずらをして喜ぶ奴らもいるが、そう言う奴らの場合、自覚がある分
殺されるほど悪いことをしたりしない。
もし、人間にとって「悪い」ことをやつで、しかもそういうことをする必要がないのに
それを悪いことだと自覚したうえで、その悪さをする妖怪がいても、そういうやつほど強い力持っているから
単純に力不足的な問題で殺せない。
なので、殺陣というのは滅多にしないことだ。
俺は真っ暗な中、かなり混乱した。
流派ごとに、殺陣の初め方は違う。
大抵の場合殺陣を開始するにしても、そのふりをして妖怪を驚かして、逃げさせるやつ。
しかし、今度の先生の準備をみると、完全に「殺す」つもりだ。
62 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/12(金) 19:58:00.07 ID:ilHTgWOC0
この場合のやり方は「鴻門集」と呼んでいる。
多分「鴻門の会」とかなんとかから来てるんだろうね。
始め方はまず、妖怪を呼びつける。そのあと一通り宴会が終わったところで
儀式で使う光をすべて消す。
そのあと、お酒が入っていない酒瓶をたたき割る。
それが合図だ。
これが「殺せ」の合図になる。
準備するものは全部で2つ。まずはその殺そうとしている妖怪を倒すのに適した形の物
妖怪は物理的に物を動かせたりすると前にいった気がする。
これはつまり、同じように物理的なものの影響も受けるということだ。
もちろんすべてではないので、各妖怪に合わせて物を選ぶ必要がある。
もう一つは確実に妖怪の位置がわかるようにできるもの。
例え霊感があっても妖怪がはっきり見えるわけじゃないらしいので
その妖怪を一定の位置におびき寄せたり、誘導したりする必要がある
それをするためのものだ。
まぁ、正直準備自体はそんなに問題じゃない。ただ、本番がむずかしいのだ。
それに妖怪を呼びつけて、話し合うかと思わせながら、闇うちをするという形式のものなので
背信にも当たるような行為だ。
やってしまうと、それ以降妖怪に信用されなくなってしまうかもしれない
という大きな職業上のリスクも被うことになる。
つまり、それくらいの覚悟がないと、この殺陣をやってはいけないんだ。
68 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/12(金) 20:21:23.41 ID:ilHTgWOC0
殺陣は一回始まったら、中断はできない。
俺も覚悟を決めた。先生がなにをしたいのかはわからないが
今はもう従うしかない。そう考えたんだ。
ならば、まずは妖怪の場所を特定だ。
先生のそれまでミサトさんにやったことの意味がやっとわかった。
彼女を妖怪の「餌」にして釣るつもりなんだ。
皆も知っていると思う話だけど
ヤマタノオロチを退治する話ってあるよね。
あれも割と殺陣の式用にならったもので、ヤマタノオロチは酒瓶に首を突っ込んで
酒を飲んでいるところに斬首をくらった。
まぁ、あの話だと、酒で酔わせるのが大切みたいな書き方だけど
本当は酒瓶に首を突っ込んだってところに注目してほしいんだ。
つまり、半分実体がないような妖怪の首をはねるために、酒瓶に首を突っ込ませて
首の場所を特定したんだよ
70 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/12(金) 20:48:43.59 ID:ilHTgWOC0
あそこでの酒瓶の役割を、この場合はミサトさんに勤めてもうことになる。
まぁ、例えがかなりわるいんだけど、うまい説明の仕方が思いつかないから
こういう風に言うが
ミサトさんの魂をお酒として、体を酒瓶にする感じだ。
どこまで説明したかわすれてしまったんだけど、とりあえず
体に妖怪が入り込めるけど、途中で詰まっちゃうような状態に
彼女はなっている。
俺はすばやくミサトさんにその場にしゃがませた
そして、めいんでぃしゅだよー的な詩を大声で叫んだ。
71 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/12(金) 20:49:15.76 ID:ilHTgWOC0
過去ログみずらすぎワロた
73 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/12(金) 20:57:50.09 ID:ilHTgWOC0
>>72
うまい例えが思いつかなかっただけなので
76 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/12(金) 21:27:34.25 ID:ilHTgWOC0
>>74
すまぬ、前ログ確認しながらなので、少し遅いかも
俺は心の中で10秒くらい数えた。
そして、ミサトさんの額に「下」と書かれているだろう位置を
ごしごしと手でこすった。
これで準備は整った。うまくいっていれば
ミサトさんに興味をもった妖怪が彼女の中に「入ろう」として
挟まって動けなくなっているはずだ。
暗闇の中、ミサトさんは微かに震えているように感じたが
光がなくて、見えなかった。
先生がいた位置から、足音がこちら側に近づいてきた。
俺は先生に位置を伝えるために、手を2回たたいた。
2回たたくのは特に意味はなかった。たた、その昔、手を三回たたくのは
キリスト教で三位一体を侮辱する行為で、悪魔をよぶってきいたことがあって
まぁ、花子さんとかを呼ぶ時も3回たたいたりするしね
なんで無意識の時は割かし2回たたく。
それを2回くらい繰り返すと
先生は俺の肩に手をかけた。
78 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/12(金) 21:43:36.16 ID:ilHTgWOC0
俺は先生の手を掴んで、ミサトさんの肩にそれをかけた。
そして、俺はミサトさんから離れようとした。
俺はこの時点、このあとどうするべきなのか知らない。
殺陣の最後の部分は半人前はしってはいけないってことになっている。
無暗にやったりしないようにね。
しかし、その時だった。
俺の脚首あたりが、何かにつかまれた。
位置的にはミサトさんだろうけど、でも、確信を持てる。彼女じゃなかった。
イタチとかでもなかった。
理由はわからないんだけど、本能というか勘というか、そういうのが違うって
掴んできたといっても、ものすごい力じゃない。軽く触れてきている程度だ。
俺は迷わずそれを振りほどいた。
79 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/12(金) 21:56:32.89 ID:ilHTgWOC0
掴んできた何かは簡単にほどけた。
俺は急いで、そこを離れようと、5,6歩ほどすばやく脚を動かした。
その時、唐突に、ミサトさんがぼそぼそと何かを言う声が聞こえてきた。
「ももの、こざえ、みりたたた、ほしえみ…」だがなんだが、そんな感じだ。
その音が耳に入った瞬間、俺の体はぞわりと嫌な冷や汗がなぜかわいた。
そんで、なにかがすっと体から抜けていくようなそんな感じの感覚にとらわれた。
クスクスクス。遠くから、何かが笑うような声が聞こえた。
俺はやばい!とおもった。
ミサトさんがつぶやいていたのは「天命漏らし」だ
80 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/12(金) 22:16:49.47 ID:ilHTgWOC0
俺は先生たちがいるほうに体を向けた。
暗闇の中、先生がもぞもぞ動いているのは分かる。
でも、なにが起きているのか把握はできなかった。
一体何が?そう思った時
何かに激しいタックルを食らわされた。
俺は混乱したまま、倒れた。そして、タックルしてきたものはそのまま俺に馬乗りしてきた。
その時ふわりと、いいにおいがした。
ミサトさんの髪の匂いだ。
ミサトさんは俺に馬乗りになったまま動かなかった。
彼女は割かし細いほうだったし、その時期の俺は腹筋とか何とかして
割かし鍛えたんだけど
彼女をどかそうとじたばたしたのに、彼女はびくともしなかった
81 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/12(金) 22:32:21.46 ID:ilHTgWOC0
そんで、そのまましばらく沈黙したままの時間が流れた。
先生がやってくるような気配はなかった。
時間に経つにつれ、俺も冷静になった。じたばらするのをやめ
耳をすませた。風の音と、俺の心臓がどくどくいう声しかしなかった。
どれくらいたったか、いつも通り自分の中で数えることができなかったので
激しく不安になった。
体感かなりの時間のあと、ミサトさんの息遣いが俺の顔に近付いてきた。
彼女は俺の耳元でぼそぼそ、しゃべりはじめた。
残念だけど、彼女がなにを言ったのかは、みんなに教えらないんだけど。
ただ、その時になってやっと俺は理解した。
83 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/12(金) 22:43:49.34 ID:ilHTgWOC0
搬山流とは山を運ぶという意味の流派だ。
俺はずっと、それは山を運ぶだけの意志の強さをという意味だろうと思っていた。
でも、それはあくまで半分が正解で、うちの流派がやろうとしていること
運ぶべき「山」がほんとうにあったこと。
あの時、あの墓地で、俺の妹が出会ったもののこと
ずっとおかしいと思っていたこと
俺の一家に深い憎しみを持っているはずなのに
俺をいまだに野放しにしているイタチのこと
苦しめるためだと、無理やり納得していたが、その本当の理由のこと。
かつて、東南アジアのあの燃えた家で、俺はなぜか助かったこと
先生がいまやろうとしていること
まぁ、これなら確かに合点だなと。俺は思った
85 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/12(金) 22:57:28.98 ID:ilHTgWOC0
うーん、ちょっと色々思い出して疲れてきたから
今日はここまで、またー
118 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/13(土) 21:23:24.41 ID:klpEaEEQ0
ミサトさんの言葉で、俺は自分の経験に色々と合点がいった
しかし、「天命漏らし」は聞いたほうも、しゃべったほうも
そのどちらのほうも寿命がちじんでしまう。
なので、そのまま聞いていたいという気持ちも大きかったが
何とかしないといけないと、俺はあせった。
先生の本当の目的もやっとわかった
ミサトさんをたすけるためじゃない。先生は彼女の「天命漏らし」の内容を阻止したいいんだ。
そして、殺陣の目標はミサトさんの中に入っている妖怪じゃない。
如是と我聞の話をしたよね?
その我聞のほうを殺すつもりのはずだ
121 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/13(土) 21:46:38.39 ID:klpEaEEQ0
そのためにはまず、「如是」にあたるミサトさんを死なせたと
「我聞」に勘違いさせることをしないといけない。
その手段として先生がやろうとしていることは、ミサトさんの寿命を
ほとんど「天命漏らし」させて使いきらせるつもりだ。
先生は妖怪を宴会でいい気分にさせたあと、お願いごとを言わないといけないところで
詩をやめた。
妖怪からしたら、突然宴会に呼ばれて、飲み食いして
そんで、あとはどうぞご自由にー
って感じに放っておかれたようなもんだ。
ここで儀式をした俺たちと、妖怪の間に一種の借りのような状態が発生する。
つまり、妖怪が宴会を開いた先生や俺に対して、本来は何かしらお返しすれば
それで因果がつりあって、双方気持ちよく宴会を終えるはずだったのに
こちら側はなにもお願いしないから
妖怪は俺にたちに対して借りができた。
そんで、妖怪ってのは借りを作りたがらない。
因果が生まれちまうからね。
なので、妖怪はこれを返そうとする。
もちろん、人間なら借りを返そうと思ったら、相手が喜びそうなことを一生懸命考えたりするけど
妖怪はそんなまどろっこしいことはしない。
124 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/13(土) 21:57:04.12 ID:klpEaEEQ0
先生はミサトさんをその場に「用意」したんだ
妖怪はかつてミサトさんに「天命漏らし」させた。
なら、ここに呼んだのはそれをもう一回させるためだ。
妖怪は勝手にそう判断するらしい。
どういう思考の飛躍すれば妖怪がそんな風にこの儀式をとらえるのか知らないが
彼らは割かしとりあえず繰り返すことがすきなようだ。
先生は、妖怪のこの繰り返しを狙った。
先生が詩を止めた時に、先生の目的を察せなかったのからも分かる通り
おれはまだまだ青いようだ。
126 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/13(土) 22:28:44.78 ID:klpEaEEQ0
しかし、俺からしたら、先生のそんな都合は聞かされていないし
意味がわからん。確かに俺もミサトさんの言葉で色々とわかったけど
でも、まだ遠いことだし、そのためにミサトさんの寿命を使いきるのはおかしい
大体、先生はミサトさん寿命が尽きたに、そのフォローとか入れるつもりなのだろうか?
先生のことだし、使い終わったら、襤褸雑巾のようにぽいって可能性だってある
まぁ、混乱していたし、俺は割かし予定がはずれるとてんぱっちまうタイプなので
とりあえず、この場はミサトさんを助けようと、無意識に体が動いた。
あらかじめ、袖の下に隠していた、奥の手だ。
136 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/13(土) 22:55:43.07 ID:klpEaEEQ0
奥の手の名は前のスレとかにも一度出したが「洗心術」
うちの流派には全部で四法三術が伝わっているんだけど
その中でも、威力は下の下の下
正直ほとんど役に立たない。
ただ、この術は「術」であるにもかかわらず
高めると「道」につながる珍しい「術」だ。
しかも、現代でも修業できるお手軽のもので。
たぶん、みんなも修業できる。
そんで、まぁ、威力に目をつぶるとしても
習得するためにはひたすら時間がかかる。
皆は君子剣というものを知っているかわからないんだど
それににたものだ。
自分の心を磨き、剣のようにとぎ澄ます。それが「洗心術」
具体的な修業方法はとても簡単。
「一日三自省」だ。
つまり、日常生活の中で朝昼晩に3回、またはそれ以上
時間を設けて、自分の行動を思い返す時間を設ける。短くても10分は必要らしい
一番重要なのは、自分の行動で自分が後悔するような要素があるかどうか考えることだ。
そんで、後悔があった場合、自省の時間がおわったら、すぐに後悔の原因をなるべく取り除きに行く。
例えば、告白しようとしてうじうじしていたら、タイミング逃した
そんで自省の時間で、それが自分にとっての後悔だったら
すぐに告白しに行く。といった感じだ。
これをひらすら毎日繰り返す。
137 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/13(土) 23:01:48.99 ID:klpEaEEQ0
そんであるとき、自省をしても何の後悔もないときがある。
この状態が1週間続くと洗剣術は小成する。
自分の体と心がまっすぐに一本の芯を通すようになり。
つまり、「正直」に至る。
そうなまると、自分の行為や言葉のすべてに自分の心がそのまま表れる。
140 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/13(土) 23:09:10.46 ID:klpEaEEQ0
あ、みすった「洗心術」
「寺生まれのT」の話はみんなからわりとばかにされてるけど
でも、俺的にはあれにもわりかし現実味もある
もちろん道行も必要なんだけど、「洗心術」を極めた人間は
魑魅魍魎にたいしては「破ァ」と一喝するだけで退散させることができるという。
言葉に自分の魂をそのままのせて、相手にぶつけることができるからだ。
この術を小成させるためには個人差が激しい。
短い人で1年、長い人で60年が必要だ。
142 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/13(土) 23:10:50.81 ID:klpEaEEQ0
すまぬ、用事で来たので、ちょいりせき
270 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/15(月) 22:49:28.59 ID:LwA7A48p0
さて、続き。
「洗心術」についてだっけ?
俺はこの時洗心術を小成するくらいの領域だった。
いわゆる後悔をしない状態かな?
まぁ、そのかわり、あきらめとかそういう感情が多くなったんだけど
これを解決できれば大成の域だね。
修業法は前にも変えてある通りの奴と、あと、あれだけじゃあ、実際に
使えものになるかというとならないので、同時に色々やったりもしたんだが
企業秘密ってことで
俺の場合3年でここまで来たんだが、先生には使えるようになったと教えていなかった。
いざって時の物にしたかったからね。
そんで、小成の域だと、流石にTさんみたいに「破ァ」っていうと何もかも解決にはいたらないので
小道具を用意している。
物理的なもので
アマゾンで買った小さな拡声器だ。
277 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/15(月) 23:04:59.92 ID:LwA7A48p0
まずは、自分の中で感情を作った。つくる感情は怒り
感情の作り方は演劇の本とかかって勉強したんだけど
怒りの場合は、最初からだから入ると簡単らしい。
つまり怒ったときの体の反応かな?わなわなしたり、歯を食いしばったり
拳を握り締めたり
そんで今までの怒った出来事とかを思い出したりしてね
まぁ、体感時間はわりとあったから、余裕は結構あった。
そうしていると、本当に無性に腹が立ってきた。
なにが「天命漏らし」だよ、なにが新しい弟子だよ
こっちは、可愛い中学生だとわかってわりと嬉しかったんだぞ!
とかなんとか自然と頭に浮かんだ。
拡声器のスイッチを手探りで開けて、俺はそれを口に当てて
「ぬぅんー」とかそんな感じに適当に叫んだ
なるべく言葉に怒りを込めてね。
ミサトさんは急に俺が声を上げたのにびっくりしたように
びくんと飛び上がった
それと同時に、こっちにっざっざって急いでかけてくる足音が聞こえた
394 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/18(木) 22:09:32.01 ID:HsGiRLz30
足音は俺のほうに近づいてくると、何かに胸倉を掴まれ立たされた。
暗闇の中顔はよく見えないけど、息遣いは先生の物だった。
先生はなにも言わずに俺の腹にパンチをいっぱついれた。
このころになると割と鍛えてたので、あんまり痛くなかった。
でも先生の言いたいことはわかった。
余計なことはするな。
先生はそう伝えてきたんだ。
そして、ミサトさんのほうから、彼女が声をあげて泣く音が聞こえてきた
397 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/18(木) 22:19:46.78 ID:HsGiRLz30
っち、と先生のほうから舌打ちする音が聞こえた。
そんで先生は荷物が置いてあるほうに向かうとがさごそと物を探し
懐中電灯を取り出したのか、明かりをつけて彼女のほうを照らした。
先生が明かりをつけるってことは、妖怪はもういないらしい。
なんだかんだ俺の術が通用した!と少し喜んだが、すぐに
俺はぎょっとなった。
ミサトさんは地べたに座り込み、泣いていた。体中に泥やら砂やらがついている
確かに、俺に馬乗りやらなんやらしたが、そンなことがあってもいくらなんでもこの量は…
って感じについている。
しかも
彼女は手でぶちぶちぶちとものすごい勢いで自分の髪の毛を引きちぎっていた。
俺は先生のほうに急いでどうしますか?って感じに合図を送ったんだが
先生は首を振って、ストップと返事した。
402 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/18(木) 22:34:27.70 ID:HsGiRLz30
俺は先生にしたがった。
助けたくないわけではないが、髪をむしるくらいなら命の危険はないだろうし
それに先生の目的も達成できそうだった。
髪の毛というのは昔から命の代わりと考えられていて
それを全部とると、一回生まれ変わることになる。
まぁ、お坊さんになるときとかにも一回全部剃るよね
あれは煩悩とかをすてるんだけど、つまり、一回しんで生まれ変わって
真白の状態になるので煩悩も全部消えるみたいな意味があるのかな?
昔の話だと、三国志の時代農民を安心させるため
曹操は麦を踏みつけたものは死罪になる軍紀を決めた。
だけど、あるとき曹操自身がそれを間違って踏んだ。
曹操は自分の命を絶たないと、軍紀が護られなくなると考え
曹操は自分の首の代わりに髪を深く切り
髪の毛で自分の命の代わりにした
という話もあるくらい、髪の毛は大切なんだよ。
まぁ、でも、それは昔の人が髪の毛が命の代わりとなる、と信じてるから
代わりになるのであった、今だとそうでもないのだが。
今回の状況ではどうやら髪の毛はなんとか命の代わりにできそうだ
427 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2014/09/18(木) 23:06:55.53 ID:HsGiRLz30
よく幽霊とか妖怪とか悪魔とかそういうのが乗り移ると
自分の髪の毛をむしるとかそういうこと聞くよね?
まぁ、聞いたことなくても、そうなるみたいなんだが…
人間は自分の命がものすごい勢いでなくなると、かわりに髪の毛を
むしって、それを代わりにすることがあるらしい。
この時に、ちゃんとした措置を取ると、髪の毛を身代わりにできる。
ミサトさんが髪の毛をがしがしむしっているのを見て、俺は
いい匂いがしたのにもったいないなぁとかおもった。
俺は髪ふぇちなのかも
そんで、彼女の頭皮の一部も向けてしあったのか、だらだらと
血が流れ始めて、かなり悲惨な様子だった。
しばらく待つと、彼女は髪の毛を全部むしり取った。
それを見た先生はすばやく動いた。
むしられた髪の毛をなるべく集めて、それを蝋燭に巻き始めた
俺は急いで荷物のほうから塩入生姜水をとりだし、それをむりやり
まだ泣きまくるミサトさんに無理やり飲ませた。
55 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2016/02/06(土) 22:33:28.82 ID:NLa9Bcbm
もう結構たってるから、すこし記憶が薄まってる部分もあるからそこは目をつぶってくれ
先生の話のつづき。
ミサトさんの様子がおかしくなってからしばらくすると、彼女は体をゆさゆさしながら
何かをつぶやき始めた。
俺はなるべく意識が彼女のつぶやくことに行かないように注意し
先生のほうに目を向けた。
三人歌を終えた先生は、黙ったままうつむいていた。
何か準備をしないのだろうか?
「我聞」は「如是」が死んだあとにランダムで近くに生まれる。
なので見つけられるかどうかは運によるところが大きい。
先生は「我聞」を探す方法を持っているのだろうか?
なんで先生は何の指示もしてこないんだ?
基本的に儀式は象徴的であいまいな部分が多く、まぁ、知識量や経験があれば
それなりに判断をしたりもできるけど
俺が早とちりして、儀式をぶち壊したさっきみたいに、いまやっているものと
別のものを勘違いしてしまうことがおおい。
なので、响搬と助搬に分かれて、メインのほうが助手のほうに常に合図を送って
意思疎通をするのが大切だ。
手による意思表示もそうだけど、夜は暗闇が多いのでそのほかの簡単な
合図も使いつつ、進行しないといけない。
それなのに、先生は「殺陣」を始めてから、俺に指示を送ってこない。
俺は「殺陣」の後半のやり方知らないのにだぞ?
俺は何もできないまま、暗闇の中で突っ立てるしかなかった。
56 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2016/02/06(土) 22:40:42.80 ID:NLa9Bcbm
そうしているうちに、ミサトさんの様子にさらに変化が見られた。
彼女は突然つぶやくのをやめて、気分が悪そうにもぞもぞし始めた。
そしてせき込み始めたと思ったら、激しく嘔吐し始めた。
もう一度、ショウガ水のせいで大分吐いたから、何も出すものはないと思ったが
音から判断すると、結構の量の何かがでていた。
でも俺はミサトさんの背中のほうに立っていたし、暗かったので何を吐いているのか
分からなかった。
すると、今まで動かなかった先生が、ミサトさんのほうに近寄った。
そして、なにをすると思ったら先生は口を開いてこういった。
お前は死ぬんだ。お前は死ぬんだ。お前は死ぬんだ。
大きい声ではないけど、はっきりした声で
お前は死ぬんだ。お前は死ぬんだ。お前は死ぬんだ。
なんどもなんども
お前は死ぬんだ。お前は死ぬんだ。お前は死ぬんだ。
そう繰り返した。
さらに、ぼけっとの中から何かを取り出し、ミサトさんに向けて投げ始める
57 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2016/02/06(土) 22:48:32.30 ID:NLa9Bcbm
暗闇で何を投げているのかはわからない。
でも、ぺしゃ、ぺしゃと湿った何かがミサトさんの体にぶつかるのが分かる。
全部で6個、先生は何かを投げた。いや、6個っていうのはおかしいな。
先生は6回投げたけど、一回に1個投げたわけじゃないかもしれない。
まぁ、それは置いておいて、投げ終わったころにはミサトさんの嘔吐は嘔吐を終え
地面に突っ伏したまま動かなくなった。
辛うじてつらそうな息遣いと上下する背中の様子で、何とか生きていることは判断できた。
76 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2016/02/09(火) 00:00:45.80 ID:kMVrLdOp
続き
その時なんだけど、不思議なことに急に生暖かい風を感じた。
海辺の崖で、しかも寒い季節だから、そんな風が吹くわけないんだけど
先生もそれを感じたのか、いったん動きを止めた。
そして、ミサトさんをそのまま放置して、俺のほうに歩いてきた。
見えるか?先生は俺にそう合図した。
俺は意味が分からずに、首を振った。
あそこ。間違えるな。あそこ。
あそこ、兄貴、いる。
先生は近くの一角をさして、さらに合図してきた。
俺はびっくりして危うく声をあげそうになった。兄貴ってあの兄貴?
先生は俺の反応を確認した後、邪魔、しろと指示を送ると
俺から離れた。
132 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2016/02/18(木) 18:45:59.88 ID:3paVwFXq
続き
邪魔をしろって言われても、相手は先生の兄貴だ。
昔、先生の話から聞いた感じ、たぶん今は「倀」という妖怪になってると思うので
しないといけない対処はわかるんだけど
なんだか気が引けた。
「倀」ってのは前に話したと思うけど、おさらいすると
自殺の名所とかがある意味一種の妖怪になっていて、そこで死んじゃうと
人間は魂をとらわれてしまう。
とらわれた人の魂が逃れるためには、ほかの人間を殺して
自分の代わりにしないといけない。
まぁ、このとらわれた人間のことも「倀」っていうから
そこらへんはあんまりぐらい的に決まってないアバウトな概念だね。
昔は結構「倀」は怖い妖怪の代表格で、じじばばとかが対処法を教えたりするけど
こいつに出会った場合は、まず背中を向ける。
そのあと、地面におしっこする。
これで大体の場合、相手は逃げる。
でも、先生の兄貴って思うと、なんだかなぁ
133 :1 ◆cvtbcmEgcY @?????:2016/02/18(木) 18:56:23.98 ID:3paVwFXq
すげー汚い描写に入るから、苦手な人は飛ばしてくれ
俺は仕方なしに、言われた場所に向かった。
大体このあたりだろうと思った場所で、後ろを向き、ずぼんとぱんつを下した。
すると、突然俺の物はなんかすごく冷たい何かにつかまれた気がして
「じょろじょろー」っとたまらずおしっこがでた。
しかし、おしっこの様子が少しおかしい。男ならわかってくれると思うけどさ
立ちションしたときって、おしっこから湯気が出るわけじゃん。
特に寒い日とか、めっちゃもくもくするわけよ。
でも、今回はそれが一切なかった。
そんで、おしっこがおわっても、物をつかむ感触は残っていて、それどころか
そこから冷たい感じがぞわぞわ全身に広がっていく。
モノをしまおうにも、手がかちこち震えて、動かせない。
俺はやばいと、心ン中であせった。
大体の「倀」は背中向けておしっこで、あきらめてくれるらしいんだけど
あくまで大体だ。
年季の入った「倀」ってのはしつこいもので、めったにいないんだけど
そういうやつは簡単には獲物を逃さない。
なんたって、長い間「倀」になってしまっているから
早く楽になりたいんだろうね。
*ブログ主注 ここで現在未完となっています。続きは待ち望まれます。

 

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