101底名無し沼さん2017/10/11(水) 00:45:06.07ID:buNs+4bt>>102
こんな話もある。
場所は関東;時代は1990年代なかごろ
(その「こと」に気づいた時点)
オレは日記をつけている。日記とメモと登山記録(ログ)を一緒に。
コクヨのレベルブックやスケッチブックを使っている。
大学に入って新生活!ということで始めたのだと記憶している。
1日分の書き込み量の長短はあるし、1週間分まとめて書いている部分もたくさんある。
ある日、家で、使わないものを入れている段ボール箱を整理していると昔使っていた
リュックが出てきた。上に登山用でない衣類が入っていたので気がつかなかったのだ。
学生のころ買った懐かしいリュックだった。
あるローカルの登山用具会社のオリジナルリュックだ。
こんなところにあったのか!捨てたと思っていたのに。
とりあげてみると中に一冊ノートが入っていた。日記用のスケッチブックだ。
最初の数ページを読んでみると1985年の日記の一つだった。丁度その時期のものが
欠けていて、紛失してしまったのだと思っていた。
うれしくなってページをめくった。
表紙は濡れたらしくぼこぼこになっていてページは泥がついてまとまって
貼り付いてしまっていた。それを丁寧に剥がしながら読みすすめた。
懐かしさにひたりながら読んでいるとノートの中ごろのページに変な記述があった。
それは、関西のある山での登山記録だった。装備リストや日程表、交通プラン、
詳しい時間記録、場所の記録、などが書き込んであった。それに国土地理院の
昔の2万5千分の1の地形図の一部を切り取ったものもページに挟まって泥で
こびりついていた。それにはルートの書き込みや時刻の書き込みもあった。
(つづく)
102底名無し沼さん2017/10/11(水) 00:45:23.10ID:buNs+4bt>>109>>905>>906
>>101
(つづき)
そして、いきなり遺書が書いてあった。自分の。
自分の両親、兄、友人や恩師に当てた遺書がそのノートには鉛筆で
書き込んであった。
「おかあさん、すみません・・・」
「兄貴、おやじをよろしくな。体調がわるいようだが・・・」
「XXさん、好きでした。山は気をつけてね・・・」
「ZZ(利発な友人の名前)、そちらにいくから・・・」
などなど。
そして、くどくどと泣き言が書いてあった。
「あの地点で道を外れた・・・」
「2回もコースを間違えてしまった・・・」
「あそこから引き返せばよかったのだ・・・」
「ここから戻ることが出来たら、もう登山はやめる・・・」
「寒い、ガスで周りがよく見渡せない・・・」
「無線機などもって来ることを考えなかったが、いまでは・・・」
(オレはアマチュア無線をやっていた)
などなど
そして、それよりあとのページは空白。ずっと空白。
遺書の部分のページには泥と植物の葉っぱの破片がこびりついていた。
こんな自分の遺書には、ぜんぜん覚えがない。書いたこともない。
その山に登った記憶もない。
とうぜん遭難したこともない。
しかし、文字は自分のものだ。その頃の字はちょっと角ばっている
のですぐにわかった。同じ頃書いた文章と比べても自分の文字だった。
あれから二十年以上もたったが、オレは生きているんだろうな?