洒落怖

新車のプレリュード

417 :経験者:2001/08/09(木) 13:37
6月のある日曜日、早朝友人のBからの電話で
俺は目を覚ました。
電話にでるといきなりBは、「これからドライブしねー。」
何なんだこいつは、そう思いながら「何だよいきなり」
するとBは嬉しそうに「新車が届いてさ、慣らしが
してーんだ。」俺も新車と聞いて見てみたい衝動に
かられて、ついついOKをだした。

1時間もたたないうちにBは到着した。
焦って準備をすませ、Bの待つ空き地に着くと
そこには真っ赤なプレリュードが止まっていた。
「すごい形だな」言う気はなかったのだが、
つい口が滑ってしまった。(乗ってる人すまない)

しかしBは良いほうに受け取ったらしく、照れていた。
俺とBは立ち話も程々にして、車に乗り込み
行き先を検討し始めた。
Bの希望もあり、行き先は長野に決定。

418 :経験者:2001/08/09(木) 13:38
15分程走り、中央高速に乗っかった。
外見と違い乗り心地はすこぶるいい、
それから俺は駄目だろうなとは思いつつBに聞いた。
「もちろん禁煙だよね。」即答で「吸ったら殺す」
俺は笑いながら、へいへいとうなずいた。

高速に乗ること3時間半、やっとの思いで長野市内に
到着し、昼飯をすませ、かるく市内観光をした。
善光寺をまわった頃には、4時を過ぎており
そろそろ帰ろうという事になり、車に向かった。

帰りは下道を使う事にしたのだが、この辺は
二人とも土地勘が無いために、地図を見ながら
帰る事にした。
1時間程走り、わりと新しめの道路へと出た。

すると新しい道を走りだしてすぐに、奇妙な事が
起こり始めた。

地図を眺めていると、小さな声で「おーい」俺は
てっきりBだと思い、Bに「なに?」と聞いた。
Bは「なにが?」と逆に聞いてきたので、空耳かと
思い「気のせいみたい」そう答えると、今度は逆に
Bが「なんだよ」と聞いてきた。
「なんも言ってねーぞ」俺はそう答えると、Bが
首を傾げていた。

419 :経験者:2001/08/09(木) 13:39
二人で黙ると今度は、わりと大きな声で
「おーい」俺達二人は同時に「聞こえたよな」

俺は気味が悪くなり、Bにバックミラーで後ろを
確認してくれと頼んだ。Bは嫌々ながらも
確認し「なにもいねーぞ」と言った。
俺は後ろを振り返り、自分の目で確認したのだが
なにもいない、でも聞こえたよなと、Bと話していると
「おーい、ここだよっ」・・・

Bはスピードを緩め、二人で声の方を確認した。
全開にしているサンルーフに目をやると
男がしがみつきながら、「ここだよっ」と笑っていた。
それを見た二人は大声を上げ、Bはアクセルを
全開にしながら、サンルーフのボタンを押していた。

驚きのあまりしばらくは黙っていたが、Bはまったく
スピードを落とす気配が無かったため、声をかけ
スピードを落とすように促した。

しばらく走り二人とも落ち着いて話し始めた。
子供の声で、「あれはねーよな」などと話している内に
燃料が切れそうなのに気づいて、通りのスタンドに
車を入れ、ついでに飲み物でも買おうと二人で
車外に出て、ふとサンルーフに目をやると
10本のひっかぎ傷ができていた。
それを見たBは、「せめて手形にしてくれよ」と
うなだれていた。

帰りのプレリュードは喫煙車にかわっていた。

421 :経験者:2001/08/09(木) 13:43
ドライブから1ヶ月が経過した頃、Bから電話があり
話があるから会いたいという。
断る理由もないので、俺はOKをだした。
9時頃着くから駅まで迎えに来てくれと頼まれて
おかしいなとは思いながら、俺は車で駅に向かった。

駅でBを拾い、「歩きなんて珍しいな」そうBに聞くと
Bは一枚の葉書を見せながら「免停」それを
聞いて俺は笑い出してしまった。

部屋に付いて、詳しく聞いてみると、オービスで
やられたらしい、39kオーバーだそうだ。

Bによると、そこにオービスがあるのは前から
知っていたため、そこでは必ずスピードを
落としていたのだが、その日は何故か
ボケッとしていたらしい、本人は妙な感じに
なっていたと言うが。

オービスの前を通過した瞬間、赤い閃光が走り
その光でBは、我に返ったらしい。

422 :経験者:2001/08/09(木) 13:44
それから2週間ほどたち、出頭命令の葉書が
届き、呼び出しに応じて、今日出頭したそうだ。
否定する材料もないので、全て「はいはい」で
済ませるつもりでいたのだが、「これがその時の
写真です」そう言われて1枚のコピーを見せられ
「なんだこれ」と思ったらしい。

一人で乗っていたはずなのに、隣に誰かがいる
それも見た事もない女。
Bは確かにスピード違反はしたがその時は
一人だったと警察官に主張した。

そう言われた警察官は、あっさりと
「彼女がいっぱいいると大変だね」と笑い飛ばされた
らしい。どんなに写真を見ても思い出せない。
Bは焦りながら何度も写真を見直したそうだ。

それを聞いて俺は「ほんとに誰も乗せて無かったのか」
と尋ねたが、Bは乗せてないの一点張りだった。
Bにどんな風に写っていたのかを聞いてみた。
Bによるとその女は、じっとBを見つめていたらしい。

しばらくしてBはつぶやいた「心霊写真かな」
それを聞いて俺は「それしかねーよな」
そう答えるしかなかった。

Bはあの車がいけないのかもしれないと言い始め
俺は「新車だからそれはないよ」となだめた。
するとBは俺を見ながら「今からお前の車で試さないか」
と言われたが、俺は丁重に断った。

423 :経験者:2001/08/09(木) 13:45
免停も終えたBはその日、仕事で都内隅田川沿いに建つ
マンションの完成予備検査で、指摘された箇所の
補修のため後輩を乗せ、マンションに向かった。

Bの仕事は電気工事の代理人で、補修といっても
電球の球を交換する程度のものだったらしい。
現場につき、塗装屋の車の隣にプレリュードを入れ
作業に取りかかった。

そのマンションは20階建て以上で、2棟が連なる
タイプだった。

車を止めた側の、反対に位置する棟から作業を
始めたらしい。
30分程たって作業を終えた部屋から出てくると
外が救急車の音で騒がしくなっており、それが
隣の棟であることに気づいたBは、後輩と共に
隣の棟に急いだ。

424 :経験者:2001/08/09(木) 13:46
駐車場に向かうと、工事関係者で人だかりができ
よく見えない、後ろにいた関係者に聞いたところ
塗装屋さんが、19階の廊下の補修中に、バランスを
崩し転落したのだそうだ。ほぼ即死だったらしい。

それから救急車が出ていき、転落場所が気になった
Bは、人をかきわけ前にでるとそこには無惨な形の
プレリュードの姿があった。

屋根は無惨な形にへこみ、フロントガラスの部分には
大量の血が流れていた。
Bはその場にへたり込み、思わず「塗装屋さんせめて
もう少し横だろ」そうつぶやいたらしい。
気持ちはよくわかる。

Bは知り合いの、修理工にプレリュードを売り渡した。
俺達はてっきり廃車だと思っていたのだが・・・

今そのプレリュードは白に生まれ変わり、都内の
中古車屋に流れたそうだ。
この車は次のオーナーに、どんな奇妙な現象を
もたらすのだろ。

余談
Bの知り合いの修理工だけど、そこで車の修理を
担当した従業員が、修理後亡くなったそうだ。
以上。

https://piza2.5ch.net/test/read.cgi/occult/996631052/

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