376 :ムササビりべんじ ◆TC5.ZMGs :02/04/11 21:51
僕らの家は、僕が小学校に上がるまで
今住んでいる実家とは200kmばかり
離れた地方都市で生活していました。
幼稚園や会社が休みの日曜や祭日には、
母はよくデパートなんかに連れてってくれて、
何も買ってくれなくても、それはそれで
わくわくしたし、楽しかったものです。
しかし、ある日母が急に表情を強ばらせたのです。
「どうしたの?お母さん」
「あそこ!気付かないふりするのよ?」
こそっと小声で教えてくれた先にいたのは、
ニタニタと気色悪い笑顔でこっちに
手招きをするおっさんだったのです。
母はなるべく人通りの多い経路を選んで逃げ、
バスに飛び乗って帰りました。
「みんと(当然現実では本名)、当分あそこの
デパートは、ね?」
5才とはいえ、そのヤバさにはもうゴネる余地もないと見て、
僕も頷きました。
それからしばらくは、別のショッピングモールなどを
利用していたのですが、それでも2週間ぐらいして、
またそのおっさんを目撃してしまったのです。
これはやばい、そう感じた母は、それからは買い物も
近場で済ませるようになりました。
そして、それからしばらくして父に転勤の辞令がおり、
本籍地の実家へと引っ越しをした僕らは、
あの無気味なおっさんから逃げられた安堵から、
地元のデパートに遊びに行くことにしました。
同じ田舎とはいえ、こっちの方が
ちょっとだけ規模も大きな街で、
その日はひとしきり遊び倒しました。
そして帰りがけ。僕と母はまたしても、
あのおっさんを目撃してしまったのです・・・・・。
霊の話ではないし、今にして思えばストーカーだったのか、
とも思ったのですが・・・・・・。
ちょうど20年経った今でも、僕にとってはちょっとした
トラウマになっています。
幸い、それからそのおっさんを見たことは
僕も母も一度もありませんが。