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東北A市のビジネスホテル

281 :ムササビ86上 ◆TC5.ZMGs :02/04/10 07:44
私は仕事の性質上宿泊出張が多く、今までに泊まったホテルや旅館の数は
それこそ500は下らないと思います。ホテルや旅館にはいわゆる怪談が
つきものですが、私も数は少ないものの、いくつかの不思議な出来事に
遭遇しています。以下のお話も、そんな私の体験談のひとつです。
20代も後半の時のことですから、今から15~6年前にもなるでしょう。
出張先で宿泊した東北地方のA市内にある巨大なビジネスホテルでのことです。

お得意様との商談も昼のうちに無事成立。仕事からの解放感もあったのでしょう、
私は一人夜の盛り場へと繰り出し、へべれけに酔っぱらってしまいました。
ホテルにチェックインしたのは、午前零時をゆうに回っていたと思います。私は
完全に酩酊状態でしたので、フロントでキーを受け取ってから部屋にたどり着く
までの記憶は一切欠落しています。

強烈なのどの渇きで眼を覚ましたのは、おそらく午前3時頃だったと思います。
ネクタイ姿のままベッドの上に倒れ込んでいた私は、乱暴にワイシャツを脱ぎ
捨てるとバスルームに向かい、水をそれこそ浴びるように飲みました。酔い覚ま
しの水にふーっと一息ついて、水道の蛇口を閉めた時です。水音が途切れて静ま
り返った室内のどこかから、かすかに人のうめき声のようなものが聞こえたのです。
「・・・・・?」
一瞬ドキっとしたものの、私はすぐに冷静さを取り戻し、ニヤリと笑いました。
「ははあ、やってやがるな・・・。」
根が決して嫌いではない私のことです。早速バスルームに備え付けのガラスコップ
を壁にあてがい、左隣りの部屋の物音に聞き耳を立ててみると・・・。思った通り、
何かがきしむような音と女性のあえぎ声をかなり鮮明に聞き取ることができました。
想像力を働かせつつ、そのまま5分間ほど楽しんでいたでしょうか。しかし男女の
会話まで聞き取れる訳でもなく、単調な“行為”の繰り返しにさすがに馬鹿馬鹿し
さを感じた私は、そのままベッドにもぐり込んで、さっさと部屋のあかりを消して
しまいました。

282 :ムササビ86中 ◆TC5.ZMGs :02/04/10 07:45
さて翌朝のチェックアウトの時のことです。
部屋のドアを開けて廊下に出た私は、妙な違和感を感じたのです。
「・・・・・?」
そしてその原因はすぐに分かりました。ドアを出たすぐ左手が非常口になっていたのです。
つまり・・・、昨夜は酔っぱらっていた為に分からなかったのですが、私の泊まった
部屋は廊下の一番端に位置し、左隣りの部屋などは存在していなかったのです。
にもかかわらずあの女性のあえぎ声は、間違いなく左側の壁を通して聞こえてきた
のです。

「じゃあ、昨夜のあの物音やあえぎ声は一体どこから・・・?」
いぶかしく思いつつも、私はエレベーターホールへと歩き始めました。すると、
私の後方に人の気配のようなものが感じられ、やがてコツ、コツ、コツ、コツという
音が聞こえてきました。リノリウムの廊下の床をハイヒールを履いた女性が歩いて
いるのでしょうか?

コツ、コツ、コツ、コツ ・・・。
それにしても何か妙です。何故ならこのホテルの部屋のドアは重量感のある鉄製で、
ドアを開閉する時にはかなり大きな音がするはずなのですが、そんな音は一切
聞こえなかったのです。つまりこの足音の主は、客室から出てきた訳でもないよう
なのです。それでは非常口は・・・? いや、非常口のドアは客室のドアよりも
さらに無骨で頑丈な鉄製で、開閉時にはさらに大きな音がするはずです。では、
足音の主は一体どこから現れたというのでしょうか?

ここまで考えた私は、えもいわれぬ恐怖にかられ、思わず早足になりました。
すると後ろの足音も、私の歩調に合わせるように早足になるのです。
コツ、コツ、コツ、コツ ・・・。コツ、コツ、コツ、コツ ・・・。
得体の知れぬ“何ものか”が、確実に私の後を追いかけてきているのです。
「これは、相当にヤバい・・・!」と感じた私は、もう後ろを振り返ることもでき
ませんでした。というより、絶対に振り返ってはいけなかったのです。

コツ、コツ、コツ、コツ ・・・。
薄暗いホテルの廊下に響くこの足音の為に、エレベーターまでのわずか4~50m
ほどの距離がどれほど長く感じられたことでしょう。
ようやくエレベーターホールにたどりついた私は、大急ぎで下りのボタンに指を
触れました。しかし上層階の方で乗降があるのでしょうか、エレベーターはなか
なか降りてこないのです。
コツ、コツ、コツ、コツ ・・・。
そうしている間にも、ハイヒールらしき足音はどんどん私との距離をせばめ、遂に
その足音が止まりました。そう、足音の主らしき“何ものか”は、私の真後ろに
立っているのです。かすかに感じられる邪悪な気配・・・。

283 :ムササビ86下 ◆TC5.ZMGs :02/04/10 07:45

「なーに、気のせいだ。後ろを振り向きゃなんのことはない、旅行カバンを持った
ごくあたり前の女性客が立っているだけだろう・・・。」
気休めにそんなことを考えてはみたものの、恐怖にとらわれた私を納得させるには
その結論はあまりにも不充分なものだったのです。そう、昨夜私が耳にしたあの物音。
存在しないはずの部屋から聞こえてきた女性のあえぎ声・・・。
「いま私の背後にいるのは、あの女性ではないだろうか? そして彼女が、もしこの
世のものではないとしたら・・・!」

なんて馬鹿なことをと皆さんお笑いになるかもしれませんが、その時の私はすっかり
度を失っていたのです。
「絶対に振り向いてはだめだ、絶対に・・・!」
そんなことを強く心の中で念じながら、遅々として進まぬエレベーターの階数表示を
凝視する私。その間にも、私の背後に立つ“何ものか”は、ますますその存在感を
強めていくように感じられるのです。

やがてチーンという音をたててエレベーターの扉が開きました。中には、旅行カバン
やスーツケースを持った数人の宿泊客が乗っていましたが、私は彼らが一瞬ハッと
した表情を浮かべたのを見逃しませんでした。確かにその時の私は、おそらく真っ青
な顔をしていたに違いありません。そんな尋常ならざる私の表情に彼らは驚いたもの
かとも瞬時考えましたが、彼らの視線は、私を通り越してその背後を見詰めている
ようなのです。

「やっぱり何かがいるんだ!」
そう確信した私は思わず背後を振り返りそうになったのですが、理性がかろうじて
その行動を食い止めました。恐怖を押し殺すように先客たちに軽く会釈をしてエレ
ベーターに乗り込むと、同時にドアが閉まりエレベーターは降下し始めました。その後、
フロントのある1階に着くまでのエレベーター内の異様な雰囲気を、私は生涯忘れる
ことはできません。

私から意図的に視線をそらし、天井の方をじーっと見詰める若い女性。不自然な
咳払いをする中年男性。そして何故か怒ったような表情で私の頭からつま先までを
無遠慮に眺める若い男・・・。
「ドアが開いたあの刹那、彼らは“何”を見てしまったのか? 私の背後には、
一体何が立っていたのか・・・?」
私は乗客の一人をつかまえてよほど聞いてみようかとも思いましたが、結局やめま
した。彼らの表情から私に対する強い敵意のようなものが感じられたこともありますし、
何よりも、もし聞き出してしまったら何か取り返しのつかないことが起こるようにも
思われたからです。

昨年の夏、久しぶりにA市を訪れました。そしてあの巨大なビジネスホテルは、
かなり老朽化が進んでいるものの現在もちゃんと営業を続けているようでした。
勿論宿泊したのは別のホテルです。あんな恐ろしい思いを二度とは体験したくは
ないですからね・・・。

https://curry.5ch.net/test/read.cgi/occult/1018361409/

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